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日本語の成り立ち2~同祖論~

Posted By okatti On 2009年11月26日 @ 7:35 PM In F 日本人の起源 | 32 Comments

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写真は青森県・麻生遺跡出土の土製仮面(縄文晩期)。東京大学総合研究博物館 [1]よりお借りしました。
日本語の成り立ち~縄文語の発見1 [2]で、重層説(日本語はあるXという言語にYという言語が積み重なってできたとする見方)から紹介するとしましたが、その前に同祖論日本語はあるXという言語とその起源を同じくしているという見方)から紹介しておいた方がいいとのアドバイスがありましたので、先に同祖論の諸説を概観します。
日本語の起源研究の状況 [3]にもあるように、文法はアルタイ系、語彙は南方系との類似性が高いと言われているので、これらを中心に紹介します。小泉保著『縄文語の発見』(1998年)より。
応援よろしく  by岡
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では、対象となる言語の地理的分布から、同祖論は北回りの路線と南回りの経路で論じます。
(A)北回り:琉球→朝鮮→モンゴル→ツングース→アルタイ
a.日本語と琉球語
琉球方言は奄美、沖縄、宮古、八重山の四群島にわたる諸方言の総称で、南北13000におよび、飛び石状に散在する島々からなり、それらの方言差は著しい。すでに、チェインバレン氏、ポリバーノフ氏、服部四郎氏らにより、両者の同系論は証明済みである。例えば、琉球の与論島方言(与)と比較すると、
 「雲」kumoクモ:(与)kumuクム   「雨」ameアメ:(与)amiアミ
 「骨」honeホネ:(与)puniポニ    「羽」haneハネ:(与)paniパニ
 「亀」kameカメ:(与)hamiハミ   「角」kadoカド:(与)haduカドウ

母音(オ:ウ)、(エ:イ)が対応し、子音[h:p]、[ka:ha]が対応し、語中の子音についても[-m-][-n-][-d-]が共有されている。
規則的音声対応は、このように語の頭位、中位、末位のいずれにおいても音声の一致もしくは対比が成立しなければならない。頭位の音のみを比べる[頭合わせ]は単なる類似の域をでない。
とにかく、琉球語こそ現代日本語との間に規則的音声対応が見出されるただ一の同系言語である
b.日本語と朝鮮語
明治以来日本語と朝鮮語の同系を主張する学究の数は多いが、いずれも比較言語的な根拠をもたない。
c.日本語とモンゴル語
日本語の一音がモンゴル語では多様に変わっており、複合対応に関して何も論拠が示されていない。
d.日本語とツングース語
両者には音韻法則を立てるための確実で豊富な対応語例が見つからない。
e.日本語とアルタイ語
モンゴル語は中央アジアのチュルク諸語および東アジアのツングース諸語とともにアルタイ語族を形成するという見方がある。これが言語学史上有名な「アルタイ語説」である。
藤岡勝二氏は明治41年(1903年)「日本語の位置」と題した講演で、日本語とウラル・アルタイ諸語と通有する類型的特徴を14項目にまとめている。ウラル語はウラル山脈の西側で話されているフィンランド語とハンガリー語に代表される語族である。
以下、主としてトルコ語(ト)の例を用い、ウラル・アルタイ語と日本語が共有する特徴を略述すると、
[A]音声的特徴
 (1)語頭に重子音がこない(子音が連続しない)
 (2)語頭にr音がこない (「ロシア」は以前「オロシャ」と呼ばれたいた)
 (3)母音調和と呼ばれる語を構成する母音についての制約がある
[B]形態的特徴
 (4)文法上の性がない (ドイツ語には女性名詞、男性名詞のような文法性の別がある)
 (5)動詞変化では、語幹に接尾要素が付加される ((ト)oku-t-ul-du「ヨマ・サセ・ラレ・タ」)
 (6)動詞語尾の種類が多い
 (7)代名詞の変化では助詞が付着する ((ト)bun-dan「コレ・カラ」)
[C]統語的特徴
 (8)冠詞を用いない (英語には定冠詞theがある)
 (9)後置詞を用いる ((ト)kalem ile「ペン・デ」)
 (10)所有はhave「~をもつ」ではなく、「~がある」と表現される (彼ノ(モノ)・本ガ・アル)
 (11)形容詞の比較は奪格「~ヨリ」の形を用いる
 (12)疑問文では文末に疑問の助詞がくる ((ト)okudu mu「読ンダ・カ」)
 (13)接続詞を用いることが少ない
 (14)修飾語が被修飾語の前にくる ((ト)guzel kiz「美シイ・娘」)
    目的語は動詞の前にくる ((ト)kitap okudu「本ヲ・読ンダ」)

