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「性否定社会」ってホントに存在したの?(1)

Posted By sachiare On 2007年5月28日 @ 8:41 PM In E 9 オセアニア | 6 Comments

『「性は、悪いこと、恥ずべきこと」と考える社会』 [1]でマヌス族の社会を紹介しましたが、『【性否定社会】ってホントに存在したの?』という疑問を受けて、もう少し調べてみました。
残念ながら”マヌス族”に関する追加情報は見つからなかったので、同じメラネシアのパプアニューギニア南部高地州の低地地帯に生活する”ファス族”を紹介します。ニューギニアは、オセアニアの中でも例外的に性否定的な雰囲気を漂わせている地域ようです。
※『「性は、悪いこと、恥ずべきこと」と考える社会』で引用した村武誠一著『家と女性の民俗誌』の”マヌス族”に関する内容は、マーガレット・ミードの調査が元になっているようです。マーガレット・ミード著『マヌス族の生態研究』が入手できたのほぼ確認できました。ただ、その調査内容に関しての反証、あるいは補足となる情報がまだ入手できないので、”マヌス族”に関しては引き続き調査してみます。


以下、『性と出会う―人類学者の見る、聞く、語る』(松園万亀雄 編集/講談社)の中から”ファス族”について、
栗田博之氏(東京外語大学 外国語学部 総合文化講座 教授:プロフィール [2])の調査内容を抜粋・引用します。
パプアニューギニアの南部高地州の低地地帯に生活する”ファス族”は、父系社会、嫁入り婚、一夫多妻。婚姻には婚資が必要です。
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●“ファス族”の性行動、性規範

○基本的には性交は男性にとって、女性の穢れに触れる危険な行為とされている。性交のにおいにふれただけで男性が重い病気になるという話がある。女性器や月経血にまつわる女の穢れを忌み嫌う。女性の穢れの最たるものが、経血や出産時の羊水。そんなものを出す女性器をさわったり、なめたり、においを嘆いだりするのは男にとって一種の自殺行為。だから彼らの社会には、性技としての前戯はない。
○この社会は性技を発達させるような文化ではないし、少なくとも表向きは内なる性欲を遠慮なく全開させるような形で性を楽しむという考え方はまったく見られない。性に関する言葉で、ファス社会には「性交する」という表現はあるが、女性器や男性器の名称を聞いても、彼らは恥ずかしがってなかなか教えてくれない。
○十分に精液を蓄えた成人男性の場合でも、精液が枯渇することをおそれて、女性との性関係は妊娠に必要な回数に限られる。しかも女性の妊娠中や出産後の授乳期間中は性行為がタブーとされ、妊娠・出産から三、四年間は夫婦間の性関係が途絶えます。夫婦間の性交は妊娠に最低限必要なだけの回数に限られる。
○ニューギニアの若い男に、「結婚相手はどんな娘がいいか」 と聞くと、「若い女がいい」という。彼らは 「処女と性交すれば血が出る」 ということは知っているものの、私は、処女や童貞を意味する言葉を彼らの口から聞いたことは一度もない。
○ニューギニアでは伝統的に、男が女の「性的管理権」を握っている。大雑把に言うと、未婚女性であれば父親なり父系親族集団に属する後見人的な男性、既婚女性であれば夫が性的管理権の所有者。女性は女性なりに権利を主張してダンナを張り飛ばしたりするが、社会的規範として女性の位置づけは低く、女は管理すべき対象であるという性差別の意識が社会全体に浸透している感じ。
○性についての考え方も、それは楽しむものではなくて、むしろ忌むべきことであるという感覚。しかし、その性行為は子供を作るだけのものかといえば、そう単純には言い切れないところもある。



“ファス族”の社会は、性自体を否定しているわけはないようですが、すくなくとも性に関して人前で話しをするような雰囲気ではないようです。何か腫れ物に触れるように接しているようにも感じます。同じメラネシアのトロブリアンド諸島の人々が、性にたいしておおらかであるのと対照的ですね。(『トロブリアント諸島(ニューギニア)の母系社会』 [3]参照)
次回、引き続き“ファス族”の婚姻様式、親族関係、外圧状況などを紹介すます。@さいこう
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[1] 『「性は、悪いこと、恥ずべきこと」と考える社会』: http://www.jinruisi.net/blog/2007/05/000172.html

[2] プロフィール: http://www.tufs.ac.jp/common/fs-pg/portal/soran/Kurita_hiroyuki.html

[3] 『トロブリアント諸島(ニューギニア)の母系社会』: http://www.jinruisi.net/blog/2006/10/000041.html

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