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初期人類は骨を食べていた!vol.14(直立二足歩行に関する仮説紹介-3)

vol.12 [1]vol.13 [2](直立二足歩行に関する仮説紹介)に引き続き、直立二足歩行の謎 における様々な学者の仮説を、島泰三さんの著書『親指はなぜ太いのか』より紹介させて頂こう思います。
今日は、日本の学者の直立二足歩行の謎 における仮説です 。
それでは、<直立二足歩行に関する仮説-3>を、お楽しみください 😀 。
下のぽちっとして、500万年前の人類の世界へ Let’s Go! してください。
では、いってらっしゃいませ。  

[3]


■渡辺仁「掘り棒・穴猟仮説」
「アウストラロピセサインの道具(掘り棒)運搬問題は単なる運搬能力の問題ではなく、採食(特に狩猟)と防御の活動の一環としての道具(掘り棒)の運搬(携行)の問題として扱わなければならない。この見地からすると、ヒト科の祖先の掘り棒使用(運搬・携行)は十分に直立二足化の重要要因になりえたというのが、著者の結論である。」
この渡辺仁さんの確信は、道具を持つことが直立二足歩行に結びつくという、ダーウィン以来の伝統的考え方で、その確証はアウストラロピセサイン段階に出現した打製石器(礫器インダストリー)、すなわち刃物によるようです。
しかし、島さんは掘り棒と石器というセットに求めた考え方は行きすぎだと考えておられます。
それは、現代の未開部族の生活そのもので、それを初期人類のアウストラロピテクス属に当てはめると、アウストラロピテクス属以来の掘り棒・穴猟が現代まで並行したとしなければならなくなるからのようです。
島さんは、現代人以外はみな、ネアンデルタールまで含めて野生動物で、狩猟採集に生きる未開部族を含め、現代人は野生動物ではない、と考えておられるようです。
では、野生動物とは何か 島さんは野生動物について、こうふれられています。
野生動物はその主食を開発することによて、その動物が生きている生物的環境の中で位置を確定し、つまりニッチを確保している。
そのニッチは自然体系、生態系が変わらないかぎり変わらない。もっと言えば、その動物は自らの住む生態系の中で生き続けることができるような主食を食べ、それに対応した体を持つからこそ、その生態系を変化させることなく、あたえられた生態系の中で生き続けることができるのである。逆に言えば、生態系が変化すれば、その動物は変化を余儀なくされるが、うまく変化できなかった場合は絶滅するだけである。

アウストラロピテクス属やホモ・エレクトゥスたちが100万年以上の間、脳容量も外観も、そしてホモ・エレクトゥスでは持ている石器もまったく変化していなかったということは、彼らがあたえられた生態系の中で生き続ける野生動物 だったことを示している。
100万年という長い間、自然界の中で変わらず供給される食物に対応して形を変え、生きるシステムをつくり上げた動物は、その食物が供給され続けられるシステムの根本、生態系を変えることはしないし、またできない。
島さんは、アウストラロピテクスどころかネアンデルタールに至るまで、ヒト(現代人)に先行する人類は野生動物だったと考えられています。ヒトよりも大きな脳容量をもったネアンデルタールでさえ、その数十万年の生存期間中、使っている石器に変化はなかったし、海の向こうに見える島に渡ろうとさえしなかったのです。
この野生動物とヒトとの比較という視点からは「堀り棒・穴猟仮説」の弱点は明瞭なのです。「掘り棒・穴猟」は野生動物のニッチとしては複雑すぎるのです。大型の臼歯を発達させたパラントロプス類は、ホモ・エレクトゥスと同時代まで生きていましたが、掘り棒を持っていたのなら、なぜ臼歯をそれほどまで大型化する必要があったのでしょうか この臼歯は主食である骨のすり潰すための極限、つまり効率的な骨食の極限を証明しているとみれるのではないでしょうか
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島さんの著書『親指はなぜ太いのか』を読む中で、人類の歯と足と手の変化の関係から読み解ける解答として、<初期人類は骨を食べていた!vol.7 [4]>でも書きましたが、人類は突然変異により、足の指が拇指対抗性を失い木に登れなくなり、骨食というニッチを開発したのではないのではないか と考えています。
初期人類(野生動物)は、環境の変化(外敵も含む)で、地上生活を余儀なくされ主食を失い、骨食というニッチを開発しました。骨食は臼歯のエナメル層を厚く進化させ、骨を割り身を守るために手に持った石は、手の親指を太くしました。そして骨を安全な場所に運ぶ為、二足歩行に移行し、足の指は母子対抗性を失い環境適応した のではないか と考えています。
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それは、vol.10 [6]で書いた「草原に住むサル」ゲラダヒヒと同じような存在で、ゲダラヒヒと同様に草原や岩場に生息し、骨食というニッチを開発しただけの存在(野生動物 )だったのではないか という仮説です。(右の写真は草原に住むゲラダヒヒの写真です。ここ [7]からお借りしました。クリックすると大きくなります。)
人類は骨食というニッチを開発したことで、環境適応します。その状態で数百万年という時を過ごします。人類が、野生動物からヒトになった大きな分岐点は、むしろ裸の起原(極度の外圧状況)にあるのではないか と、島さんは考えておられるようです。
その根拠は<【逆境⇒進化】初期人類の逆境 vol.1<着物の起原> [8]>に始まり、様々な起原を見ていくことで明らかにしていきたいと思います。
今回初期人類は野生動物だったと紹介しましたが、次回vol.15では、野生動物と言い切る<初期人類の知能>がどの程度のものであったか、具体的に紹介したいと思います。
読んで頂きありがとうございました。

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