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【共同体社会の原点(集団)を追求する】2~群れの中での雌雄分化の位置づけとは~

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写真はコチラ [1]
みなさんこんにちは。【共同体社会の原点(集団)を追求する】シリーズの第2弾です
前回記事では、原初生物は群れていた いつから群れ始めた 何故群れているのか という視点で原核生物~真核生物について調べました。原核生物も真核生物も「群れ」る事で外部環境に適応してきた事がわかりました。バイオフィルムの中で共存して外部環境に適応している事実はとても興味深かったです。
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今回の記事では、雄雌分化が「群れ」の中でどのような位置づけで行われてきたのか?について生殖集団の歴史を調べてみます。
原核生物の作りは単純でDNAの周りに細胞壁が形成されています。真核生物に進化すると,膜(核膜と細胞膜)の二重構造になります。この変化が遺伝子交換に大きく影響しました。安定的な仕組み(核が二重の膜で守られている)となったことで以前に比べ、他の仲間と合体しにくくなりました。
この状況から遺伝子交換を求めて生殖という様式になったと考えられます。
■雌雄分化の始まり
事例① クラミドモナス(真核単細胞生物)

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写真はコチラ [2]

第6話 奇跡のシステム・性 [3]

太古の生物と同じように、普段は単純に分裂して増えます。このクラミドモナスが、栄養不足になるとどうなるか?栄養分の全く含まれていない水の中に入れてみると、バラバラに動いていたクラミドモナスが所々で集まり始めました。よく見ると二つの細胞が震えながら近づいていきます。やがてお互いに結びつき、一つになったのです。クラミドモナスは栄養不足に陥った時、二つの細胞が合体し一つの細胞として生き始めたのです。今度は合体した細胞を栄養のある所に戻してみます。一週間後、合体した細胞は再び分裂を始め、増えていました。しかし、分裂する前の細胞とは、大きさや色が微妙に変わっているものがありました。分裂する時に、これまでとは違う何かが起こったのです。

接合の前後で細胞に変化が起きている事が明らかになっています(=接合の後は全く別細胞となっています)。外部環境の変化を察知して他の仲間とくっつく仕組みには驚かされます。
 
 
 
事例② ミカズキモ(真核単細胞生物)

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写真はコチラ [4]

ミカヅキモを探しに世界をまわる [4]

ミカヅキモは、陸上植物にもっとも近い単細胞生物である。彼らは、世界中の湖や湿地、水田に生育しており、様々な大きさと形の種類が500種以上も報告されている。1個体につき1細胞と構造が単純なため、ミカヅキモを使えば構造が複雑な多細胞植物では出来ない実験や研究ができる。
 実はこのミカヅキモには雄と雌がいる(正確には+、-と呼ぶがまあ良いだろう)。この雌と雄、通常は分裂を繰り返して増殖している。しかし、栄養が無くなるなどして生活環境が悪化すると、雌雄が互いに見つけあい融合する。こうして「接合子」と呼ばれる植物の種子のような状態になるのである。固い殻で自分を守りながら休眠し、環境が良くなると、接合子からミカヅキモが発芽する。

 
 
 
事例③ ボルボックス(真核生物~多細胞生物)

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写真はコチラ [5]

ボルボックスの不思議 [6]

単細胞生物が集まってひとつの個体のような集合体をつくっているものを細胞群体といい、単細胞生物と多細胞生物の中間的な生物と考えられています。
ボルボックスでは、細胞の役割が大きく2つに分化しています。ひとつは「生殖細胞」、もうひとつは「体細胞」=鞭毛を動かす細胞です。1種類の体細胞と生殖細胞からなる極めてシンプルな多細胞体制です。
表面の体細胞には、それぞれ2本の鞭毛が生えています。これを使ってくるくると回りながら移動するのですが、すべての細胞が水を後ろにかくように運動することで、群体は前に向かって泳ぐことができます。

RIKEN NEWS 2007年4月 ボルボックスで探る多細胞生物への進化(西井一郎氏) [7]

ボルボックスは、栄養状態が良ければ、雄と雌はそれぞれ無性生殖を行い、どんどん増えていきます。しかし栄養状態が悪くなり飢餓状態になると、雄が周りの仲間に“無性生殖をやめて、有性生殖にしよう”とフェロモンを出して伝えます。すると雌は48個の卵をつくります。雄は約100個の精子からなる塊を128個つくり、それらを体外に放出します。精子の塊が雌の身体に入ると、精子はばらばらに分かれて卵を目指します。受精してできた接合子は乾燥に強く、水がなくても土の中で生きていけます。それほど生命力が強いのです。

