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人類婚姻史を構造化する プロローグ

みなさん、こんにちは。
これまで「共同体社会と人類婚姻史」のブログでは、何度か人類の婚姻形態の歴史=婚姻史について扱ってきました。
人類の婚姻形態は、現在当たり前と思われている男女1対1の婚姻制度(本ブログでは一対婚と呼びます)やイスラム社会が事例として良く知られる一夫多妻制度だけでなく、非常に多様な婚姻形態が存在しています。
今回から、週1回投稿のシリーズ記事として、人類婚姻史の再整理に取り組みたいと思います。婚姻史って何?と言う初めての方や、人類の婚姻形態の多様性について詳しく知りたいと言う人にも解りやすいように、事例を多く紹介しながらシリーズ展開していきたいと思いますので、この機会にぜひ一緒に勉強していきましょう 😀
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写真は、南米ヤノマミ族→こちらから頂きました [1]
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さて、「婚姻史」の追究は、人類の婚姻形態を歴史順に整理・構造化していくのが目的ですが、何分、過去の婚姻形態について解る資料は殆ど残されていません。
この為、これまで「婚姻史」の追究では、集団の「生産様式」に着目して、婚姻形態の分析と整理を行ってきました。
先にも書いたように、人類の婚姻形態には多様な形態が存在しますが、例えば豊かな採集生産の部族においては群婚(グループ婚)制、自然圧力が厳しい狩猟部族では、首雄=族長に次ぐ「勇士」に婚姻を認める勇士婚と言ったように、生産様式に着目すると、婚姻様式を一定整理・構造化することができるからです。
しかし、例えば農業生産の社会では、一対婚の社会も存在する一方で、日本の村落共同体に見られた夜這い婚のように一対婚ではない社会も存在しています。このため、生産様式が人類の婚姻様式を規定する最大要因であると考えると、事実構造を見誤る恐れがあります。また、豊かな採取生産部族では、なぜ群婚制となるのか、自然圧力が厳しい狩猟部族では勇士婚となるのかについても(なんとなく繋がっているようには感じますが)、論理的に繋がっていません。
このような生産様式に着目した婚姻史の分析方法の問題点に対して、11月27日に開催された、るいネットの「なんでや劇場」で、全く新しい切り口が提示されました。
それは、人類の婚姻様式を規定するのは「みんなの最大期待⇒集団や社会の統合軸」であると言う視点です。
この新しい認識で、人類の婚姻様式を分析すると、「狩猟部族の最大期待は闘争期待(獲物の確保)であり、だからこそ闘争能力の高い勇士に女が集中する勇士婚になった。いつでも食糧が手に入る採集部族では闘争期待は衰弱し、充足期待が第一となる為、充足の中心である性の充足を誰もが得られる群婚制となった。」と構造化することが出来ます。
この認識を軸に考えれば、これまで婚姻形態の分析軸に利用してきた生産様式も、みんなの期待を規定する一要因として捉えられます。
そういう意味で、生産様式別にみんなの最大期待⇒集団や社会の統合軸を捉え、それに基づいて婚姻形態を分析・構造化していくことが、これまで追究してきた人類婚姻史の分析を更に深め、婚姻史を全体構造化することに繋がって行くと考えられます。今後展開していくシリーズでは、このような視点に基づいて、分析・追究していく予定です。
なお、人類の生産形態は、これまで発掘された遺跡や、未開部族に見られる生産様式の分析から、概ね以下のように移り変わってきたと整理することが出来ます。

<極限時代:500万年前~1万年前頃>
■密猟生産時代
洞窟に隠れ住んで、肉食動物の食べ残した動物の骨などを拾い集める。圧倒的な自然外圧状況の中にあり、武器・道具は殆ど使用されていないが、原人時代(確認されている範囲では160万年前頃)には火の使用を始める。
■旧狩猟生産時代
弓矢発明以前の時代で、武器は石器の槍~後期には投げ槍が使用され始める。密猟生産時代に比較すれば、外圧はやや低下しているものの、まだ地上を堂々と歩き回ることは出来ず、洞窟生活が中心。
<地上時代(採取・漁労・狩猟時代):約1万年前~>
■採取・漁労・狩猟生産時代(初期)

弓矢の発明により、外敵と同等以上に闘えるようになり、地上に進出。自然外圧は極限時代の想像を絶する圧力状況から、著しく低下することになり、忽ち外敵を駆逐して繁殖していく。
このうち、北アジア、北米など北方を中心とした地域では、狩猟生産が中心となり、温暖な地域では狩猟生産から、採取・漁労生産が中心となっていく。
採取・漁労・狩猟生産時代の初期は、まだまだ人類の数は少なく、集団規模も小さかったと考えられ、自分達の集団以外の同類と接触することは殆ど無かった。
狩猟生産が中心であった北方地域は自然圧力が依然として厳しい状況であったが、南方を中心とした採取・漁労生産集団では自然外圧は無いに等しく(食料も豊富で飢えることもまずない)、同類圧力も殆どゼロの無圧力状況にあった。
■採取・漁労・狩猟生産時代(後期)
弓矢の発明と地上進出による生産力の上昇により、人類は急速に繁殖。その結果、集団規模の拡大と分化が繰り返えされ、同類同士の圧力、同類闘争の潜在的な緊張圧力が働き始める。
<私権時代:5500年前~>
■牧畜→遊牧生産・農耕生産時代

貯蔵→定住化と家畜の私有による私有意識の発生+乾燥化を契機とした略奪闘争の果て
に、武力支配国家が成立。
■工業生産時代
商品市場→資本権力支配の社会へ。

現代社会は、私権時代・工業生産の時代から、次の時代(物的価値ではない意識生産の時代)へと移行している状況にありますが、現存する未開部族の社会においては、採取・漁労・狩猟などの生産様式を残している部族が多数存在します。
これらの未開部族社会においては、みんなの最大期待⇒集団統合軸も現代社会と違っている為、それぞれの集団の期待に適合した婚姻形態が取られており、それゆえに現代社会の婚姻形態・婚姻様式とは大きく異なっています。
本シリーズでは、歴史資料として残っている記録や、これらの未開部族の調査記録を元に、婚姻形態を整理・構造化していきます。
なお、既にるいネットで分析・構造化された「世界婚姻史図解」が存在しますので、本シリーズではこの図解を導きの糸として、シリーズ展開していく予定です。
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世界婚姻史図解(クリックすると大きくなります) [3]
それでは、次週から始まる本編をお楽しみに 😈

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