人類進化系統樹(一例)
三井誠著「人類進化の700万年」講談社現代新書より作成(クリックで拡大)
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『初期人類の置かれた自然外圧(1) [2]、(2) [3]』に続いて、初期人類の置かれた外敵圧力について調べてみました。
外敵とはどんな動物だったのか?どんな状況だったのか?に迫ってみます。そこで、「化石に残る外敵圧力状況の探索」、「現生霊長類の外敵圧力状況からの推測」という二つの方向からアプローチしてみようと思います。
まず、今日は「化石に残る外敵圧力状況の探索」です。化石などの古生物学、考古学の証拠から、「初期人類もヒヒのような霊長類も、古代の捕食者に習慣的に食べられていた」ことが、明らかになりつつありようです。
(参考図書)
・ドナ・ハート、ロバート・W・サスマン著「ヒトは食べられて進化した」化学同人
・別冊日経サイエンス「人間性の進化」日経サイエンス者
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■化石証拠から見る初期人類の置かれた外敵外圧
今日の記事に登場する遺跡の位置
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◇南アフリカ:スワートクランズ洞窟
<スワートクランズ洞窟>

剣歯ネコや剣歯ネコモドキ、ハンティングハイエナ、プチハイエナ、ヒョウなどが食べた獲物の残骸が遺跡群となって残っているが、その中から初期人類の猿人:パラントロプス・ロブストスもヒヒも見つかっている。
この南アフリカで見つかった化石証拠は、100万~200万年の間にヒョウが初期人類とヒヒを大規模に捕食していたことを示していると考えられる。
南アフリカの洞窟で発見された初期人類の頭骨化石の一つには、一対の穴があいていた。その穴は、直径約2cmほどの丸い穴で、その間隔は10cm弱。この頭骨にあいた二つの穴と古代ネコの下あごにある巨大な二本の牙がぴったり一致した。
<若い頑丈形猿人:パラントロプス・ロブストスの頭蓋とヒョウの下顎>
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後頭部に陥没した穴があり、その大きさと間隔はヒョウの犬歯にってあけられたと想定された。同じ遺跡から出たヒョウの化石下あご骨をあてがってみたところその正当性が確かめられた。
◇南アフリカ:タウング遺跡
<タウングチャイルドの頭骨>
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「タウングチャイルド」は200万年前のアウストラロピテクス・アフリカヌスの幼い子供頭骨。
南アフリカのほかの遺跡で見つかっていた頭骨と違って、タウングチャイルドには肉食動物の歯による穴がなかった。その代わり、深く引っかいた跡が残っていた。
ダウングチャイルドの下あごは閉じたままだった。大型ネコ科動物は、餌食となった動物の餌食となった動物の遺跡では下あごが離れていることが多い。(大型ネコ科動物はヒト科の小さな頭骨に、牙を突き刺すため、そのときに口が開いた状態になることが多い)
何が起きたのか?
猛禽類と呼ばれる捕食をする鳥類がいる。がっしりとした足と鍵爪をもつ現生種のワシもその仲間だ。ワシはこういった適応形態を身についけたおかげで、自分の体重の何倍もあるアンテロープ(レイヨン)やサルを殺すことができる。
タウングチャイルドに残された跡は、現代のアメリカに生息するワシが獲物に残す傷跡と一致した。ダウングチャイルドはまちがいなく、今は絶滅した、巨大で攻撃的なワシの餌食になったと考えられてる。
◇グルジア共和国:ドマニシ遺跡
<ドマニシ遺跡の発掘状況>
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ドマニシで見つかった化石群れと年代測定の結果によって、ドマニシ原人はアフリカの外では最古の人類化石であることが判明した。
175万年前の原人:ホモ・エレクトス(もしくはホモ・エレクトスとホモ・ハビリスの中間段階、ホモ・エルガスターとする説もある)。
人骨とともに多数の哺乳動物の骨が出土するが、その多くは剣歯ネコ、ヒョウ、クマ、ハイエナ、ハイエナ、オオカミなどの肉食動物だ。
それら動物の骨のいくつかには、石器によるカット・マーク(切り傷)がついていることが確認されている。つまり、ドマニシ原人たちは少なくとも、ときどき肉を食べていたのだと推測される。だが、それがこの土地の動物に肉食動物に殺された動物の死肉だったのか、ドマニシ原人が仕留めた獲物の肉だったのかは分かっていない。
一方、ドマニシで見つかった6固体には、ドマニシ原人が被食者であったことを示す証拠も含まれていた。一目でそれとわかる丸い穴が頭骨の一つに見つかった。今回も剣歯ネコの牙がぴったりと二つの穴におさまった。
ドマニシ原人は、肉食動物の頂点にいたわけでなく、「狩人であり、肉食動物の獲物でもあった」と考えられる。
初期人類が「肉食動物に食べられていた」ことを示す化石証拠の一部を紹介しました。初期人類が置かれた外敵圧力を少しは実感できたでしょうか?
人類は、長い年月を経て石器を手にしたドマニシ原人でさえ肉食動物にいつ襲われるかと怯えなければならない存在。まさに、足で枝を掴むことが出来なくなったカタワのサル=人類は、樹上に棲めるという本能上の武器を失った結果、想像を絶する様な過酷な生存圧力に直面したことが伺えます。外敵と対等以上に闘えるには、弓矢を発明する1万年前まで待たなくてはなりませんでした。
では、そんな過酷な生存圧力に置かれた初期人類たちは、その外圧にどのように対応したのでしょうか?このあたりを、次回、現生霊長類の外敵圧力状況から推測できないかと、考えています。また、初期人類たちはどこに住んでいたのか?洞窟なのか?も改めて検討してみたいところです。(さいこう)