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日本語の成り立ち(文字編)2~日本語(文字)の優秀性~

オバマ大統領は「奥巴馬」か「欧巴馬」か、漢字表記で米中対立のニュース [1]が以前ありましたが、同じ漢字圏でも中国と比べ日本語には、漢字以外にも平仮名・片仮名を使用しています。今日は『日本語の成り立ち(文字編)1』 [2]に続き、日本語(文字)の優秀性についてまとめてみたいと思います。
世界の文字体系は大きく表語(表意)文字表音文字に分けられます。
表語(表意)文字は、象形文字に起源を持ち、原則として一つ一つの文字で言語の一つ一つの語や意味をなします。漢字が代表例ですね。
表音文字は、特定の順序につながって語の発音を表すことで意味をなす。アルファベットが代表例ですね。
我々が使っている日本語は、漢字という表語(表意)文字と、ひらがな、カタカナという2種類の表音文字を持ち、表記法は世界でも最も複雑なものですが、それらを駆使して外国語を自在に取り込んでしまう能力において、日本語は世界の言語の中でもユニークな存在であると言えます。この日本語の特徴は、自然に生まれたものではなく。我々の祖先が漢字との格闘を通じて生みだしたものだと考えられます。
それでは日本語(文字)の優秀性を見てみたいと思います。
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★日本語の優れているところ(漢字文化圏の革新者=日本)
漢字の特徴の一つとして高い造語能力があげられます。ところが歴史を見てみると漢字の造語能力を存分に活用した事例は意外に少ないのです。伝統的中国語(漢文)においては、漢字一文字で一つの概念や事柄を表すのが普通で、二文字以上の熟語は実はそれほど多くないようです。そのため中国では思想活動の活発だった春秋戦国時代(紀元前770-前221年)と仏教用語を翻訳するときに二文字以上の新語を多く造りだした程度でなのです。漢字の高い造語能力は近代に至るまでかなり低レベルでしか活用されてこなかったのです。
当時、ベトナムや韓国はもっぱら中国式の漢文を忠実に受け入れてその枠の外に出ることはほとんどなく、韓国独自の造語もあることはあるようですがその数は少ないようです。
(注)その後、ベトナム語はフランス植民地時代にローマナイズされ、朝鮮半島においても民族意識の高揚のため漢字を廃してハングル化しています。
しかし、日本はまったくの例外なのです。漢字の伝播以来、日本人は千年以上に渡って漢字の造語能力を活用して多数の二文字以上からなる和製漢語を造り出してきているのです。中国語が母語でないことがむしろ幸いしたのかもしれません。
現代の中国語の10%は、日本で創られた造語なのです。ここで和製漢語も紹介しておこうと思います。欧米の観念群の音訳・意訳がかなり行なわれています。

