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2013年10月31日

【東南アジアにおける、南方モンゴロイド的社会とその可能性を探る】1-4南方モンゴロイドに共通する性習俗の特徴

みなさんこんにちは 😀
東南アジアにおける、南方モンゴロイド的社会とその可能性を探るシリーズ 第4回目です。
前回は、南方モンゴロイドに共通する文化的な特徴について分析しました。
今回は、同じく南方モンゴロイドに共通する「性習俗」の特徴について見て見たいと思います。
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日本の農村風景にそっくり?雲南省の美しい「棚田」
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 「母系制」と「夜這い婚」

南方モンゴロイドに共通する「性習俗」。
ずばりその特徴は「母系制集団における夜這い婚制度」です。
夜這い婚については、これまでも本ブログで何度か取り上げてきました。

<夜這い>
夜這い(よばい)とは、夜中に性交を目的に他人の寝ている場所を訪れる日本の風習。語源は、男性が女性に呼びかけ、求婚すること(呼ばう)であると言われる。大正時代まで各地で行われていた習俗。戦後、高度成長期直前まで、各地の農漁村に残っているところがあった。
多くの場合男性が女性のもとへ通うものだが、女性が通う風習を持つ地域もあった。婚、嫁、結婚などの字を古くは「よばふ」「よばひ」と呼んだ。これは「呼ぶ」の再活用形で「つまどい」「つままぎ」などの語と共に求婚のために男が女のもとに通うことを意味した。昔の婚姻は結婚後も男が女のもとに通うのが普通であり、このことも「よばい」と言われた。
(ウィキペディアより引用)

<母系制>
母系制(ぼけいせい)とは、母方の血筋によって家族や血縁集団を組織する社会制度であり、概ね次のような特徴を持つ。対義語には父系制がある
 ①母方の血筋をたどる(母系出自)
 ②母方の財産を相続する(母系相続)
 ③結婚後も夫婦は別居、もしくは妻方(母方)の共同体に居住する(母方居住制)
 ④農耕社会に多く見られる。
(ウィキペディアより引用)

上記からも解るように、「母系制」と「夜這い」はある意味一体的な制度で、女方の家に男が通うのが一般的です。
「夜這い(婚)」においては、現在社会のように男女関係は固定的でなく、特に日本の農村共同体では村の誰しもが夜這いを通して性の充足を得られるように考えられていました。
夜這いによって生まれた子供は、誰が父親か解りませんが、子供は母系制集団の中で育てられるので問題がありません。そういう意味でも、「母系制」と「夜這い」は一体的なのです。
(一般的に子供が出来た場合、夜這いに訪れていた男の中から、女が父親=夫を指名する。ただし、この場合でも現在社会の一対一の婚姻制度のように夫婦は固定的でなく、男女共に別の相手と夜這いを行うことが多い。日本では政府によって夜這いが禁止された明治初期頃までは重婚、複数婚は常識的だった)
日本における夜這い(婚)については、本ブログで取り上げたシリーズが解りやすいので参照して下さい。
『日本の婚姻史に学ぶ、共同体のカタチ』シリーズ

 南方モンゴロイド社会に共通して見られる「母系制」と「夜這い婚」

さて、上記記事で書かれているように、「夜這い(婚」」はかつての日本の村落共同体で行われていた性習俗です。私もこれは日本独特の制度であると考えていたのですが、調べてみると、世界でもこの「夜這い(婚)」の事例を見つけることができました。

ブータン 
ブータンは典型的な母系制社会で、財産相続は姉妹に行われる。都市化した首都ティンプーでは既に行われていないが、農村ではナイトハンティングと呼ばれる夜這い風習が残っていることで世界的に有名である。
参考:「幸せだけどお金を使うことに慣れていないブータンの人々」 日経ビジネスオンライン(会員制)


ネパール
ブータンに同じく村落地方で夜這い制度、母系制社会が残存。
参考:「あー異文化の驚きと発見!!」


中国 雲南省~チベット自治省
雲南省最北部 モソ族
母系制大家族社会。走婚と呼ばれる通い婚・夜這い制度を取っており、パートナーも一人とは限らない。
参考:「神秘な女の国・母系社会のモソ人の通い婚(走婚)」
雲南省元陽 ハニ族
母系制社会で夜這い婚制度。祖先はチャン族と呼ばれたチベット系部族であると言われる。日本の妻問い婚制度の中に見られた求愛の歌謡を男女で掛け合う「歌垣」の文化がある。
参考:「ハニ族」
四川省甘孜チベット自治州雅江県 ザバ地区
モソ族に同じく母系制社会で、夜這い風習を残す。結婚するまでの間、複数の相手と夜這い関係を結ぶ。
参考:「ヤロン川畔の夜這い婚」


東南アジア大陸部(ミャンマー~ラオス~タイ~ベトナム)
アカ族
高床式で男女別々の住居に住まう。あらゆるものに精霊が宿ると信じる典型的アニミズム文化(日本の八百万の神に通ずる)。性に対して開放的で、どの村にも男女が営みを行う広場、ハントを行うための場がある。
カレン族
夜這い風習があり、年頃の娘がいる家は夜這いの誘い用の穴を開ける。年頃の娘を持つ家は、娘の寝室の床に小さな穴を開けてやり、夜這いに来た男はこの穴から手を入れ合図をする。
以上参考:「各少数民族の特徴」

