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原始時代の社会期待(5)~採取時代の適応原理
Posted By sachiare On 2010年12月23日 @ 9:00 PM In B 人類500万年に亙る共同体社会 | 13 Comments
みなさん、こんにちは。今日は「原始時代の社会期待(5)~採取時代の適応原理」をお送りします。
前回・前々回は、原始時代の精霊信仰を取り上げました。
今回は、その精霊信仰=観念機能を獲得した人類が直面することになった新たな外圧とその時の社会期待について考えてみたいと思います。
このように、次第に同類闘争の潜在的な緊張圧力が働き始めると、採集部族や狩猟部族は、互いに贈物etc.を通じて友好関係の構築に努め、闘争を回避しました。
では、なぜ闘争に向かわず「友好関係の構築」に務めたのでしょうか?また、「友好関係の構築」とはどのようなものだったのでしょうか? その時の人々の意識はどのようなものだったでしょうか?
るいネット『採取時代の適応原理』 [7]を参考にして考えてみます。
弓矢の発明普及には地球規模の気候変動が大きく関わっていたようです。
現在発掘されている石器の中で、6万年前には弓矢の前駆形態と想われる鏃が発見されています。恐らくこれは投槍器の段階ですが、寒冷適応した大型で動きの比較的遅い哺乳類(マンモスやカモシカなど)の狩猟が行われていたと思われています。
しかし1.5~1.6万年前 急激な温暖化により大型哺乳類は北上又は減少に向い、変わって繁殖し始めた温暖型・森林適応の小型哺乳類は投槍で狩るには困難となります。この頃、俊敏な動物の動きを観察する中で、弓矢や吹矢等の飛び道具が開発されたのだと考えられています。
人類誕生以来、共認機能を唯一の武器として(期待・応望の同類圧力を唯一の圧力源=活力源として)、精霊信仰という観念機能を獲得したことでかろうじて生き延びてきた人類にとって、初めて遭遇する同類圧力はどうすればいいか分からない未明課題でした。自我や私権闘争を本源集団内に封鎖してきた彼らは、闘争関係を顕在化することなく、共認原理を集団外にも延長することで闘争を回避しました。それが贈物etc.を通じた友好関係の構築です。
このシリーズの第2回 [9]で取上げたように「想像を絶する自然外圧に対応するために、人類が収束したのが精霊信仰であり、このことを「期待」という概念で捉え返すと「生存期待」というものになるだろう。生存期待をかけて自然と対話し、精霊信仰に収束した。これが原始人類の最先端の姿である。」とすれば、採取時代の共生適応においても、人々が収束したのは精霊信仰であり、人々の期待としても「生存期待」だったのは変わらず、その対象が「自然外圧」から「自然外圧+同類圧力」へと拡大した時代だったと言えるかもしれません。
■採取部族の適応原理=「共生適応」
詳しい検証は次回にまわしますが、黒曜石や翡翠の広範囲な交流は、交換(取引)ではなく、他部族への贈り物=贈与だと考えるほうが論理整合します。したがって、採取時代の適応原理は共生適応と捉えることができます。
この共生適応とは、友好関係維持による一種の棲み分けのようなものであり、生態学者の今西錦司の提唱する「棲み分け論」で説明される状況だったと思われます。この「棲み分け論」では、生物は同種個体によって組織された一つの種社会を作っており、同様に、近縁種間には同じ様な社会関係があると考えます。互いに共通の資源を求めるものは、近縁なものであるので、それらは同位社会を構成し、競争が避けられるならばすみ分けが成立する、というものです。
自然界で一般的にも見られるこの“棲み分け”という共生適応は、人類にとって自然な選択でだったのではないでしょうか。いわば自然の摂理に即した適応なのだと思います。ただし、採取部族の段階での各集団は、「共生適応で(または共生という概念で)社会として統合されていた」のではなく、お互い闘争は回避し友好関係を維持しましょうとの共認関係が、各集団間で形成されていた状況だったと思われます。
■贈与の本質は「応合意識」
それでも同類圧力が最先端の課題であり、共認原理で結ばれている以上、相当のエネルギーが費やされたでしょうし、それなりの評価共認圧力が各集団間で働いていたと考えられます。だからこそ、生活必需品ではなく希少価値の高い物(道具の材料となる黒曜石や、装飾品の材料となるヒスイやコハクなど)が贈物として選ばれ、膨大なエネルギーを費やしてまでも遥か遠方まで贈物が運ばれたのでしょう。
集団間の「評価」といっても、決して集団間の競争的な意識ではなかった思います。事実、贈物に対して決して見返りを求めることはなかったようです。あくまでも相手の期待に応えるという「応合意識」が根幹にあったのだと思います。これは、(前回 [5]、精霊信仰で扱ったように)超越存在たる自然に対する「応合意識」を基盤とし、自然に対する時と同様に、初めて遭遇する他集団に対しても「応合意識」で応えたということなのではないでしょうか。
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URLs in this post:
[1] 『第一部:前史 チ.採取時代の婚姻様式』: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=100&c=1&t=8
[2] 共認社会の生存圧力と同類圧力: http://bbs.jinruisi.net/blog/2010/11/000906.html
[3] 原始時代の社会意識: http://bbs.jinruisi.net/blog/2010/12/000907.html
[4] 縄文時代の精霊信仰: http://bbs.jinruisi.net/blog/2010/12/000917.html
[5] 縄文時代の精霊信仰と狩猟採取生産: http://bbs.jinruisi.net/blog/2010/12/000920.html
[6] Image: http://bbs.jinruisi.net/blog" target=
[7] 『採取時代の適応原理』: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=29996
[8] コチラ: http://www.city.aomori.aomori.jp/contents/bunkazai/inisie/sannai/main_sannai.html
[9] 第2回: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=239604
[10] コチラ: http://bbs.jinruisi.net/blog http://www.ishino-hana.com/SHOP/ob-20.html
[11] コチラ: http://photozou.jp/photo/show/155386/21262609
[12] コチラ: http://item.rakuten.co.jp/hisui/m01275/
[13] コチラ: http://www6.ocn.ne.jp/~kiyond/magatama2.html
[14] 『500万年間の気候変動』: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=242210
[15] 『縄文社会は“統合”されていない』: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=35167
[16] 『縄文土器が複雑化していったのは、なぜか?』: http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=237438
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