『漢字外来語詞典』に紹介されている”和製漢語”896をその「成り立ち」から分析すると、次の六種に大きく分類し、南ドンが中国で中国人が使用したのを一度でも聞いたことがある”和製漢語”を中心に具体例を幾つかご紹介する。
1、漢字を利用して欧米の語彙の音訳が中国へ伝わったもの
瓦斯、基督、基督教、倶楽部、珈琲など
2、漢字を利用して欧米の語彙の意訳が中国へ伝わったもの
亜鉛、暗示、意訳、演出、大熊座、温度、概算、概念、概略、会談、会話、回収、改訂、解放、科学、化学、化膿、拡散、歌劇、仮定、活躍、関係、幹線、幹部、観点、間接、寒帯、議員、議院、議会、企業、喜劇、基準、基地、擬人法、帰納、義務、客観、教育学、教科書、教養、協会、協定、共産主義、共鳴、強制、業務、金婚式、金牌、金融、銀行、銀婚式、銀幕、緊張、空間、組合、軍国主義、警察、景気、契機、経験、経済学、経済恐慌、軽工業、形而上学、芸術、系統、劇場、化粧品、下水道、決算、権威、原子、原則、原理、現役、現金、現実、元素、建築、公民、講演、講座、講師、効果、広告、工業、高潮、高利貸、光線、光年、酵素、肯定、小熊座、国際、国税、国教、固体、固定、最恵国、債権、債務、採光、雑誌、紫外線、時間、時候、刺激、施工、施行、市場、市長、自治領、指数、指導、事務員、実感、実業、失恋、質量、資本家、資料、社会学、社会主義、宗教、集団、重工業、終点、主観、手工業、出発点、出版、出版物、将軍、消費、乗客、商業、証券、情報、常識、上水道、承認、所得税、所有権、進化、進化論、進度、人権、神経衰弱、信号、信託、新聞記者、心理学、図案、水素、成分、制限、清算、政策、政党、性能、積極、絶対、接吻、繊維、選挙、宣伝、総合、総理、総領事、速度、体育、体操、退役、退化、大気、代議士、代表、対象、単位、単元、探検、蛋白質、窒素、抽象、直径、直接、通貨収縮、通貨膨張、定義、哲学、電子、電車、電池、電波、電報、電流、電話、伝染病、展覧会、動員、動産、投資、独裁、図書館、特権、内閣、内容、任命、熱帯、年度、能率、背景、覇権、派遣、反響、反射、反応、悲劇、美術、否定、否認、必要、批評、評価、標語、不動産、舞台、物質、物理学、平面、方案、方式、方程式、放射、法人、母校、本質、漫画、蜜月、密度、無産階級、目的、目標、唯心論、唯物論、輸出、要素、理想、理念、立憲、流行病、了解、領海、領空、領土、倫理学、類型、冷戦、労働組合、労働者、論壇、論理学など
3、日本が独自につくった漢字が中国へ伝わったもの
腺、糎など
4、漢字を使用してつくった日本語が中国へ伝わったもの
味之素、入口、奥巴桑(オバサン)、海抜、学会、歌舞伎、仮名、簡単、記号、巨星、金額、権限、原作、堅持、公認、公立、小型、克服、故障、財閥、作者、茶道、参観、支配、支部、実権、実績、失効、私立、重点、就任、主動、成員、銭、組成、大局、榻榻米(タタミ)、立場、単純、出口、手続、取消、内服、日程、場合、場所、備品、平仮名、広場、服務、不景気、方針、明確、流感、和服など
5、古代漢文の中にあった語彙を使った欧米の語彙の意訳が中国へ伝わったもの
胃潰瘍(周礼)、医学(旧唐書)、意義、階級、綱領、労働(三国志)、意識、専売(北斎書)、遺伝、右翼、教授、共和、経費、交通、左翼、主義、侵略、生産、天主、博士、輸入(史記)、印象(大集経)、衛生(荘子)、演習、投機(新唐書)、演説(尚書)、鉛筆(東観漢記)、会計、具体、交際(孟子)、革命(易経)、科目、経済(宋史)、学士(礼儀)、学府(晋書)、課程(詩経)、環境(元史)、機関(易林)、記録、抗議、自由、柔道、神経、節約、分析、分配、理性(後漢書)、気質、身分(宋書)、気分(孔子家語)、規則(李群玉)、規範(孔安国)、偶然(列子)、計画、同情、理事(漢書)、現象(宝行経)、憲法(国語)、交換(魏志)、時事、信用、封建、保障(左伝)、思想(曹植)、事変(詩序)、資本(釈名)、社会(東京夢華)、主食(通鑑)、消極(周書)、条件(北史)、世紀(晋皇甫謐)、精神(庄子)、想像(楚辞)、相対(儀礼)、組織(遼史)、素質、白金(璽雅)、知識(孔融)、登記(斎民宝要)、道具(釈氏要覧)、能力(柳宗元)、発明(宋玉)、反対(文心彫竜)、美化(南史)、悲観(法華経)、標本(劉伯温)、服用(礼起)、物理(晋書)、文化(束哲)、文学(論語)、文明(易・乾)、分子(殻梁伝)、法則(周礼)、法律(管子)、保険(隋書)、民主(書・多方)、民法(書・湯誥)、予算(耶律楚材)、理論(鄭谷)など
6、古代漢文の中にあった語彙を使い、日本が自ら創り出した概念が中国へ伝わったもの
浪人(柳宗元)など
 ”和製漢語”の掲載は全体の半分くらいにとどめたが、それでも今これらの言葉がもしなければ中国語での日常会話すらほとんど成り立たなくなることが分かる。それほど”和製漢語”は現代中国人の日常生活に溶け込んでいると言えます。
日本から中国へ伝来した和製漢語 [4]』より引用

日本は約千年かけて、1)漢字の音読み・2)訓読みの発明・3)訓読みの完全普及の三段階を成し遂げました。漢字は訓読みによって日本語と融和することが可能になったのでです。また訓読みの完全普及は日本人が漢字を「徹底的に理解(同化)した」ことを意味します。これによって初めて漢字は日本語の完全な一部となったのです。
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現代における日本語の優秀性がお解かりいただけたでしょうか?ここまで造語能力を使えるようになるまで、歴史的変遷や様々な生みの苦しみがあった筈です。次回は日本語の成り立ちの通史を追ってみてみたいと思います。
次回は、【漢字の国語化(万葉仮名と2種のかな)】をお届けします。
お楽しみに!

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