2017年06月15日
言語機能を司る脳の構造(小脳の発達と照準力を司る左脳シフト⇒右脳の抑制制御)
人類も鳥類も、運動機能を司る小脳の進化によって、言語機能を進化させた。
一度自転車に乗ることを覚えたら一生忘れないように、運動機能⇒小脳の記憶力は絶大である。
『脳の方程式 ぷらす・あるふぁ』(中田力著 紀伊国屋書店)の要約。
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カナリヤが歌を歌うために用いる脳に優位があり、その内容は学習による。カナリヤは人間の言語同様に、片側の脳を優位に使って歌を歌い、父親から最初の歌を習う。
ここに、ヒトの言語が生まれてきた秘密を解く鍵がある。 脳の機能画像で確認されたが、言語と音楽とはヒトの脳にとっては、ほとんど同一の機能である。これは 言語機能の発生にとって高い知能が必ずしも必須でなかったということを示す。 オウムも九官鳥もカラスも人間の真似で言葉を話す。ヒトの言語は高度の知性にもとづいているが、高い知性を獲得しなかった鳥は知性の高くない言語しか持っていない。
ヒトも鳥も小脳の機能を顕著に進化させることで、運動機能の飛躍的進化を果たした。事実、ヒトの脳が相対量として最も増加させた脳は小脳であり(絶対量としては前頭葉)、鳥の脳で中心を占めるのも小脳である。
言語機能は運動系の進化、小脳の進化から生まれてきた。ヒトの祖先は高度化した声を出す運動機能を用いて、言語を生み出した。
言語機能にとって小脳が重要な役割を果たすことは、自閉症の研究によって知られる。言葉を発しない子供たちに共通するのは、小脳の未成熟度である。
鳥類は小脳の進化によって運動機能を進化させ、飛行を実現した。その運動機能を発声に応用する種が生まれ、音楽機能を獲得したが、鳥類は高度な知能はなく、歌を歌う能力とオウム返しの言語能力しか獲得できなかった。
歌う鳥はその音楽機能に片側の脳を優位に使うのと同様に、ヒトも言語機能に優位半球を持つ。
ヒトでは左脳と右脳で機能が乖離しているが、歌う鳥にも同じような機能乖離がある。このことは、言語機能の基本構造が優位半球を持つことが必須であったことを意味する。
その必須条件とは何だったのか?何故、両側の脳を使っていてはいけなかったのか?
発声に使われる筋肉は、元々、呼吸とか食物の摂取とか、生きてゆくための基本的な動作に必要な筋肉(球筋)である。球筋を支配する神経に出発点が延髄である。 球筋の特徴は、左右両方の脳から支配を受けることである。
ここに優位半球登場の秘密を解く鍵が隠れている。
全身の筋肉は左右対称に存在する。一部の例外を除き、身体の右側にある筋肉は左の脳、左側にある筋肉は右の脳に支配される。 ところが、球筋は左右両方の脳の支配を同時に受けている。両側の脳からの支配を受けていれば、片側の脳に障害が起こったとしても球筋の麻痺は起こらない。呼吸や食物の摂取など生命の維持を左右する筋肉は麻痺しない。しかし、両方の脳が健全な時には、ちょっと働き難い。左右両方の脳の正確な同期を要求するからである。
ヒトは調音器官に高度の運動機能を獲得することで言語機能を獲得した。その調音器官の中心的な運動は球筋によってなされるが、球筋は、左右の脳の両方から支配を受け、単純作業をやるものと決められていた筋肉である。 球筋の主な仕事である呼吸とか食物の摂取などは、ほとんど一定の作業である。随意に動かす場合でも自由な動きをさせることはできないので、言語機能という繊細な運動機能には向いていない。
そこで、脳は言語機能に関する運動においてのみ、球筋への命令を与える権利を片側の脳に優先的に与えることにした。
しかし、基本的な球筋の運動の両側支配は残したまま、言語運動のときだけ片方の脳に支配させる機構を作ることは容易ではない。
言語運動は随意運動であるが、球筋の随意運動に対して左右の脳にランクをつける仕組みが生まれた。 脳は、随意運動を開始する信号を受けて、自動的に片方の脳の支配を押さえ込む制御装置を作った。随意運動の開始が自動的に片側の脳の支配力を低下させ、その結果、片側の脳が球筋の運動支配に優先権を持つようにした。優位半球の登場である。これを抑制制御といい、抑制制御の装置を加味することで、両側支配の構造を変えずに、片側支配を作り出すことができる。言語機能という随意運動の場合のみ、球筋への支配は優位半球からの信号が優先される。
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言語機能の場合だけ、右脳の支配を抑制制御する仕組みを脳は作り上げた。これが言語機能における優位半球(左脳優位)である。
『るいネット』「哺乳類の逆境からの進化適応が、右脳と左脳を接続する脳梁を生み出した」にあるように、右脳が360度の(外圧)情報探索、左脳が照準力を担っている。
以上を踏まえて、言語機能がどのようにして登場してきたのか?
人類はサル時代から表情や身振りを頼りにしてきたが、それらの情報を含めて全ての情報は、意識や集団を共認統合するためにある。その統合度を上げるためには、刻々と変化する意識を固定・定着させた方がよい。そのために生み出されたのが言葉である(さらにその先には言葉よりも一段と固定度の高い文字が生み出された)。
この言語機能による意識の固定化とは、360度の外圧情報の中から照準を絞り込む照準力と非常に近いものがある。すなわち、言語によって意識を固定化するためには、強力な照準力が必要とされるので、そのために照準力を司る左脳シフトが行われた。
言語機能がデジタル構造(タコツボ構造)になるのも、一点に照準を絞り込む照準力の成せる業であろう。
これが、言語機能における優位半球(左脳優位)が形成された理由ではないだろうか。
外圧情報のキャッチは生物にとって最も根底的機能かつ重要な課題でなのであって、外圧情報のキャッチ担う右脳機能を抑制するのは生物にとって危険な行為である。それほど重要な右脳(外圧情報の探索機能)を、人類が抑制制御した理由は何なのか?
- posted by KIDA-G at : 2017年06月15日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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