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2007年08月03日

霊長類の集団構造の進化1

  『哺乳類の群れ社会の原型は、メス(母親)とその娘を核にした母系的な結びつき』
  『哺乳類 メス同士の結びつきから群れ社会が生じた必然性』
で、「哺乳類はメス同士の結びつきから群れ社会が生じた」事例や必然性を見てきましたが、今回から霊長類の群れ(集団)の形成過程を見ていきます。

生物の群れ(集団)は外圧に適応するために形成されたものです。この群れ(集団)の成立構造の進化を原猿から真猿へとたどり、初期人類の集団がどのようなものだったのか?に迫る足がかりにしたいと思います。

まず、霊長類の集団構造の進化を次のように考えます。

生きとし生けるものは、全て外圧(外部世界)に対する適応態として存在している。

  (中略) 

歴史的に形成されてきた存在は(=進化を重ねてきた存在は)、生物集団であれ人間集団であれ、全て始原実現体の上に次々と新実現体が積み重ねられた、進化積層体(or 塗り重ね構造体)である。

るいネット『実現論』イ.可能性への収束=統合より引用

新しい集団はそれまでの集団の成立構造を内包する、あるいは、ある段階の集団には次の集団の成立構造の萌芽が存在する、とも言えます。原猿から真猿の各段階の集団の成り立ち・仕組み・統合原理などを比較検討することで、どのように集団構造が進化してきたかをたどって行きます。

では、今回は、霊長類集団を見ていく視点と霊長類社会の概要を紹介します。

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◆霊長類の集団を見る視点

霊長類の集団構造の進化をたどっていくのに、霊長類学の成果を参考に進めていきますが、その時に大切な視点を『何故、共認機能が重要なのか?』から引用します。

<サル学の特殊性>  サルとはいかなる存在であるのか?を考える上で考慮すべき問題があります。  それは、一般の学問と違い、新しい報告ほど正しいとは必ずしもいえない、という問題です。

 その理由は、人間の手によって森林が破壊される等、サルの生態環境が年々破壊、改造されているからです。
 従って、サルを考える場合、現在の行動様式に加えて、サルのもともとの生態環境を考慮した上で、補正を加えるという方法が必要となります。

 その点で、現在の人間に追われて群れの数が著しく減少していたり、ましてや餌付けされ飼いならされたサルは、本来のサルの姿とはいえません(現在の飼い犬と、野犬やオオカミを同一視するようなものです)。

<同類闘争という課題>
 サルの一番の特徴は、他の動物と違って、専ら同類との闘争(サル集団同士の縄張り闘争)が第一課題であることです。
 そうなった理由は、樹上に棲息できることにあります(正確に言えば、肢の指で枝をつかめ、枝を自由に渡り歩ける)。

 樹上は、木の実などの栄養価が豊富で、かつ逃避場所として最適です。 つまり、そのような最高の空間を、サルという種はほぼ独占出来たわけです。

 ですから、人間が森を侵食するまでは、ほぼ森林という森林は、サルがほぼ許容量一杯までに繁殖していたことが、容易に推定されます。
 そのような空間なので、外敵(他動物)との闘いは第二義的となり、サル集団同士の縄張闘争(同類闘争)が、サルにとって第一義課題となります。

<戦闘集団における共認機能の重要性>
 過密化した中では、激しい同類集団同士(あるいは異種のサル同士)の縄張闘争が、激しく戦われていたと思われます。
 この同類の集団同士が、日常的に緊張関係にあることも、本能で対応できない状態です。
 かつ、この集団は戦闘集団です。恐らく、強い結束と(恐らく指令投割も)が必要です。

 だからこそ、サルは新たに獲得した共認機能に収束し、まず意思の伝達や、それに対する仲間の評価をつかむ機能を強め(ボディランゲージや表情の読み取りによって)、仲間の評価を羅針盤にして、行動に対するプラス、マイナスの評価を行い、役割や規範を形作っていった訳です。

<環境の激変>
 ところで、現在はサルが激減しました。
 よって相手集団という最大の圧力がなくなり、いわば無圧力化した状態です。

 前記した現在のサルが、本来のサルの姿とはいえないというのは、このような理由です。


◆霊長類の分類

現生の霊長類の分類はこのようになってます。

亜目 下目 上科
霊長目 原猿亜目 キツネザル下目 キツネザル上科 キツネザル科 キツネザル、ハイイロキツネザルなど
インドリ科
インドリ、シフアカなど
アイアイ上科 アイアイ科
アイアイ
ロリス下目 ロリス上科 ロリス科
ロリス、ポットー、ガラゴなど
メガネザル下目 メガネザル上科 メガネザル科 メガネザル
真猿亜目 広鼻下目
 (中南米)
オマキザル上科 オマキザル科
オマキザル、リスザル、クモザル、ホエザルなど
キヌザル科
(マーモセット科)
マーモセット、タマリンなど
狭鼻下目
 (アフリカ)
 (アジア)
オナガザル上科 オナガザル科
マカカ、ヒヒ、ゲラダヒヒ、コロブスなど
ヒト上科 テナガザル科
テナガザル、フクロテナガザル     (類人猿)
オランウータン科
オランウータン、チンパンジー、ゴリラ (類人猿)
ヒト科 ヒト

