RANKING
にほんブログ村 歴史ブログへ
NEW ENTRIES
RECENT COMMENTS
RECENT TRACKBACK

2016年8月17日

2016年08月17日

踊りによる変性意識状態→精霊に出会う→皆に伝えるために壁画を描いた

人類、500万年の歴史。
人類の先端機能たる観念機能(言語)は、いつ頃、どのように獲得したのだろうか。

・500万年前 最初の人類=猿人が登場(アウストラロピテクス、パラントロプス)
・400万年前 精霊信仰の始まり⇒観念原回路の形成(400万~300万年前と推定)
・220万年前 原人の登場(ホモ・ハビリス、ホモ・エレクトス、ホモ・エルガステル)
生存様式の進化=貯蔵、火、道具etc=言語機能の獲得?
・180万年前 原人の出アフリカ
・ 30万年前 旧人の登場(ホモ・ネアンデルターレンシス、ホモ・ハイデルヘル)
・ 20万年前 新人の登場(ホモ・サピエンス)
・ 10万年前 新人の出アフリカ
・ 5万年前 新人がスンダランド到達
・ 4万年前 新人が欧州~ユーラシアほぼ全域へ
生存力進化→壁画象徴表現、舟、調理具、衣服、戦闘防衛具、、
=共認機能⇒観念機能⇒精霊信仰と原始科学?
・ 2万年前 弓矢の発明→生存力・生産力上昇→地上居住(洞窟脱出)

400万年前から精霊信仰が始まり200万年前には火や道具を使っていたとすれば、弓矢の発明まで時間かかり過ぎ。
現在につながる人類の歴史として、原人、旧人の進化を受け継ぎながら登場した20万年前の新人からと考えれば、スンダランド到達以降、急速に観念機能⇒生存力を進化させてきたことが分かる。
観念機能の獲得は、セックスのエクスタシーにおける宇宙との交信、踊りによるトランス状態における宇宙との交信が始まりと思われるが、トランス状態で見た世界をみんなに伝えるため、共有するために壁画が生まれ、次第に言葉化していったのかもしれない。「彼岸の生物学① ダンスと変性意識」より紹介する。

 

■太古から人類はシャーマニズムを持っていた
ネアンデルタール人の埋葬跡やクロマニヨン人の残した壁画等、人類の精神文化史をたどっていくと「シャーマニズム」が見られる。その初源的な姿のヒントとなるのが、先住民社会等に残される「シャーマニズム」の伝統だ。
シャーマンは世界各地域に事例が見られ、その歴史は長い。「シャーマン」という言葉は、東シベリアのアルタイ系先住民、ツングース族の「エヴェンキ語」の「シャマン」に由来し、「暗がりの中で見える人」「知識と知恵のある人」。したがって、シャーマニズムはアルタイ語系諸民族の宗教的伝統と言える。

 

■エクスタシーの語源は体外離脱体験
そもそも、シャーマンとは、自ら変性意識に入って聖なる源にコンタクトする者をいう。シャーマンたちの他界への旅を人類学では「脱魂」「呪的飛翔」「エクスタシー」と呼ぶ。宗教学者のミルチャ・エリアーデは、シャーマニズムを「エクスタシーの技術」と定義する。なお、エクスタシーという言葉は、気持ちいいというニュアンスで使われているが、もともとのギリシア語「エクスタス」は「外側に立つ」という意味で体外離脱体験を示唆している。体外離脱体験は、深遠な法悦感を伴うことからそういう感覚がエクスタシーと称されるようになったのであろう。

 

■脱魂型シャーマン文化が最も基礎
シャーマンの変性意識は、「脱魂型」と「憑霊型・憑依型」とにわけられるが、体外離脱体験によって、自我への執着を瓦解させる狭義の「脱魂型」のシャーマンは、全世界の4分の1の社会にしか存在しない。その大半は、カラハリ砂漠や極東シベリアやアメリカ先住民で、狩猟採集生活をおくってきた人々の社会だ。そして、脱魂型のシャーマニズムには、魂の解放そのものをもたらす深さがあり、旧大陸でキリスト教や仏教が果たしていた世界観を与える役割も果たしている。このことから、脱魂型シャーマンが最も普遍的な宗教実践の基本形であることをうかがわせる。

 

■最古の人類クン・サン族にも微細な身体の概念がある
クン・サン族のシャーマンは、トランス・ダンスという踊りを通じて意識状態を変容させて、彼岸の世界に入っていく。シャーマンたちは、『ンム』と呼ばれる大変な高温と活力を発生させる能力を持つ。人類学者リチャード・カッツ博士に対して「踊って踊って踊る。すると、ンムがお腹の中に入り込んで背中を持ちあげる。すると身体が震え始めて熱くなる。ンムが身体のあらゆる部分、足の先から髪の毛の中にまで入り込む。それは神から与えられる」と語っている。

bushwoman.jpg

鍵となるのは、踊りであり、長時間踊っていると、臍の下にある生命エネルギーが熱くなり、脳天を突きぬけて上昇する。中国では、人間を「気」や生命エネルギーの場としての「微細な身体」として捉えてきた。けれども、興味深いことに、これを見れば、「気」やインドのプラーナに相当する概念が、最古の狩猟採集民、クン・サン族にもあり、クンダリニーの覚醒とほぼ同一の体験をダンスを通じてしていることがわかる。

