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2022年09月21日

縄文人の世界観 ~再生と甦りを象徴した月

大島直行著の「月と蛇と縄文人」を読みました。非常に面白いですね。

これまで本ブログにおいて縄文の世界観の本質は「再生と循環」であると考察しました。縄文人が見ていた景色、何を考えていたのか、何を願っていたのか、その辺りを写真を交えて深堀りしてみたいと思います。

 

月は、その運行周期の同一性から女性と同格に位置づけられ、子宮あるいは女性器になぞらえられました。そして、人間だけでなく、いきるもののすべてが月の水によって生かされるのであり、その水を月からもたらすのが蛇だと考えられました。そして蛇は、形などから男根になぞらえられたのです。月(子宮)と蛇(男根)は「死なないもの=再生」の象徴の中核に置かれ、それにまつわるさまざまな事象とも関連づけられています。一つの体系をなしているのです。 「月と蛇と縄文人」大島直行著より

 

■「月」を信仰した理由

画像はこちらからお借りしました

宗教学者ミルチャ・エリアーデは世界中の神話研究から「月の闇と光は死と再生を意味している」ことを読み解きました。その解釈をもとに、ドイツの日本学者ネリー・ナウマンは縄文を読み解くうえで「月」がきわめて重要であることに気づきました。大島直行はその考えを基盤に縄文人の世界観の読み解きに挑んでいます。

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月は、闇の朔月から満月まで約15日、満月から再び闇となるまでおよそ15日、合計29.5日で地球を一周します。潮の満ち干、降雨、女性の月経など、さまざまな自然現象が月と深くかかわっています。また、満月の日にサンゴ、ウミガメ、サケ、ウナギなどが産卵することから人間だけではなく万物に影響を与えていることにも気づいたのでしょう。生体リズムと生殖=再生の意味から月が象徴になったと考えられます。

画像はこちらからお借りしました

そしてもうひとつ重要なのが闇。朔月から新月までの三日月は闇の世界。ようやく三日月が現れて光が射し、そして満月を経て再び闇の世界へ。その三日後には再び夜空に現れるという月の循環は、不死、再生、甦りをイメージさせました。

 

■始原人類は「月」を見ていた

フランスのドルドーニュ地方の遺跡で見つかった2万2千年前の女性のレリーフに女や月の象徴が見られます。ローセルの女神がもつ13の刻みの入れられたバイソンの角は、月相と月経の回数を象徴しているとされています。1万5千年前の縄文人もそのことに気づいていたのでしょう。

画像はこちらからお借りしました

一方で世界各国の神話をみていくと、重要視されているのは太陽信仰(太陽崇拝)です。日本神話の天照大神や、エジプトの太陽神ラー、ギリシャ神話のアポロン、ヒュペリオン、ヘリオス、インド神話のスーリヤ、ローマ神話のソルがそうです。象徴は地域や時代によって異なり、その土地でもっとも生態系や生命に影響を及ぼすものとなっているようです。

 

大きく俯瞰してみると転換点は狩猟採集から農耕に生産様式が移行したところでしょうか。農耕により生じた私有意識や格差により争いや戦争が勃発していきます。

 

【始原人類から先史】循環と安定、万物との一体化の象徴としての「月」の信仰・女原理

【有史から現在まで】闘争と変異、五穀豊穣や強さの象徴としての「太陽」信仰・男原理

 

これからの時代、縄文に多くのヒントがあると感じますね。次回は「蛇」を信仰した理由についてみていきます。

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