[1]『アフリカ熱帯雨林地域に生きる狩猟採集民アカ』 [2]の続きです。
アフリカ・コンゴに住む狩猟採集民アカは野生のヤムやナッツ、ハチミツ、イモムシなどを採集し、野生動物を罠や槍、ネットなどを利用して狩猟しています。農耕が開始される以前の生産様式である狩猟採集を続けるアカの社会には、集団の共同性・本源性を色濃く残しているようです。
- 小集団による単純な社会構成
社会の単位は15~100人の小集団で、これより上位の集団は存在しない。その中に3~15の核家族が存在する。
- 集団のメンバーの流動性
集団のメンバーは親族関係に基づいて固定されるのではなく、何らかの親族関係にある人が頻繁に出たり入ったりする。
- 移動生活
2週間から4ヶ月に一度(平均して2ヶ月に一度)、キャンプを移動して生活する。
- その日暮らしの原則
一日が生活の単位で、その日とってきたものをその日に食べ、蓄積や保存はほとんどしない。
- 頻繁な食物分配
集団内では頻繁に、徹底的に食物を分け合う。
- 平等な社会
集団に政治的な権力を持つリーダーはおらず、みんなが平等である。ある人がある人に命令をして強制的に何かをやらせるということはない。男女間もかなり平等である。
「平等な社会」とは、
・権力による序列関係ではなく、課題・役割・評価をお互いに認め合う(=共認する)ことで集団が統合されている。
・一方、道具の使用などにより外圧が低下し、能力が「平準化」している。
という2点をさしているのだと思われます。
注目は「頻繁な食物分配」。
●アカにおける食物の「所有」 [4]
アカにおいてある食物の「所有者」であるということは、私たちが普通に考える私有財産の所有者とは全く異なる。アカにおいて「所有者」であるということはその食物の分配において「与え手」になるということを意味する。つまり、「所有者」が持つ権利は誰にどの部分を与えるのかということを決める権利であり、分配するかしないかを決定する権利ではない。このような「所有者」の概念に基づく食物分配がアカのキャンプ内の社会的関係を形成、維持している。
どうも「分配」よりも「贈与」のほうが実態に近いように思います。彼らの間には「ありがとう」という言葉がないらしいのですが、これは彼らに感謝の気持ちがないのではなく、仲間で助け合う・仲間に感謝することは当たり前であり、改めて言葉にしなくてもお互いわかっているからなのでしょうか。
コンゴ共和国の北東部は、南方に広がる大湿地帯のために首都との交通が極めて不便な「辺境」であり、最近まで大規模な開発が行われることはありませんでした。このため、この地域のアカ人は狩猟採集という生活様式を保つことができたようです。しかし、商業伐採がこの数年の間に劇的に拡張、また、アカの居住地帯の近隣に自然保護団体によって自然保護公園が設立され狩猟制限がされるなど、彼らの置かれた状況は急速に変化し、それとともに市場経済の波に飲み込まれるつつあるようです。
「農耕を拒み自然採取段階でとどまるのは、どんな理由からなんだろう?」(@台高さん)の答えとしては、熱帯雨林という恵まれた自然環境に適応できていること、加えて、他集団との同類闘争を避けて辺境の地へと追いやられてきたからなのかも知れません。
読んでくれてありがとう@さいこう
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