2009年11月19日
日本語の成り立ち1~縄文語の発見~
日本人の起源を探る一アプローチとして日本語の起源=祖語を解明するシリーズをお贈りします。
自然音を左脳で聞く日本語の凄さや、漢字の高い造語能力は日本語だったからこそ、高度な思考を母国語で出来るのも日本語だからこそにおいて日本語の優秀さが指摘されていますが、どのようにして日本語は成立したのか?
このシリーズでは、日本語の祖語が縄文語であること、そして今も継承されていることを明らかにしたいと思います。
(右図は縄文土偶。遮光器土偶と呼ばれているもので、ここからお借りしました。)
最初に、他の言語と比較して日本語がどのような特徴をもっているかに触れておきたいと思います。金田一春彦著『日本語(上)』(1988年)(国名は当時のままにしています)より。
1.日本は世界でも珍しい、一言語・一民族の国家
北海道にはアイヌ語を話すアイヌ民族がおり、朝鮮語を話す在日韓国人・朝鮮人はそれよりも多いが、彼らは日本語も話す。全般的に見て、この程度なら一言語・一民族の国家と言ってよさそうだ。
一国一言語は、韓国と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)ぐらいで、多くはモナコやバチカンのような小国である。
多くの言語を使用する国は、パプア・ニューギニアの666言語、インドネシアの567言語、ナイジェリアの412言語がベスト3で、100以上の言語をもつ国が16もあがっている。インド・中国・アメリカ合衆国・ソ連などいずれもその例であるが、多くの言語をもった国がいかにたくさんあるかを示している。
2.日本語は多様である
相手によって言葉遣いを変えたり、自分の身分や性別を考えて言葉を選んだりするのは日本語なればこそできる表現で、「ヨーロッパへ行ったら三つぐらいの外国語を使い分けているようだ」と評されている。
日本語の言葉の違いが一番激しくあらわれるのは、何と言っても、地域による方言の違いである。奥羽の北や九州の南の方へ行くと、東京や大阪の人には何を言っているか分らない。
一般に方言の違いが激しいのは、どちらかと言うと文化のあまり高くない地域に多い特徴で、それは、未開社会は互いに閉鎖的で大きな社会をつくっていないためである。
日本語の場合は原因は他にあり、日本人がこの領土に来てから悠久の年月が経っているからである。
大国アメリカやソ連では方言の違いはあまりないが、それは、ロシア人がキプチャック汗国を滅ぼして今のソ連にロシア帝国を建てたのは15世紀後半のことである。アメリカ人の祖先がアメリカ大陸に合衆国を作ったのは18世紀後半のことである。日本の歴史に比べれば、ついこの間のことだ。ロシア語やアメリカ語(英語)が各地に広まったのはそれ以後である。だから、方言の分化が行われるのに十分な歳月がなかったのだ。
日本語の方言の違いはとにかく激しい。が、無為無策ではない。東京の言葉を基礎として、これにさらに磨きをかけた言葉を考え、これを<標準語>として学校教育で普及させた。標準語のもとは江戸の中流以上の家庭の言葉であったが、江戸時代に参勤交代制度のおかげで、日本全体にかなり普及していた。標準語が分るということは、様々な文書や教科書等の普及にとってすばらしいことであった。
3.日本語は系統的に孤立した言語
日本語は、今まで同系だとはっきり証明できたのは沖縄の言葉だけで、これ以外に同族の言語がない、孤立した言語である。これは島国で悠久の年月をかけて形成されたこと、つまり他の言語と交渉が少なかったからであろう。
しかし他の言語との交渉は皆無ではなく、上代においては百済から漢字を学び、はじめて文字を取り入れた際は、今の時代以上に日本語が外国語によって骨の髄まで冒されそうな危機を迎えたであろうし、明治以後および戦後は大量の洋語が入ってきた。しかし中国語から受けた影響はそれほど大きいものではなく、英語から受けた影響はさらに小さいといってよい。
