第一章では、日本の近世・近代を通じ庶民に根ざしてきた「夜這い婚」を中心に、日本人に残されていた共同体性や、性を含む共認充足が、婚姻関係の根底にあったことを紹介しながら共同体のカタチを学んできました
「日本の婚姻史に学ぶ、共同体のカタチ」
◆夜這い婚って何? [1]
◆夜這い婚を支える【学び】と【導き】 [2]
◆祭りにみる日本人の最大期待とは? [3]
第二章では、歴史を更に遡り、各時代の日本の婚姻様式についてさらに詳しく見ていきたいと思います。
私たち日本人に残る共同体性は世界でも特異なものですが、各時代ごとの状況にあわせ、多様な婚姻様式を塗り重ねてきています。その多様な婚姻様式を深く見ていく中で、大転換期に直面している私たち日本人の行くすえを、歴史に学び、今後の可能性を模索していく材料にしていきたいと思います。。
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●婚姻様式とはどのように決まり、どのように変化するのでしょうか?
一般的には、婚姻様式は生産様式(狩猟、採取、牧畜、農耕、遊牧など)によって決まるという説がありますが、まず最初に、婚姻様式を規定する要因について、もう少し深く捉えなおしてみると、
例えば、一対婚は農業生産という生産様式に規定されたものだったのか?
農業生産だから一対婚になるという論理は繋がっていないし、実際、農業生産の時代でも日本の夜這い婚など、一対婚ではない事例もある。
私権時代は万人が私権第一であるが故に一対婚になった。つまり、私権獲得というみんな期待⇒私権統合という社会の統合様式に規定されて一対婚になったと考えた方が整合する。(るいネット:人類の婚姻制もみんなの最大期待によって規定される) [4]
のように、「外圧⇒みんなの最大期待⇒婚姻様式」という図式が見えてきます。
つまり、時代時代で私たち人類が直面してきた
・外圧とはどのようなものだったのか?
・それらの外圧に適応するためにどのような期待が生じたのか?
・その期待に対しどのような婚姻様式が適していたのか?
に着目することで、先人達の「性の捉え方」や多様な「婚姻様式」への同化、理解が深まり、今後の可能性のヒントが見つかるのではないでしょうか。
そこで、第1回では、まず人類史500万年の99.9パーセントを占める、有史以前の婚姻様式について、2回にわたり記事にしていきます。
※教科書で教えられてきた、約6000年前から始まる文明史は、実は人類史のほんの僅かであり、人類史の実に99.9パーセントは、文明が始まる以前の時代にあります。
従って、この時代の状況を知ることからはじめていきたいと思います。
Q:古来から日本ではセックスを「目交い」と呼んでいたのを知っていますか?
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目交い( 三省堂提供「大辞林 第二版」より)
(1)目を見合わせて愛情を通わせること。めくばせ。
(2)情交。性交。
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○まぐわいとは…→心の交歓
お互いの目と目を交し合う事で、肉体的な快感は元より、心の交歓充足が得られるのが、人類ならではなんです。
○心の交歓充足って?
極めて静的な関係。お互いが向かい合い、抱き合い、ただ見詰め合っているだけでも、充分に充足できる機能を、人間は持っているんです。
(本来のセックスってなに?~男と女は充たしあうためにある~) [5]
古来から、人類にとってセックスとは単に子孫を残すためのものだけではなく、心の充足や安心感を得るためのものだったのです。
そして、このような性の捉え方は人類特有の現象なのです。
●このような人類特有の性はどのようにしてつくられてきたのでしょうか?
