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出産・子育ては集団全体の課題

現在では、出産や子育ては、ほぼ個人の課題である言ってもよいと思いますが、かつての共同体社会では集団全体の課題として捉えられていました。次代を担う集団成員の誕生ですから、当然と言えば当然です。
以前紹介された、ミクロネシア、サタワル島 [1]でも、子どもの出産は島全体の重要な行事に繋がっていました。
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以下須藤健一氏著 母系社会の構造より

子どもの誕生が知らされると、酋長は島の男たち全員に魚とりに出かけるよう命令する。漁は四日間にわたり、禁猟区の漁場も解禁になる。この共同漁はロウ(手綱網)と呼ばれ、産婦に魚を贈り、「母乳の出を良くする」ために行なわれる。酋長は漁場のなかから、二十匹ほどの「よい魚」を産婦小屋に届けさせる。残りは漁に出た男性がその場で食べる分をとり、島の人々に均等に分配する。
産婦のリネージではロウのお返しをするため、「大きな食べ物」をつくる。夫のリネージでも女たちが大量のイモを産婦の家に持参し、その家の女達といっしょに料理をつくる。男達が漁から帰るまでに、タロイモの料理をカヌー小屋に運ぶ。男たちはその料理と分けまえの二~三匹の魚を焼いて共食する。
ロウは産婦に贈る魚をとる共同漁ではあるが、同時に島の人々が子どもの誕生を祝う行事でもある。

共同漁や、「大きな食べ物」の料理は、産婦の「母乳の出を良くする」という実質的意味に加え、島全体での祝い事という二つの意味を合わせ持っているのです。

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