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無文字社会の思春期(3) 「性は、悪いこと、恥ずべきこと」と考える社会

西太平洋メラネシアのアドミラルティ諸島に住むマヌス族は、漁業中心の父系社会です。彼らは、性は何かしら「悪いこと」「恥ずべきこと」だと考えています。
セックスは下品で恥ずべき行為で、前戯はおろか夫が妻の胸に触れることさえ禁止されているようで、妻は夫に敵意をもち憎まなければならないという極端な【性否定社会】であるともいわれます。
同じメラネシアのトロブリアンド諸島の人々が【性肯定社会】であるのと対照的です。(『トロブリアント諸島(ニューギニア)の母系社会』 [1]参照)
Melanesia.png
<メラネシア> (緑色のエリア、大きい大陸がオーストラリア)
南半球にあって、ほぼ東経180度以西に位置する島々の総称。ニューギニア島、ビズマーク諸島、ソロモン諸島、ニューヘブリデス諸島、フィジー、グランドテール島、ロアイヨテ諸島等が含まれる。ギリシャ語で「黒い(皮膚の黒い人々が住む)島々」。


以下、村武誠一著『家と女性の民俗誌』無文字社会の思春期 より引用
●マヌス族
 太平洋、メラネシアのアドミラルティ諸島に住むマヌス族は、漁業中心の父系社会である。M・ミードの報告にしたがって記述すると、子どもたちは、自分のことは自分で気をつけて行動し、遊ぶように訓練される。マヌス族の子どもたちは、1人1人自分のカヌーや確、弓矢をもらう。子どもはわがままいっぱいに遊び、神聖な儀礼の最中でもはしゃぎまわる。両親は子どものいいなりである。まさに、子どもは王様である。そして子どもは、成人とくに親の行動をそっくり模倣する。この点が、ポリネシアのサモア族と異なる。サモアでは、子どもは成人よりも遊び友達に似てくる。
 マヌス族の父親は、子どもたちをあつかう場合、男女の性別にこだわらない。少女は12、3歳までときには裸でいることを別に恥かしいとは思わない。しかし、少しずつ少女たちと少年たちとはいっしょに遊ばなくなる。そして少女に月経が始まると、同性仲間たちとの交際もうすくなる。父系血族以外の男性はさけるようになる。父系血族、とくに兄と妹の結合がだんだんとつよくなる。青年たちも対女性関係は、姉妹と父方交叉イトコ(父の姉妹のムスメ)の2種のみである。
 マヌスでは、性は何かしら悪いこと、恥ずべきことで、ミードの表現にしたがえば、ちょうどビクトリア朝時代のピューリタンの女性たちのように、ひたすら<かくしごと>とし、罪悪と考えている。したがって、既婚女性はほとんどが不感症だという。
 少女の思春期発動期、初潮時には、父および父系男子によって儀礼が行なわれる。まず家屋内の小部屋にこもる。母の手によって別火による食事が供せられる。婚約者から毎日魚がおくられる。ムスメの兄弟や父系のオジたちも、彼女のために魚をとらねばならない。ながい期日にわたる複雑な、おおさわざの儀礼を経て、いずれ結婚へすすむ。これは一種の成熟儀礼である。
 他方、少年には社会的成熟儀礼はない。ただ、12~16歳くらいのとき耳に穴をあける儀礼がある。5日間さまざまな禁忌が課せられる。いずれにせよ、マヌス族では、思春期における男と女とは、互いに分離し、男女とも将来の結婚の話とか婚約者のいる村の話がはじまりそうになるとおおいそぎで逃げてしまうほどである。



るいネット『実現論』 [2]より抜粋

 東アジアの黄色人(モンゴロイド)をはじめとして、世界人口の過半を占めていた採集・漁労部族は、仲間の解脱収束→性欠乏の上昇に対して、皆が心を開いた期待・応望の充足を更に高める方向を目指し、部族内を血縁分割した単位集団(氏族)ごとの男(兄たち)と女(妹たち)が分け隔てなく交わり合う、総偶婚規範を形成した(但し、氏族を統合している部族レベルでは首雄集中婚が踏襲されている事例が多いので、正確には上部集中婚・下部総偶婚と呼ぶべきだろう)。

とあるように、多くの採集・漁労部族は、性を中心に皆が心を開いた期待・応望の充足を更に高める方向を目指しましが、漁労部族であるマヌス族はそれとは反対の方向に向かったようです。
マヌス族は、もともと【性否定社会】だったのでしょうか?それとも何らかの外圧状況から【性否定社会】へと転換したのでしょうか?マヌス族が父系社会であることと関係があるのかも知れません。
マヌス族の活力源って何だろう?@さいこう
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