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スペインの「家族主義」について

 世界の現在の「性意識」についてのシリーズ第3回。中国に続いて今回はスペインの「家族主義」についてレポートします。
 
 スペインといえば「シエスタの習慣」や「食事は1日5回」など南欧特有の習慣が今も残っているというイメージがありますが、「家族」に対する考え方に対しても保守的な考え方が強いようです。
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スペイン料理
スペインでは日本と異なる時間帯に食事を摂り、一日に5回食事をすることで有名。
①デサユノ:朝食、②メリエンダ・メディア・マニャーナ:朝の軽食、③アルムエルソ:昼食、④メリエンダ:夕方の軽食、⑤セナ:夕食
ちなみに、昼食が1日のメインでフルコースを食べるのだそう。その後はシエスタ。う゛~ん スペイン人って燃費が悪いのか?
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るいネット [3]
メルマガ [4]


ソシオサイエンス(2005年3月)論文
『スペインの「家族主義的」福祉レジームを検討する意味』より(リンク) [5]
■家族主義

 スペインの家族の特徴を統計からみると,他国より一世帯人数が多く,20代後半の子の親との同居率が高く,65歳以上の高齢者の独居率は低く,単身世帯の割合は拡大前のEU諸国中で最も低い。また,スペインの離婚率非婚カップルの同棲率,婚外出生率はEU諸国平均を大きく下回り,イタリア,ギリシャと並ぶ最下位にある。このような事実は,制度としての家族と結婚が維持されている証左とされる。
 1978年のスペイン憲法は,家族を定義することなく,家族の社会的,経済的および法的保護の保障,嫡出子と非嫡出子の平等,母性の保護両親の子への扶養義務を定めている(39条)。一方,民法上の扶養義務は,別の世帯で生活していても,両親とその子供,さらに兄弟姉妹に及ぶ。両親の未成年(時に成年)の子に対する義務子が両親の世話をする義務また,兄弟姉妹も必要に応じて互いの基本的なニーズを満たすために制限的援助の義務がある(142~144条)。これらの義務の不履行には公権力の介入も妨げない(145,148条)。この点,国によっては,「家族」が両親と通常は未成年の子で構成される核家族を指して別世帯で生活する成人を含まず,扶養義務は両親から未成年の子供までに止まることからすれば,広範な家族概念を示唆しているといえよう。一方,一人当たりの家族政策支出はEU15力国中で群をぬいて最下位である。

 北欧諸国では個人主義の傾向が強まり、独居老人や単身世帯数が多いのに対し、スペインでは大家族の中でお互いがそれぞれの役割を担う「家族主義」が根付いています。その背景には労働市場、政策、キリスト教(カトリック)規範の浸透などがあるようです。
■家族をめぐる歴史的文脈

 20世紀を振り返ると,多くの欧州諸国で宗教と家族との関連が徐々に希薄化するなか,スペインでは教会と政体に関連して,家族には常にイデオロギーが強く投影されてきた。第二共和制(1931-36)は,伝統的家族規範の近代化を,中絶や離婚の承認非嫡出子の権利の平等化といった民法改革によって推進し,伝統との断絶を社会的安定への脅威とみる教会と対立した。
 続くフランコ体制(1939-75)は,カトリシズムに伝統的な家族規範を,権威主義体制を支える論理と重ねて推進した。すなわち家族は社会の基本的単位として,永続的な婚姻関係に基づき組織される家長を頂点とした階層制であり,その目的は生殖にある。こうして出産奨励主義に立脚し,避妊や離婚の禁止,既婚女性の家庭外の賃金労働からの排除婚姻内外での性別による権利不平等を進めた。
 フランコ期の福祉全般は社会的統制の手段として用いられ,家族給付,結婚や離婚母性や児童保護に関わる家族政策も,体制の強化維持を目的として,権威主義的な家族モデルをイデオロギー的支柱として最重要視する文脈で行われた。

 スペインはレコンキスタ(国土回復運動)の影響もあって、伝統的にカトリック教圏です。なんでも農民のイスラム改宗を防ぐ為に教会がワインの醸造技術を広めた(イスラム教は禁酒)とか。おかげで今もスペインはワイン生産量世界一。
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「レコンキスタの象徴」の守護聖人「聖ヤコブ」の名を冠したスペインワイン『サンチャゴ・ルイス』
白辛口、スペイン王室御用達
■労働市場

 スペインの労働市場は,一家の稼ぎ手としての男性の特権的な地位と,女性と若者の排除という,インサイダーとアウトサイダーの二元的構造の顕著な例とされる。女性の就業率はEU15力国で最低であり,失業率の男女格差は約2倍,女性の平均賃金は男性の71.1%である。90年代前半から有期雇用(最長期間は12ヶ月)の割合は欧州で最も高く雇用全体の約3分の1を占めるが,それは女性と若者で占められている。有期雇用者の賃金は平均で無期雇用者の約60%である。失業率の男女差は縮小傾向にあるが,なおEU15力心中で最も目立つスペインの特徴となっている。

 男性的な様子をあらわす『マッチョ』は、元々スペイン語。昔から男性が一家の稼ぎ手としての役割を担い、期待もされていたということなのでしょう。
 しかし、こうした「家族主義」もEUに加盟し、男女平等規範や福祉政策などが他のEU諸国と横並びに整備されていくに従い、だんだんと崩れていく傾向にあるのだそう。
 【スペイン】 同性同士の結婚を合法化、国民の70%が同性婚に賛成
http://www.milkjapan.com/2005fn01.html
 ひとくちに欧州諸国といっても、南欧と北欧ではずいぶんと差があるのだと思いました。

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