また逆に、外国語へ日本語が与えた影響はさらに小さく、文明国の国語としては珍しいことである。
引用者注:島国ゆえに、言語が一変するほどの掠奪闘争を経験することなく(他国への侵略もほとんどなく)、悠久の年月をかけて他集団(他文化)を同化・吸収しながら日本語をはぐくんできた。そのような成り立ちだと言えそうです。
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では、このシリーズの目次を紹介しておきます。小泉保著『縄文語の発見』(1998年)を導きの糸にしています。「まえがき」に以下のように述べられている。
これまで日本語史や系統論では、なぜか弥生時代の言語から日本語が始まり、縄文時代の言語は血のつながらない異質不明の言語と思い込んできた。 そのため系統論はいきなり日本語の祖先を特定しようとして、日本の北方に南方に親類縁者を探し求めてきたが、結局それらしい相手を見つけることができなかった。
弥生語が縄文語を駆逐して、それに入れ替わったとする証拠は何もない。日本語の方言分布を念入りに調べていけば、必ずや縄文語の様相をとらえることができるであろう。
これまでの日本語の成り立ちに関する諸説を紹介した上で(これらは決着を見ないまま現在に及んでいる)、これら系統論諸説とは別の手法を使って具体的に縄文語を再現した仮説を紹介します。
2.二重層説1:南方語の上に北方語が積み重なってできたとする説
村上七郎『日本語の誕生』(1979年)の紹介
3.二重層説2:北方語の上に南方語が積み重なってできたとする説
川本崇雄は『南から来た日本語』(1978年)の紹介
4.多重説:4つの言語が流入して成立したとする説
安本美典『日本語の誕生』(1978年)の紹介
5.国内形成論:縄文時代の言語から原日本語ともいうべき弥生語ができあがったとする説
服部四郎『日本語の系統』(1957年)の紹介
以下は、5の路線を継承して、縄文語の方言の中に日本祖語の基底を掘り起こした、小泉保『縄文語の発見』より紹介。
6.縄文語の復元
日本語の方言についての比較言語学的考察によって、本土縄文語(縄文時代後期)の姿を復元する
7.弥生語の成立
形態や統語の面では大方縄文語の伝統を受け継ぎ、一部音韻を変化させた弥生語が成立した
8.縄文語の形成
中期・前期縄文語を推定する。
ではお楽しみに~
- by okatti
- at 17:47

comments
一国一言語は、日本では当たり前ですが、他には本当に少ないんですね。
中国もインドも他民族、多言語、他宗教ですし、アメリカにいたっては寄せ集め国家ですもんね。
陸続きの国は侵略が絶えなかったのに対して、侵略を免れた日本には、言葉(観念)を超えた様々なコミュニケーションが発達していそうだと思いました。
「日本語の成り立ち~縄文語」シリーズいよいよスタートですね。
私がアップした記事「日本人の言葉と共認内容~縄文語について」http://bbs.jinruisi.net/blog/2009/09/000665.html
で提起した内容が、もっと本格的に追求できそうですね。
図らずも言いだしっぺになれて光栄です。
「日本人の本源性と可能性は、縄文以来「ことば」を介して受け継がれてきた共認内容に宿っている」ことが、明らかになるところまで行ければいいのですが…。
特に言語学の分野は、単一言語の日本人には、実感し難い領域が多く、理解するだけでかなり骨が折れますね。
でも「日本人の可能性基盤を発掘しよう」ということならやりがいもあるし、避けて通れないテーマです。
気合入れていきましょう!
一民族一言語って、世界的にも珍しいなんて知りませんでした。他の国家や民族の言語がとても多いことにも驚きです!
尚且つ日本語は多様であるというのも言われてみれば、なるほどですね☆
思いのほか日本語って、かなり特殊な言語のようですね。気になってきました。その日本語の謎に迫る今後の展開楽しみにしてます!
