2022年03月23日
「再現することが充足になる」という人類特有の回路が、観念発達を促した
これまでの記事では、観念とは何か?を明らかにするため、本能以上・言葉以前の脳回路の動きに焦点をあててきました。
いくつか事例をみてきましたが、ふりかえると、共通するものが見えてきます。
・始原人類は、目の前のものをとにかく観察。こうしたらどうなるという手順や結果を分類し、気づいた成果をすぐさま次の行動に移すことで、言葉がなくとも、道具を発達させることができた。
・言葉以前の地平で探索している赤ちゃん。大人が「同じ」と思っているものでも、子どもは「違う」ものとしてみている。違いや変化がたくさん見つけているから、ずっと探索し続けられる。
・障がい者のアートから感じるエネルギーのすごみ。言葉による説明や解釈がなくても、何かに没頭し探索することで、作品を見る人にも充足・活力が与えられる。
これらの事例に共通することとして、未知なる対象や自然現象をひたすら「再現しようとしていること」。そして、その再現に没頭する過程そのものが、大きな充足エネルギーになっています。
もうひとつ、私たちに親近感のある事例が、こどものなりきり遊びです。こどものころは、生き物や大人になりきって遊んだ記憶が、みなさんにもたくさんあるのではないかと思います。鳥やへびのものまね、おままごとやチャンバラごっこ。子どもたちは、この遊びを飽きることなく永遠と繰り返して楽しみます。なりきり=再現することが、ひとつの充足になっている事例だと思います。
このような行動を喚起している脳の働きを、仮に再現回路と呼ぶこととします。再現回路は、オランウータンのときには、実はあまり見られません。動物園のオランウータンが、人の真似をしたりする事例は確認されていますが、それが長続きはしません。彼らの様子からも、真似するに留まり、再現を通じた充足までは至っていないと思われます。また、オランウータンの真似対象は、同類(あるいは同じサルである人類)までですが、人のこどもは、なんにでもなりきろうとします。真似する対象が、無限に広がっているのです。
この再現回路は、何かと一体になり充足したいという一体化回路と、未知にどんどん向かっていく探索回路が合わさっており、これが観念発達の原動力になっていると思われます。
この再現することで充足する、という回路を発達させたことが、人類とサルの違い、すなわち言葉や道具の獲得を分けた、ひとつの重要なポイントになりそうです。
次回は、この再現回路が、現代において、人類の能力にどう関わっているのかを、紐解いていきたいと思います。
- posted by matu-syo at : 2022年03月23日 | コメント (0件)| トラックバック (0)