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恩恵と畏怖、日本の自然の二つの顔

略奪と闘争を繰り返してきたヨーロッパにあっては、自然もまた征服、制圧の対象だったようです.。
大昔から既に壊滅的な森林破壊が行われてきた事などもそのあらわれと言えると思います。
それに対して、日本人の自然観は共存と調和。
森羅万象すべてに神を見る、といった意識は既に縄文人から備わっていた様です。
そしてこの意識は、集団の統合様式にも如実に表れています。
自然との共存、この背後には自然からの豊かな恩恵 がありますが、それだけではなく、恐ろしく抗しがたい自然現象 もまたその対象でした。
日本の自然は、この恩恵と畏怖、二つの顔を見事に持ち合わせています。
そしてこの事がとて重要だったようです。
森と人の地球史 [1]」からの抜粋です。


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 世界的に見て、日本ほど地震・台風・豪雨・洪水・火山噴火といった自然災害の多い国は珍しい。
(中略)
日本人の先祖たちは、豊かな自然に恵まれた反面、その代償とも言える非常に激しい自然現象に晒されて生きてきた。こうした自然現象がわれわれ日本人の形成に影響しないわけがない。そのことをいま、特に指し示す指標を持たないが、一つ言えることは、地下から海からそして空から山から、おびただしいエネルギーが、日本にそして日本人に降り注ぎ、この地を豊かに育み、同時に日本人の活力を生んできたのだとも言える。
 森羅万象すべてに神を見た縄文人は、台風は風の神、雨は天の神、洪水は水の神、津波は海の神、噴火は山のそして火の神、山火事は森の神などと、恐れおののき敬虔にその怒りをおさめるため、ひれ伏したことだろう。
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温暖湿潤で四季の表情豊かな日本の気候は、ヨーロッパの乾燥地帯やシベリアのツンドラ地帯などと比べれば格段に過ごしやすい!日本の自然は人間生活にとっても快適!!と思っていましたが、確かに天災も自然現象。
今まであまり意識していなかったけれど、なるほど日本は世界に冠たる天災国家だったのですね。
しかしこの逆境が、日本人特有の自然観や、精霊信仰に代表される自然を対象化するための観念群を獲得していったのだと思います。
精霊信仰は、豊かな自然の恵みに対する感謝の念だけではない。人間の存在など簡単に吹っ飛んでしまう巨大なエネルギーへの恐怖と畏敬の念もまた信仰の対象。
むしろ豊かな恵みと人智を越えた畏怖、この両方があったからこそ縄文人は、「森羅万象すべてに神を見る」事が出来たのです。
そしてこの事が、縄文人の観念機能と共認機能を研ぎ澄まし、さらには集団の統合軸になっていったのでは無いでしょうか。
「豊かな自然の恵み」だけではここまで行かない。災害もひっくるめて初めて観念機能・共認機能が強化されていった。
まさに逆境こそ進化、なのだと感じます。

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