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阿波地方の「夜這い婚」~盆踊りと「ボボイチ」

Posted By sachiare On 2008年9月20日 @ 9:36 PM In E 8 日本 | 3 Comments

このブログでもよくとりあげられている「夜這い婚」ですが、今日は徳島県・阿波地方のかつての村落共同体にみられた「夜這い婚」を紹介します。
徳島県立図書館HP [1]の「デジタルライブラリ」のコーナーで、阿波学会の発行している『阿波学会紀要』の見ることが出来ます。。
阿波学会とは、県内の総合学術調査を行うために、徳島県立図書館が中心になって徳島県内30の学術団体を糾合した学会連合。毎年1市町村を対象として調査を行い、その成果は12月に対象市町村で開かれる発表会で報告されると同時に、『阿波学会紀要』として刊行されています。『阿波学会紀要』は、聞取り調査・文献調査などにより、かつての徳島県の村落の様子を記録した資料です。第1号の発行が1954年、最新号は2007年に発行された第53号です。
紀要には「婚姻習俗」に関する調査報告が8件あるのですが、興味深いことにどの調査にも「ヨバイ」の風習があっとこが当たり前のように書かれています。かつての阿波地方の村落共同体では「夜這い婚」は普遍的な婚姻様式であったようです。
今日は、郷土研究発表会紀要第22号(1976発行)『神山町周辺の婚姻習俗』から「夜這い婚」の記録を紹介します。神山町周辺には、「ヨバイ」のほか、盆踊りで行われる「ボボイチ」と呼ばれる性規範があったようです。
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神山町は徳島県の中央部に位置します。

 この地方においても、明治・大正ごろまでは、村内婚が殆んどで、ついで、徳島市や石井町方面との通婚が多くみられる。
 また、婚姻形式は、近年までは見合結婚が70%以上で、最近になって恋愛結婚が次第に多くなりつつあることは、他の地域と同じである。
 そして、村内婚から遠方婚への発達テンポにおいても特異性はみられない。
 結婚に至るまでの世話人である仲人については、いわゆる職業仲人はなく、村の有志や知人が行う例が多い。
 しかし、この地方における仲人役は、並大抵の苦労ではなかったとみえて、「仲人は一枚莚の毛が切れるまで通う。」といわれたほどである。
 明治、大正のころ、講中若連中の代表者が、婚礼の「肝入り」として、婚礼万端の世話をする風習があったが、これは、新郎新婦の「床入り」の世話まで介入するという出すぎた行為が非難されて、長くは続かなかった。
ボボイチ
 婚姻成立過程における「ヨバイ」の風習は全県的におこなわれていた。「ヨバイ」は、ヨボウ、即ち「続けて呼ぶ」ことを意味するもので、村内婚を基盤としていた聟入婚、及び、足入れ婚の時代においては、正常な求婚手段であった。しかし、近年に至り「夜這」と解せられ、猥雑な行為とみる風潮ができ、大正の自由主義時代を境として、昭和の戦時体制下における道徳規範によって消滅した。
 しかし、現在、「ヨバイ」の呼名はみられなくなってはいるが、自由恋愛の名のもとに異性交遊は、木質的には昔も今も変らないのではなかろうか。
 このことに関して、民俗資料として注目したいのは、神山地方に極く最近まであったといわれる「ボボイチ」の風習である。
 神山町の焼山寺の例祭におこなわれた輪踊り(まる踊りともいう)の中にその風習がみられた。
 「ボボイチ」とは、「ボボ市」のことであろう。上古の時代においては、娘が祭日に、神仏に操を捧げる風習があった。それが後に境内における祭日の催物として、盆踊りの中に具現されたのが、焼山寺のボボイチである。
 これは、具体的に言うと、踊の輪の中に、腰や肩に手抜をつけて踊っている娘は、「私は、どなた様にも愛を捧げる用意ができております。」という。OKの印であったといわれる。
 或る人は、「ヨバイ」、「ボボイチ」と、「カタグ」を性交渉の三態と呼んでいるが、総体的にみて、阿波の北方は「ヨバイ」の風習がつよく、「阿波の北方女のヨバイ、男らしくして、ねやで待つ」とうたわれたほどである。また、県南では、阿土国境の宍喰町においては、「嫁さんカタギ」(嫁盗みともいう)の風習が盛んであった。そして、「ボボイチ」の風習は、中央部の山村にみられるところに特色がある。
(阿波学会紀要:郷土研究発表会紀要第22号より一部引用、強調は引用者)

足入れ婚は、結婚すると、昼間は婿(むこ)の家で働き、夜は実家(じっか)へ帰り、婿は夜になると嫁(よめ)の実家へ通うといった婚姻様式です。子供ができてから、婿の家に移るのが一般的で、その際の儀式を「足入れ」といったようです。これは妻問い婚→嫁入り婚への移行の中間形態でしょうか。
あと「カタグ」については記載がないのですが、どんなものだったのでしょうか?気になります。また、他の地域には「嫁さんカタギ(嫁盗み)」の風習があるようですのでこちらも調べてみたいところです。
 盆踊りという村落共同体の行事の中に「ボボイチ」という性規範が組み込まれていたというのは興味深いですね。「ヨバイ」「ボボイチ」といった性規範は共同体維持に必要なものであり、みなに開かれたものであったようです。(さいこう)


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