一般的な哺乳類(サル・人間以外)の性のあり方は、本能次元に刻印された生殖行為=子孫を残すためだけのものです。従ってそこに充足感なるものがあったとしても、それは本能的な充足ということになります。
一方、サル・人類は本能次元を超えた共認機能を獲得しています。
共認機能とは、相手に同化する、サル・人類に固有の機能。元々は、サル時代に形成された不全から解脱する為に形成された機能で、相手の不全(期待)と自分の不全(期待)を同一視する共感回路を原点としています。そこで相手と同化することによって充足(安心感等)を得ることができます。(るいネット:共認機能) [6]
つまり、この共認機能に、人類特有の性の秘密があります。
では、まずは冒頭にもあるように、婚姻様式を規定する、この有史以前の外圧状況とみんなの最大期待について見ていきます。
足の指が先祖返りして、それ以前の獣たちと同様、足で枝を掴むことが出来なくなったカタワのサル=人類は、樹上に棲めるという本能上の武器を失った結果、想像を絶する様な過酷な自然圧力・外敵圧力に直面した。そこで、本能上の武器を失った人類は、残された共認機能を唯一の武器として、自然圧力・外敵圧力に対応し、そうすることによって、共認機能(≒知能)を更に著しく発達させた。(実現論:前史) [6]
このように、有史以前の人類は、現代人の想像を超える凄まじい生存圧力が生じる環境下に置かれたため、当然強い生存期待が、みんなの最大期待として存在しました。
※想像を絶する外圧状況という意味で、極限時代と呼びます。
参考:極限時代の住処や食事
人類はつい一万年前まで、まともに地上を歩くことが出来ず洞窟に隠れ棲むしかない様な、凄まじい外圧に晒されていた。 [7]
石器に残った痕や、石器を使った痕跡のある動物の骨などの分析から、石器を使った対象は、狩をして得た獲物ではなくて、死んでからしばらく時間がたった動物であることがわかってきました。
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そして、サル時代に獲得した、足の指で枝を掴むという本能上の武器を失った人類が、このような過酷な時代を数百万年も生き延びてこられたのは、唯一残された共認機能に全面的に収束し強化することで、自他の不全を同一視し充足・安心感を得、かろうじて極限的な不全感を和らげる(不全解消)ことができたからなのです。
整理すると、
極限的な生存圧力の環境に晒された⇒強い生存期待がみんなの最大期待として生じる⇒唯一残された共認機能に全面収束し共認充足により不全を和らげようとする⇒すべての行為(性も含めて)が共認充足を得るための方向に収束していく
ということになります。
つまり、人類特有の性は、性行為そのものが他の哺乳類のように本能次元での行為から、共認次元の行為に上昇しているところに起因しているのです。
もう少し具体的に言うと、性の場面は当然ながら相手合ってのことですので、子孫繁栄という本能的なものに加え、共認機能をフルに稼動した相手との同一視から生じる充足感や安心感を得るための行為としての意味が塗り重ねられているのです。
(例えば、一般哺乳類はごく限られた生殖期にのみ発情するのに対し、人類は年中発情期であることや、セックスの際相手の表情と正対した正常位とするところからも、単なる生殖行為ではなく、共認充足を得るための行為であることがわかります)
また、見方を変えれば、人類の性とは、肉体的(本能的)な充足に限定されるものではなく、見つめ合うことや、身を寄せ合うこと、存在に感謝するなど、お互いを肯定視することから生まれる心の充足や安心感や感謝などの、心のふれあいの領域も含まれています。
目交い
○人間の活力源の原点
人類は、昔から仲間との共感・同一視が常にお互いの安心感を与え合える事が活力源となり、本能を超える機能を積み重ねてこれたんです。
相手を肯定視しようと思った場合、まずは目を見る。同一視から共感、そして共認=同化が出来たとき、心と心が通じ合い、全的な安心感・充足が得られる。この時、感謝の涙や自然な笑顔が、きっと浮かび上がっているはずです
これが、前段で述べた「目交い」と通じる、人類特有の性の本質であり、太古の昔の極限時代から数百万年間引き継いできているものなのです。
そして、当然現代人もこの構造を下敷きにして生きているのです。
このように人類の性は、共認充足を得るためのものであり、極限時代には共認充足を得ることが最大の生存課題であったことからすると、性こそが生存のための最大の活力源だったのです。
今回の記事では、人類特有の性とはどのようなものなのかについて、始原人類が生きた極限時代に遡ってみてきました。
次回の記事では、そのような極限時代の人類はどのような婚姻様式を生み出したのか?について見ていきたいと思います。