こうした論拠は、新村出氏「国語系統の問題」(1911)にも受け継がれ、「日本語はウラル・アルタイ語に縁を引くが、その関係は甚だ疎遠である」との結論を出している。
また金田一京助氏は『国語史系統編』(1938)の中で、日本語をウラル・アルタイ語の一員として位置づけ、「文法がほぼ一致する上に、音韻組織にも重要な共通点があるとすれば、この上は、語彙の確実な一致さへ見出されるならば、国語はアルタイ語族に属することが実証されるわけである」という結論を出している。
ところが肝心な語彙の確実な一致が見出されないのである
その上、現在ウラル語族とアルタイ語族を一まとめにする見方は保留されているし、アルタイ語族自体の成立も疑問視されている状況にある。
(B)南回り:南島諸島→タミル→チベット・ビルマ
a.日本語と南島語(オーストロネシア語)
太平洋とインド洋にかけて散在する島々で話されている言語は「オーストロネシア諸語」と総称されている。こうした大洋州(オセアニア)に広がる諸言語――インドネシア系のマライ語、メラネシア系のフィジー語、ポリネシア系のサモア語、ミクロネシア系のトラック語――の間には音声の対応が認められ、同系であることは間違いない。
オランダの南島語学者ラベントン氏や松本信宏氏は、次のように日本語を南島語と結び付けている。
 (日)「木」ki:(マライ語)kaju
 (日)「魚」uwo:(ジャワ語)iwak
 (日)「顔」kapo:(マライ語の方言)kapo
 (日)「口」kuti:(サモア語)gutu、(マオリ語)nutu(ともに「唇」の意)

このように、南島諸島の言語の中から似た語形を適宜ひろいあげている。しかし、比較方法は一つの言語と日本語との間にできるかぎり多数の類似語彙をみつけて、音声対応を検討するのでなければ効力をもたない。気まぐれな対比は系統についての証明力を欠いていることになる
b.日本語とタミル語
インド亜大陸の南端部を占有しているドラビダ族、そのドラビダ語の中でもタミル語と日本語との類似が取り沙汰されるようになった。藤原明氏『日本語はどこから来たか』(1981)、大野晋氏『日本語とタミル語』(1981)など。
しかし例語における複合対応はその原因が究明されなければ、単なる類似の線を越えることができない。
またタミル語は、ドラビダ諸語の基本的特徴である4種類のそり舌音t、n、l、r音をもっているが、日本語で消滅したわけも知りたいものである。
さらに文法的相違も問題となる。タミル語の名詞には男性、女性、中性という三つの文法性があって、これが助詞の活用にも作用している。こうした文法性が日本語では消え去って痕跡すらないのはなぜであろうか。またタミル語の名詞には単数と複数があり、ともに格変化を行なう。
こうした点について納得のいく証明がないと、日本語とタミル語の同系性の承認を得ることは難しいであろう。
c.日本語とチベット・ビルマ語
(省略)
以上、言語の血縁関係を認定する「規則的音声対応」という判定法により、琉球語は間違いなく日本語の分家であることが証明できた。
しかし、その他の言語については、類似していると思われる語彙や文法特徴をいかほど数えあげてその親族関係を主張し合っても、規則的音声対応が取り出せないかぎり水掛け論に終始することになるであろう。
では次回は、重層説を見ていきます。お楽しみに~


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[1] 東京大学総合研究博物館: http://www.um.u-tokyo.ac.jp/dm2k-umdb/umdb/DG/

[2] 日本語の成り立ち~縄文語の発見1: http://bbs.jinruisi.net/blog/2009/11/000695.html

[3] 日本語の起源研究の状況: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=184840

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