hiroshiさん、コメントありがとうございます。
>侵略を免れた日本には、言葉(観念)を超えた様々なコミュニケーションが発達していそうだと思いました。
日本語には心理内容を表わす言葉が豊富で、外国人には理解しにくく、外国語に訳せないものが多くあるそうです。
例えば、「気」という言葉を使った表現で、「気にかける」「気に障る」「気にやむ」「気を配る」「気がねする」「気がおけない」「気まずい」「気がひける」など、微妙な心理の動きを表わす語彙は訳し分けることができないそうです。
また英語には「もったいない」という単語がなく、「懐かしい」「名残惜しい」「さりげなく」「無心に」「あやかりたい」などもぴったり当る英語がないようです。
逆に恋愛に関する語彙は少ないそうです。
Nandeyanenさん、コメントありがとうございます。
日本語は欧米の言語学の体系に当てはめてもうまく行かないと言われていますね。「言葉」から共認内容を探るのは、次のシリーズになるかもしれませんね。
よろしくお願いします。
海人さん、コメントありがとうございます。
一国にたくさんの言語があると、そのうちのどの言語を<国語>にするかがやかましい問題になり、例えばベルギーではオランダ語とフランス語の両方が国語、スイスの憲法ではドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンス語を国語としているそうです。
国によってはゴタゴタするところがあって、インドネシアでは、ジャワ語を国語にしようとする動きがあったので、それを斥けてインドネシア語を国語にするため、憲法に一条を書き入れるというひと悶着があったそうです。
一つや二つだけを国語と決めると、他の言語を日常語としている人たちにとってははなはだ面白くないわけで、そこで国語の他に<公用語>というものを認めている国が多いそうです。公用語で新聞を発行させ、ラジオ・テレビも公用語を使っていいことになっているのです。
その代表がインドで、10以上の公用語を使っており、例えば紙幣には「二ルピー」と全部の公用語で書き表わされているそうです。
国語も公用語も日本語一つしかないというのは、稀有な特徴ということになりますね。
一民族一言語って、世界的にも珍しいんですね。
現在の世界共通語は、「英語」ですが、これはイギリスが世界制覇したからであり、その言語が優れているからではありません。
使っている人数からすると、中国人の人口からしても中国語は侮れないような気がします。
ともあれ、欧米人から見た難解な「日本語」は、その複雑さが実は非常に重要な要素なのかもしれないと、本記事を見て思いました。
複雑な日本語を前にして、簡単で分りやすい言語が優れている自国語を正当化して、日本語を低俗であるかのような発信に騙されないようにしたいと思います。
だから、鳩山首相も英語で発信しないで、日本語で発信して欲しい。
英語が話せるやつが、偉いと言う間違った認識を正して欲しい。
正しい日本語を話せるやつが、カッコいい日本人ですよね。
猪飼野さん、コメントありがとうございます。
明治以来、「日本語は取るに足らない言語である」とか「出来の悪い欠陥言語」だと勝手に思い込み、西洋の言語を採用しなければ世界の文明から取り残されてしまう、と言ってきた人たちがいるそうです。
代表的には、明治の初代文部大臣森有礼は、遅れた日本語では進んだ西洋文明を取り入れ国を発展させることは難しいので英語を国語にしようと主張。志賀直哉は敗戦を漢字学習の効率の悪さのせいにしてフランス語を国語にすべきと主張。尾崎行雄は非能率な漢字を追放しなければ日本の民主化は望めないと主張。
このような思い込みや洗脳から脱却し、事実に立脚する重要性を発信していきたいですね。
小泉さん、池橋さんの日本語分析については当方もこの2月に取扱いましたので、どのような内容で書かれるのか楽しみにしております。
http://blogs.yahoo.co.jp/kawakatu_1205/MYBLOG/yblog.html?m=lc&sv=%C6%FC%CB%DC%B8%EC&sk=0
Kawakatuさま、コメントありがとうございます。記事拝見しました。
日本語については、語彙は南方系、文法は北方系という南北問題が横たわっており、私も同様に頭を抱えています。
小泉氏も、縄文基語そのものがどのようにして形づくられたかは太古の霧の中に包まれている、と筆を置かれましたので、謎のままです。
ただ北方と言っても、いわゆる新モンゴロイド(寒冷地適応した人々)ではなく、その前に古モンゴロイド(スンダランド発の人々)が大陸を北上しているので、その中にアルタイ系の文法をもった一群がいてもおかしくないではないか。
Y染色体タイプも同系が大陸にいない、日本語も孤立語だとすれば、アジアのどこにも存在しない、日本列島のみで生き残った古モンゴロイドの一群がいた、と考えていいのではと思っています。
スンダランド経由の単語、文法・・・ありだと思います。それと北欧。どうもアジアの中国よりも東部へは海の道と砂漠の道・・・つまりヒマラヤの上下を情報が行きかっている気がします。「ワープ」しているなと感じます。
Kawakatuさま、コメントありがとうございます。
確かにアジア東部には、南回り(スンダランドから北上したもの)と北回り(ヒマラヤ北部を東進したもの)の2ルートあるといわれています。
南回り北上組は、その後東進組と西進組に分かれて、中央アジア(ex.チベット)ではこの西進組と北回り組が合流したと思います。
ヨーロッパの大部分はインド・ヨーロッパ語族ですが、フィンランドとハンガリーはウラル語族といって元来アジアから出て行ったとされています。アジアの北方のアルタイ語族(モンゴル語やトルコ語)とよく似ているといわれているので、南回り北上組の西進組だと思います。
フィンランド語もハンガリー語も、その後ヨーロッパ語の影響を受けてかなり改変させられたようです。
その点日本語は、発音でも文法においてもほとんど影響を受けていないことになりますね。