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名前から見える父系社会

『母系・父系の有様と双系の謎』 [1]によると日本は父系制ではなく、双系のようですが、父系制には姓名にも特色があります。
今日は文化人類学的区分による父系社会における名前の付け方の一例を紹介したいと思います。
日本とは明らかに違う事が解ります。
<イスラム教で一夫多妻のアラブ編> pro_05.jpg
興味あったらぽちっと!
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■アラブ人の男性の名前
シリア・レバノンやエジプトなど、社会が部族単位で動いていないような地域のアラブ人は、以下のような形で自分の名前を名乗ります。
 Muhammad Ali Ibrahim
 ムハンマド アリー イブラーヒーム
   ・ムハンマド=本人の名前
   ・アリー=父親の名前
   ・イブラーヒーム=祖父の名前
上の図を見ても判るように、部族意識が強い地域以外に住むアラブ人は通常「自分の名前」+「父親の名前」+「祖父の名前」を組み合わせたフルネームを名乗っています。このタイプの名前を作る場合は、人名リストに載っている名前を3つ組み合わせるだけで済みます。
この方式で先祖の名前をズラズラと書き連ねることは出来ますが、普通「フルネームを言ってください」と言われた場合は、上の方式で3つの名前を言うことになります。
■アラブ人の女性の場合
シリア・レバノンやエジプトなど、社会が部族単位で動いていないような地域のアラブ人は、以下のような形で自分の名前を名乗ります。
 Samirah Ali Ibrahim
 サミーラ アリー イブラーヒーム
   ・サミーラ=本人の名前
   ・アリー=父親の名前
   ・イブラーヒーム=祖父の名前
上の図を見ても判るように、女性の名前は基本的に男性名と同じ形で作られます。アラブ女性は結婚しても相手の姓に変えることはしません。なお、彼女が生んだ子供達は、男児であっても女児であっても、父親とその先祖の名前を名乗ることになります。
『アラブ人の名前の作り方』 [3]より引用

公的には、祖父の名前まで合わせた形をフルネームとして使うようですが、何世代も男側の名前で祖先を遡る事が出来るようです。
【本人の名前】+【父の名前】+【父の父の名前】+【父の父の父の名前】+【父の父の父の父の名前】+・・・・・・・・・・
イラクの元大統領サッダーム・フセインは、本人の名がサッダームで、父の名がフセインとなります。フセイン大統領とマスコミの報道もありましたが、誤りですね 。
女性の場合、最初の本人の名前のみ女性名で、それに続くのはすべて男の名前ということになるようです。
結婚しても名前は変わらず夫婦別姓で、常に父方の血筋の名前が、綿々と本人の名前の後に続くようです。
モンゴル国でもロシアの影響で父の名を姓の代わりに使い、本人の名の前に置くようです。
例えば、朝青龍明徳の本名ドルゴルスレン・ダグワドルジは、ダグワドルジが本人の名、ドルゴルスレンが父の名という形になります。
文化人類学的な父系社会というものは、名前においても男側の血筋を辿れるシステムになっているようです。

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