 
 
 
事例④ 海綿(多細胞生物)

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写真はコチラ [8]

雌雄の役割分化3 ~雌雄分化の第一段階=殖産分化~ [9]

ボルボックスよりも殖産分化が進んだのがカイメンです。カイメンは上が開いたつぼのような形をし、海底の岩などに固着している動物です。
生殖方法は有性生殖と無性生殖があり、有性生殖の場合は襟細胞が精子を作り、原生細胞が卵子となります。無性生殖の場合は原生細胞が胞子のような役割を果たし、出芽により別の個体がつくられます。
カイメンの段階では体細胞の分化が進んでおらず、原始的な形態を残す襟細胞や原生細胞は、生殖細胞にも、専門化した体細胞にも変化する事が出来ます。進化が進む中で殖産分化が明確化し、細胞の役割が専門化するにつれて、細胞同士の互換性は失われていったと考えられます。
カイメンの殖産分化のもうひとつの特徴に、体細胞が卵子になる原生細胞守っていることが上げられます。体表と内側の層の間にある中膠の位置に原生細胞が配置され、体細胞は5時間に1回という高速で細胞分裂し、大量の細胞を使い捨てることで、毎日大量に摂取する有機物に含まれる毒から生殖細胞を守っています。

■群れの進化と雌雄分化の関係

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写真はコチラ [10]
群れについて考えた時、原核生物~真核生物(更には、ほ乳類)へ至る進化過程では常に群れていたのでしょうか その答えになる説として組織的階層進化があります。今回扱っっている、原核生物から真核生物への進化過程についても書かれている組織的階層進化のブログを紹介します。
組織論的アプローチからの進化論 [10]

真核単細胞生物とは原核単細胞生物が寄り集まって、より上位の階層で全体を統合する組織機構を実現したものと見なすことも可能だ。生物界では真核細胞内に存在する小器官をオルガネラと総称するが、それ以前にはひとつの生命体として存在していた原核細胞生物が、真核細胞時代には、単独では生きていけないかわりに、新しい生命体‘全体’を協働して支えていくオルガネラという‘部分’に継承されることで、生命体自体は真核細胞という新しい次元での生存を勝ち取ったとも言えるだろう。

原核生物が真核生物の一部となり新たな生命体になる進化過程がある、一方で本シリーズの前回記事ではある矛盾点が提起されています。
前回記事より

遺伝子の交換を行っている原核単細胞生物は、「個体」という概念は無いに等しく、生命体=共同体といえますが、個体としての安定度を高めるように進化した真核単細胞生物は、逆に遺伝子の変異可能性が小さくなったといえます。

より高い安定度の獲得と変異可能性が小さくなる矛盾です。ここを突破する策が、これから紹介する実現論に書かれています。進化過程において雌雄分化はどのように進化に影響を与えてきたのか。
実現論:ロ.雌雄の役割分化 [11]

生物が雌雄に分化したのはかなり古く、生物史の初期段階とも言える藻類の段階である(補:原初的にはもっと古く、単細胞生物の「接合」の辺りから雌雄分化への歩みは始まっている)。<中略>これは、雌雄に分化した方がDNAの変異がより多様化するので、環境の変化に対する適応可能性が大きくなり、それ故に急速な進化が可能だったからである。
 事実、進化の源泉はDNAの多様性にある。つまり、同一の自己を複製するのではなく、出来る限り多様な同類他者(非自己)を作り出すことこそ、全ての進化の源泉であり、それこそが適応の基幹戦略である。しかし、同類他者=変異体を作り出すのは極めて危険な営みでもある(∵殆どの変異体は不適応態である)。従って生物は、一方では安定性を保持しつつ、他方では変異を作り出すという極めて困難な課題に直面する。その突破口を開いたのが組み換え系や修復系の酵素(蛋白質)群であり、それを基礎としてより大掛かりな突破口を開いたのが、雌雄分化である。

群れの進化過程で安定と変異の矛盾という壁を乗り越えて、基幹戦略として位置づけられた雌雄分化を実現してきました。これによって多様な同類他者(=仲間)を作り出して生物は進化を遂げます。厳しい外圧状況の元で、多様な変異体を作り出し適応していきました。
次回は、多細胞生物の群れについて着目してみます。
代表格が魚の群れです。皆さんもご存知だと思いますが、魚は何故群れるのでしょうか 群れることで闘争性がUPしている 等いくつか予想できます。
より高度化された組織機構である多細胞生物の「群れ」の分析を楽しみにしていてください。

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