 

■シャーマニズムでは動物の精霊が重要な地位を占める
太古のシャーマニズムでは、動物の精霊が聖なる象徴で、熊や鷲は特別重要な存在とされていた。旧石器時代の壁画が、現在の狩猟採集部族が、共通して動物霊を聖なる存在として重視していることからも、そのことがわかる。

動物霊と交信する宗教は、アニミズムと呼ばれ、原始的とされがちである。けれども、アニミズムが多神教に発展し、多神教が一神教へと発展していくとする図式はかなり怪しい。現存する部族社会においても至高神信仰が多くあり、狩猟採集社会の最初の神の観念も至高神であったとの主張もある。

とはいえ、部族社会の至高神の観念には、地球生態系への深い感謝や祈りが付随する。動物の精霊が重要な地位を占めていて、上から人格神が支配するといった観念は見出せない。

 

■ホモ・サピエンスはなぜ15万年、文化を持たなかったのか
現在、最古されるホモ・サピエンスは、エチオピアで発見された19万6000年前のものである。彼らは、解剖学的には現代人とまったく同じ肉体に進化し、現代人と同じ高度な脳も手にしていた。にもかかわらず、象徴化の能力が示され始めるのは10万年前からであり、かつ、アフリカでしか起きていない。

「シンボル化」の最古の事例は約11~9万年前に南アフリカに出現した骨で作られた道具である。また、約7万7000年前には、南アフリカのケープ州のブロンボス洞窟で、幾何学模様が付いた赤色のオーカーや小さな貝殻に穴を開けたビーズのセットが発見されている。

オーストラリアにも古くから人類が移住している。その年代は6万年前とされるが、大洋を航海するためには高度な抽象化の能力が必要であろう。そこで、ブロンボスのオーカーの年代に近い7万5000万年前にまで遡るとする意見もある。

 

■4~5万年前に意識革命が起きた
フランスのラスコーやスペインのアルタミラ等の洞窟には世界最古の芸術が残されているが、これまで発見されているヨーロッパ最古の洞窟壁画は3万5000年前のものだ。すなわち、4~3万年以降に突如として洞窟芸術の爆発が怒り、約1万2000年前まで続いている。

すなわち、洞窟芸術の爆発が起こり、人類の意識革命が起きたのは4~5万年前のことでしかない。約25万年前に出現したネアンデルタール人は、象徴化の能力を欠いており、ホモ・サピエンスも15万年は文化を持たなかった。すなわち、原生人類の脳の肉体構造と精神との間にギャップがあることを意味している。

 

■変性意識状態から洞窟壁画と宗教は産まれた
古代サン族が描いた格子、網目、梯子、ジグザグ模様の幾何学パターンは、現在のボランティアの被験者たちが幻覚物質で体験した「内視現象」やヨーロッパの洞窟壁画と似ている。そのことに南アフリカのウィットウォータースランド大学のデヴィッド・ルイス=ウィリアムス教授は気づき、1988年に「現代人類学」で、洞窟壁画と宗教の起源に関して神経心理モデルを提唱している。

 

■洞窟壁画に登場する動物は変性意識で出会った
マイケル・ウィンケルマン教授は、ペンシルバニア大学のユージーン・ダギリ博士や人類学者ウィリアム・ラフリン博士が、提唱する「神経現象学」をさらに深め、脳科学とシャーマニズムの研究をつなげようと試みている。

後期旧石器時代に起きたこの精神革命は宗教につながるが、洞窟や岩絵に描かれたモチーフは、現代人が変性意識で体験する光のビジョンと共通する。すなわち、その背景にシャーマニズム的な呪術的実践で生れた変性意識状態があったことは間違いない。

壁画のほとんどは馬、野牛、マンモス等を描いている。このため、狩猟の対象となる動物を支配するための魔術のためだと考えられた。けれども、洞窟に残された骨から祖先が食べていたものを知ることができるが、それは壁画に描かれたものとは一致しない。

また、壁画には人間と動物とをあわせた想像上の怪物が描かれている。ギリシア語の野獣を意味する「テリオン」と人間を意味する「アントロポス」を合わせ、「テリアントロプス」と呼ばれる。例えば、約1万7000年前のフランスのトロワ・フレール洞窟には、フクロウ、狼、鹿、馬、ライオンが混ざった「呪い師」と呼ばれる絵が有名である。イタリア北部の約3万5000年前のフマネ洞窟にも人間と野牛があわさった野牛人間がある。これはフランスの約3万2000年前のショーベ洞窟のものと一致し、スペイン北部の約1万5000年前のエル・カスティーヨ洞窟のものにも酷似している。

d-ijigen07.jpg

アフリカのナミビアの洞窟でも約2万7000年前の下半身が人間でライオンの頭部をもつ絵が発見されている。南アフリカには下半身が人間で上半身がカマキリである絵もある。南アフリカのサン族は、カマキリのイメージを含めて、自分たちの祖先が残した洞窟壁画について説明しているが、彼らによれば、壁画は部族のための情報を得るために霊界を旅したシャーマンによって書かれたという。ヨーロッパ南西部にある300程の洞窟壁画はビジョン芸術だったのである。

 

>