【人類の学名】脊椎動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属・サピエンス種・サピエンス
上記表は、『理解する世界史』さん:理解する世界史/霊長類の誕生からお借りしました

このシリーズでは、原猿、真猿(狭鼻猿類・人類猿)の社会構造を紹介していく予定です。


◆霊長類の進化系統樹

概略ですが霊長類の生物学的進化系統樹です。

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赤のラインが原猿→真猿→人類・チンパンジー共通祖先→人類への進化系統を示します。各段階でそれまでの本能や機能を下敷きにし、それに新たな機能が先端的に塗り重ねられる形で進化してきました。

注意が必要なのは、各段階で人類へ至る系統と別の系統へ枝分かれしていますが、人類に至る系統異なる系統(グレーのライン)は人類進化には直結しないことです。人類の祖先はチンパンジーと共通祖先から枝分かれした種であり、ゴリラはその前に枝分かれし、更にテナガザルやオランウータンは更にその前に枝分かれした別の種です。したがって、現生するゴリラ、テナガザル、オランウータン等の集団から直接初期人類を繋げて考えるのは誤りです。

ただし、各段階の共通祖先となるサルは現在は存在していませんので、現生のサルから推測することが必要です。現生する各種のサルで共通の集団構造がある場合は、それは共通祖先の段階で獲得した機能だと推測できます。現生類人猿がどのような集団の統合原理でそのような進化を遂げたのかを考えることは、真猿一般や人類・チンパンジーの共通祖先の姿を類推する上で必要だと思われます。

なお、この系統樹では表現されていませんが、実際には絶滅した多くの種が存在します。


◆霊長類社会の5つの社会型

社会構造を考える場合、まず雄と雌がどのような形で結びついているかが基底部となります。それをもとに現存するサルたちの集団のあり方(集団構造)をみると5つの社会型に分類できます。(参考:河合雅雄著『人間の由来』)

集団構造は次の5つに分類でき、5に行くほど集団は複雑化・重複化していきます。また、単独生活社会を除き、「母系」「双系」「父系」のいずれかの血縁システムをとります。

1.単独生活社会(単体型)
集団をつくらず、雄も雌も独立して一頭で暮らしている社会。独立とはいっても、雄と雌が一緒になり交尾をする必要がある。社会的な接触が行われ、個体間には社会的な行動が発現し、性を通じて社会関係がつくれる。

2.ペア型社会(単雄単雌型)
雄と雌のペアによる集団。子どもは成長すると息子、娘とも巣離れする。

3.単独雄社会(単雄複雌型)
一頭の雄と複数の雌及び子どもかなる集団。

4.複雄群社会(複雄複雌型)
複数の雄と複数の雌及び子どもからなる集団。

5.重複社会
基本的な社会単位である集団(オイキア)が複数集まって上位の社会集団が形成された重層社会。人間社会に例をとると、家族という基本的社会単位があり、それが複数数集合して村落をつくる、その村落が重層社会。地上生活というサル類の中では、数少ない生活形をもっているヒヒ類の仲間だけに見られる。

霊長類は、原猿→真猿への生物学的進化とともに、集団構造も進化しています。5になるほど集団は複雑化・重複化していきます。また、単独生活社会を除く社会型は、「母系」「双系」「父系」のいずれかの血縁システムをとります。

この5つの社会型以外に、論理的には、一頭の雌と複数の雄、このような一妻多夫のような集団も考える事ができますが、サルの社会にはないといってもいいようです。また、哺乳類全体を見ても、たいたい1~5の社会型を見出すことができます。

原猿の集団は、1・2の社会型および3の社会型の原型、真猿の集団は1~5の社会型を形成しています。類人猿には5の社会型がなく、1~4の社会型を形成します。ヒヒだけが「重複社会」を形成するのはなぜか?興味深いところです。


「霊長類の社会進化」では、集団の外圧状況、集団の統合軸・システム、雄・雌を繋ぐ紐帯、役割分担などから、霊長類の集団構造がどの様に進化してきたか、また、初期人類の集団の母胎となった集団構造はどんな社会か?を考えてみようと思います。

次回、原猿の集団進化に迫ってみたいと思います。(さいこう)

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