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父系への転換は移動を常とする遊牧生産規範の継承のため

 9/24“遊牧部族の父系嫁取婚への転換”を扱った『なんでや劇場』に参加してきたので、気付きと感想を投稿します(文末に配布資料もアップします)。
 遊牧部族は季節変動に合せて縄張内を移動していきます。移動するのは10数人(+家畜)程度の小氏族単位ですが、移動時期や移動ルートなどは部族全体で取り決めています(草地の少ない地域では、数百キロも移動する氏族もいる)。
 この取り決めを守って集団移動を指揮することが各氏族長の最も重要な役割です。移動時期を間違うと家畜の餌草が不足します。ルートを間違うと大切な家畜が猛獣に襲われたり、餌場に辿り着けなかったり集団存亡の危機に瀕することになります。
 牧畜までの“母系婿入婚”のままだとすると、他氏族で生まれ育った“婿”がこの移動を指揮する氏族長を継承することになります。しかし他氏族で生まれ育った者が、移籍先の氏族の縄張り状況(地理・気候)に精通するにはかなりの期間がかかります。よって婿入りして来てから何年かかけて再教育する必要があります。
 これに対し、息子を生まれ育った氏族内に残し、その中で優れた者に氏族長を継承させる“父系嫁取婚”の場合は、その再教育の手間がかからず即戦力です。
 このように家畜を連れて危険な移動を伴う『遊牧という生産様式⇒移動を指揮する経験蓄積の継承課題』こそが、父系制への転換の最大要因と考えられます。
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年に数回、部族全体が一同に会する“祭”を開催し、部族長も見守るもとで氏族間の嫁取≒婚礼を行う部族が多いようです。当初は嫁に出す氏族側が(持参金代わり・食い扶持としての)家畜を持たせて嫁入りさせたようです。親が嫁入り先での娘の処遇を心配する気持ちは現代にも通ずるものがありそうです。
(by なんでやねん)
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