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2017年03月23日

教育改革による地方再生~成功のカギは「志」の育成

島根県隠岐諸島・中之島に位置する海士町はかつて高齢化・過疎化で存続の危機に陥っていたが、島民一体で産業創出
や都市交流、教育改革に取り組んだ結果、今では都会から300人のIターン者が集まる活気あふれる街になっている。
一過性の町おこしに終わらず、恒久的に街が発展していける仕組みをつくった海士町は今や「離島の星」として、全国から脚
光を浴びている。(リンク

今や日本中どこでも地方再生に取り組んでいるが、教育改革で活気あふれる町になった事例は珍しい。
一体どのような改革を行なったのか。

ポイントは、地域の課題を高校生自らが取組んでいることにある。
教科書を学ぶだけでは何も解決しない現実課題であること。
それは、「人や社会の役に立ちたい」という若者の最大欠乏と合致していること。
加えて、地域課題に取り組むことで、地域に貢献したい、故郷に恩返ししたい、という「志」をもった人間が生まれていくこと。
「志」教育、今もっとも求められる人材育成がここで行なわれている。だから、全国から注目が集まっている。

 

 

“志の育成”、全国からの“島留学”。魅力溢れる離島の教育改革 (リンク
島根県に海士町(あまちょう)という島がある。
以前は若い人たちを中心に人口流出が止まらず、島の高校は廃校寸前だったが、教育改革により島はⅤ字回復した。
「教育が地方を救う」21日の教育のキモでは、このサクセスストーリーを作ったプロジェクトメンバーの一人、株式会社Prima Pinguino(プリマ・ペンギーノ)代表取締役社長、教育政策アドバイザーの藤岡慎二さんにお話を伺った。

◆ 離島での教育改革
藤岡さんは11年前にPrima Pinguinoを創業。
当初は高校生向けにキャリア教育の教材作成などを展開していたが、海士町の知人からある連絡が入ったのをきっかけに、
藤岡さんの第2のキャリアが始まった。

藤岡さん「海士町から公営塾の講師を紹介してほしいという依頼だったのですが、離島での教育改革という聞いたことがない
プロジェクトに、私自身がやってみたくなりました。島というと最初は閉鎖的なイメージでしたが、島の人が前向きで何とかし
てみようと。」

当時の海士町は、超少子高齢化で人口流出が止まらず、行政は財政難と課題だらけの離島だった。このため、島にある隠
岐島前高校は、入学者数が減り存続の危機に直面していた。
「高校がなくなれば高校生だけでなく、子育て世代が家族ごと都市部に引っ越し、これから地域を担う世代がいなくなる。」と
危機感を持った行政、住民が立ち上がり、まずは高校からと「高校魅力化プロジェクト」をスタートした。

 

◆ 高校魅力化プロジェクト
藤岡さん「地方出身の若者は『仕事がないからふるさとに帰れない』とよく言います。
しかし人口減少・流出にあえぐ地域としては、『仕事をつくりに帰りたい』という気概を持った人材が必要です。
高校ではそのような意識を育む学びをみんなで考えました。」
高校魅力化プロジェクトの柱は3つ。「その地域・高校ならではの学び改革」、「公立塾」、そして「教育寮」だ。

 

◆ 高校生が地域の課題を探し出し、解決に向けて大人と一緒に取り組む
「海士町は、課題先進国日本の中でも、さらに20年、30年先を行く課題先進地域。まさに世界最先端です。
高校生が地域の課題を探し出し、解決策を大人にプレゼンし、解決に向けて一緒に取り組む。課題先進地域だからこそでき
る学びです。」
課題山積の離島だからできる。まさに「逆転の発想」、「ピンチはチャンス」だ。

 

◆ 学力だけでなく、志を育成
さらに「公営塾」では、「学力だけでなく、志を育成する」(藤岡さん)という。

藤岡さん「塾はふつう学力だけですが、ここでは自分たちの夢を発表し、ディベートをし、進学や就職の目的意識を学力ととも
に育てていきます。そんな学び舎は都会にはあまりないと思います。」

 

◆ 日本全国、世界各国から募集する“島留学”制度
そして「教育寮」。

海士町では、これらの教育内容に興味がある生徒を、地元からだけでなく、日本全国、世界各国から募集する“島留学”制度
を実施している。
「いまや高校生の半分は、島外出身者。ドバイの日本人学校にいた生徒や、東京、大阪など都市部からも生徒が集まり
ます。」
プロジェクトを始めて以来、地元に貢献したい、ふるさとに恩返ししたいという生徒が増えたという。

藤岡さん「ふるさとに戻り、地域の課題に挑戦することで地域を元気にして恩返ししたいという生徒が増えました。さらに、
偏差値だけで進学先を選ぶのではなく、目標を持ち、大学で学ぶ目的を明確に持って進学するようになりました。

 

◆ 挑戦は全国に…
そして、こうした挑戦は、全国にも広がっている。

「長野県白馬村は人口9千人ですが、200万人の観光客が訪れ、外国人も多いです。県立白馬高校では、国際観光課を作っ
て全国から高校生を募集しています。また、広島県立大崎海星高校も離島にありますが、この島は瀬戸内海の海賊の一派の
末裔が住む島です。
これを活かして、社会の“潮目を読む”「潮目学」、自分を読む「羅針盤学」などを教えています(笑)。」

しかし、高校魅力化プロジェクトにもまだ課題はあると藤岡さんはいう。
「いまは生徒の数が多くなることがいいことだと言います。しかし、実は生徒の奪い合いになっているのです。これからは生徒
が少なくてもいい学校を目指さなければいけません。限られた人数でもICTをフル活用し、地域と連携することで最高の教育
効果を得られるような学校づくりを全国で展開したいと思います。」

疲弊する地域を救う高校魅力化プロジェクト。藤岡さんの挑戦は続く。

 

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