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左上:トロブリアンド島の女性 [5] 右上:インディアンの踊り [6]
左下:日本の縄文時代 [7] 右下:タヒチの女性 [8]
今回は、前回 [9]の兄妹婚に続き、更に集団が分割していった後の交叉婚について扱いたいと思います。
交叉婚の事例としては、オーストラリア原住民のカミラロイ族、北米インディアン70部族、日本の縄文時代など、更に南の豊かな採集部族の中でポリネシアのタヒチ島、パプアニューギニアのトロブリアント島に、その事例が見られますが、大抵は南方系の部族において発生した婚姻様式です。
ここでは交叉婚の内容と、なぜ交叉婚に変化する必要があったのか、当時の外圧状況や集団の期待とはなんだったのかを見ていきます。
いつものように応援宜しくお願いします。 [10]
交叉婚は「世界婚姻史図解」の下記の部分に当ります。↓
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まずは簡単に交叉婚についてまとめておきたいと思います。
【母系社会の交叉イトコ婚図解 [12]】
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●基本的な仕組み
交叉イトコ婚とは、決められた他集団に男が通うことによって、必然的に親の“異性の兄弟姉妹の子供”(交叉イトコ)が婚姻の対象となる仕組みです。・男からみれば、母の兄弟(オジ)の娘が結婚相手であり、・女からみれば、父の姉妹(オバ)の息子が結婚相手になります。
●生涯生まれた集団に所属する
婚姻では男が他の氏族に“通い”ますが、生まれた子は男も女も生涯生まれた氏族集団に“所属”しています。子供からみれば、同じ集団に所属する母とその兄弟(オジ)、祖母(母の母)とその兄弟によって育てられます。
このように、交叉婚とは、それまでの単位集団内(班内)の婚姻から、他集団の相手との婚姻へと、集団同士の婚姻を制度化したものです。
●なぜ兄弟婚から交叉婚へ移行したのか。
生産力が一定上がると人工が増え、集団は分割を繰り返す。分割された集団が増えるにしたがって同類闘争圧力が上昇します。
一方で、分割された単位集団は固有の共認と求心力を形成し、全体から見れば遠心力(分散力)を持ち始める。とりわけ、生産・生殖一式を備えた集団の場合、閉鎖性・自立性が高くなり、部族集団の統合を危機に陥れます。
<外圧> <期待> <婚姻様式>
食糧生産力UP→人口増→単位集団分割→同類闘争圧力UP⇒単位集団統合力⇒ ?
の増大
∥ ∥
閉鎖性UP・・・・・・・・・・・・・・・・・・・閉鎖性打破
単位集団を超えた共認統合期待
しかし、集団分割により個々には閉鎖性が高まり全体としての求心力が弱まった状態の集団の期待は、再び集団の統合力の回復に向かいます。しかも、単位集団ごとの共認では結局閉鎖性を高めるだけなので、集団を超えた共認による統合へと向かう。
つまり、この集団を超えた共認統合という課題は、集団を超えた充足期待に収束することになる。それが集団を超えた班外婚、すなわち交叉婚に至った一番の理由だと考えられます。
この様に考えると、同じ集団婚である兄弟婚から交叉婚への変化とは、兄弟婚=近親相姦を禁止=タブーというより、外圧の変化により集団期待の内容が変わり、それまでの班内の充足から班外へと、充足対象をより広げた婚姻様式の変化だと言えるのではないでしょうか。
●ポイントは兄弟婚も交叉婚も、集団婚である
兄弟婚・交叉婚を通じて重要なことは、近代のように個人が婚姻の単位であるという発想は皆無であり、集団が婚姻の単位であったという点です。従って、「兄弟婚」・「交差婚」の2つは、極限時代の「全員婚」に続く「集団婚」と見ることが出来ます。(正確には班=氏族単位の集団婚。従って、正式には兄弟婚は班内乱婚、交叉婚は班外乱婚と呼ぶのが妥当。)
つまり、この時代のみんなの期待とは集団の充足そのものであり、集団規模の拡大→集団数の増加に伴って、“集団を超えた統合(=充足)期待が、交叉婚を編み出した”と考えることが出来ると思います。