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雲南省ハニ族の「稲魂信仰」

Posted By sachiare On 2006年11月4日 @ 9:23 PM In B 人類500万年に亙る共同体社会 | 4 Comments


長江流域の少数民族社会には「稲魂(いなだま)信仰」がひろく伝えられています。その中から美しい棚田で知られる雲南省ハニ族の「稲魂信仰」を紹介します。
ハニ族の人口は約144万人。  
主に雲南省南西部の礼社江下流、紅河西側の哀牢山岳地帯に分布しています。
ハニ族の稲作に関係する行事は、日本の稲作の祭りと多くの共通点をもっています。


●ハニ族の年中行事のうち、稲作に関係する行事にはつぎのようなものがあります。
  『アジア文化研究プロジェクト』 [1] 「諏訪春雄通信15」 [2]から引用します。

1月 五穀祭(穀物神に豊作を祈願する)

2月 ガマツ祭(稲魂の降臨をむかえる)

3月 苗床祭(稲の苗を祭る) 稲娘の聖婚式(稲魂を水田におろす儀礼)

   穀物神と田の神を祭るハォへへ

6月 夏の松明祭(松明の火に照らして稲の多産を祈願する)

   水口祭(水田の水口に供物をささげる)

7月 虫送り(稲の害虫駆除の祭り)

   稲花酒を飲む(初穂を神棚にそなえ稲籾をいれた酒を飲む)

8月 新米節(ホスザ 稲刈に先立ちあたらしい稲魂と家の神棚にまつってある昨

   年の稲魂との新旧交代をおこなう)

9月  田の神への感謝祭(主婦は水田の真中で田の神に供物をささげ感謝の歌

   をうたい稲刈をする)

   倉入れ(新旧稲魂の交替の儀礼)

10月 松の飾りと団子飾り(松の枝と稲の籾や若草を入れた竹筒、栗の枝を玄

   関にかざる。団子飾りは餅花) 年取り(団子をたべる)

曽紅「ハニ族の年中行事」(諏訪春雄編『東アジアの神と祭り』雄山閣・1998年)
ハニ族の古い暦法は一年を十ヶ月とします。この年中行事はその暦法によっています。

●ハニ族は現在でも新穀を供える新嘗祭(フォシージャー)を行なっています。期日は一定していませんが、おおむね七、八月の龍の日に行なわれいます。日本の新嘗祭と多くの共通点があり、現代では変質してしまった日本の新嘗祭の古代の原型なのかもしれません。
 ハニ族の新嘗祭の特徴は、

・家の祭である。
 新嘗の時には家族全員で新穀を食べる。その際、客を招かず、家族以外の人には食べさせない例が多い。また新穀を収めた穀倉は他人に見せようとはしない。
・女性が主宰する祭である。
 調査した60余の村の内、11の村が「新嘗」は女性家長が主宰すると答えた。男性が主宰すると答えた村は2例であった。
・新嘗儀礼の中心にあるのは穀霊(稲魂)信仰である。
 田畑にいる穀霊を家の中に迎え入れ祖先棚あるいは穀物蔵で休息してもらう。新穀を祖霊、穀霊および天神に供え共食する。新穀を食することは穀霊を食べることに他ならないという観念が今日も残されている。
・穀霊信仰と祖霊信仰とが結合している。
 田畑から迎え入れられた穀霊は祖先棚に安置される。この祖先棚の移動や新設は新嘗の日に行わなければならない。
・穀霊を保護しているのは聖樹である。穀霊信仰と聖樹崇拝とは結合している。
 ハニ族最大の祭は、田植前に行なわれる聖樹祭(アマトゥ)である。稲魂を庇護する天神が聖樹を伝わって降臨すると考えられている。聖樹は村建ての時、村のセンターとして選ばれるものであるが、西双版納(シーサバンナ)では各家で聖樹をもつ村があった。

●精霊信仰に祖霊信仰が混在しているようでうすが、稲作文化のなかの女性の役割の大きさが非常に強く感じられます。女性が稲の魂を代々受け継いでいるのだと思います。
現在のハニ族は父系社会ですが、信仰での女性の役割の大きさは、かつての母系社会の痕跡でしょうか。いずれにしても、ハニ族は自然に対する同化・感謝の気持ちを強くもっているは確かなようです。
少数民族という概念は、今の中国のなかで人数が少ない、だから少数民族と呼ばれてるに過ぎません。彼らの生活・労働や自然への感謝の気持ちには、環境問題など現在の社会問題を解決するヒントや知恵が隠れているように思います。
by sai-K
読んでくれてありがとう。


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