モン族
結婚観が非常に自由で、夜這いの風習がある。婚前交渉で子供が出来ると、女性としての能力の証明になり、賞賛される。
ヤオ族
恋愛・結婚観が極めて自由で、正式に結婚していない者でも社会的に同棲が許されている。子供ができた後に別れたとしても、子供とともに次の恋人のもとへ嫁ぐことができ、男性側も歓迎する。
以上参考:リンク
ルー族
中国雲南省南西部からタイに流れてきたと言われる。かつて夜這い習慣があったが現在は衰退。
参考:「チェンライの少数民族」


東南アジア島嶼部(インドネシア)
ロンボック島
ミダンという一種の夜這いの風習があった。結婚前の男が夜ごとに女の家をおとずれて、女と語りあかす。このときに、未婚女子の寝床が設けられているのがバレ・ダラムと呼ばれる住居のなかで、外壁の一角にはちょうど話ができるくらいの小さな穴が開いていた。
参考:「ササック (ロンボック島)」
その他、インドネシアは各島に非常に多くの民族が存在するが、世界最大の母系制社会であるミナンカバウ族をはじめ、母系制社会が多く、夜這い婚制度のある部族も多い。また、ミクロネシアヤップ、パラオ、チューク諸島においても母系制と夜這い婚制度が見られる。

 D系統古モンゴロイド社会に共通して見られる母系制・夜這い婚制度

以上、世界に見られる「夜這い(婚)」制度の事例を見てきましたが、これらの事例はいずれも東南アジア~チベット地域に集中しています。その他の世界で事例を探しても、アフリカ等でごく一部でしか見られず、これほど集中して夜這い(婚)の事例が見られるのは、この東南アジア~チベット地域だけです。
紹介した民族は出自の詳細が解らなくなっている民族も多いですが、身体的特徴からいずれも「南方モンゴロイド」であることは間違いありません。更に細かく見てみると、身体的特徴や文化的特徴から日本人に似た民族が多く、日本人と共通したスンダランドから移動した「モンゴロイドD系統」の遺伝子を持つ可能性が高いと考えられます。実際、上記で紹介した民族の写真を見ると「日本人?」と感じるほどです。
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ブータンの人々
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ハニ族の少女
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アカ族の子供達
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カレン族の少女
そういう視点で見てみると、これら夜這い婚制度のある民族の存在する地域は、スンダランドからモンゴロイドが移動した軌跡とぴったりと一致してます。

「京都大学崎谷満博士の分析では、日本人はY染色体のハプログループD2(縄文系)とO2b1(弥生系)を主体とする事が明らかになっており、ハプログループD系統はYAP型(YAPハプロタイプ)ともいわれ、現代のアジア人種よりも地中海沿岸や中東に広く分布するE系統の仲間であり、Y染色体の中でも他の集団から非常に古い時期に分かれた系統であります。



このハプログループD2はアイヌ人・本土日本人・沖縄人の3集団に多く見られるタイプであり、朝鮮半島や中国人(漢民族)にはわずかしか見られません。そして、アリゾナ大学のマイケル・F・ハマー (Michael F. Hammer) のY染色体分析でもYAPハプロタイプ(D系統)が研究されて、チベット人も沖縄人同様に50%の頻度でこのYAPハプロタイプ(D系統)を持っていることが分かりました。



現在では世界中でもD系統(古モンゴロイド)は極めて稀になっており、日本人以外の民族では、遠く西に離れたチベット人に強頻度でD系統が存在するだけであります。

両者を隔てる広大な中央アジアにおいては、後の時代にアジア系O系統(弥生渡来人もO系統である)集団が広く占有住居するようになり、古モンゴロイドのD系統は駆逐されて島国であった日本や山岳チベット等、外部との交流が限定された環境のみに残ったと考えられています。



ここ数千年において漢民族を中心にしたアジア系O系統が広く占有住居を拡大していき、D系統(古モンゴロイド)はほとんど大陸では滅び、わずかに険しい山岳部(チベット)と海に隔てられた島嶼部(日本)にのみ生き残ったということです。

「日本人とチベット人が持つ漢民族に対する宿命的な「血」のつながり」より引用



D系統遺伝子は古い時期に分かれた遺伝子であり、モンゴロイドの中でも極めて始原的な遺伝子(=古モンゴロイド遺伝子)を残しているのが日本人でありチベット人です。
日本は支配階級を除き明治(一部地域では戦前)まで母系制社会における夜這い婚制度を継承していましたが、先に引用した東南アジア~チベット系部族にも母系制と夜這い婚制度が見られることは注目に値します。
南インド地域で誕生したとされるモンゴロイドは、アジア南方へと広がり、現在の東南アジア地域にあったスンダランドでその基本的形質を獲得しますが、温暖化によるスンダランドの海没で各地方へと拡散していきます。
この前提で、スンダランドからチベット・日本へと繋がる経路(陸路・海路)を見てみると、丁度先ほど紹介した民族が存在する地域と一致するのです。
スンダランドから続くD系統遺伝子の古モンゴロイド社会が、共通して母系制・夜這い婚を継承してきたことから、これらの制度は古モンゴロイドにとって極めて重要で本質的な社会構造であったのではないでしょうか。そういう意味でも、日本を含めたこれらの民族が近代化の中で夜這い婚制度を失ってきていることが、どのような社会的影響をもたらすのか心配される点であり、本ブログでより深く、探っていきたいと感じて
います
さて、第1回から第3回まで、東南アジアを中心とする南方モンゴロイドの特徴について見てきました。次回からは、視点を変えて、このような南方モンゴロイドで構成された東南アジア地域が世界との関わりの中で、どのような変化を遂げて行ったのかを見て行きたいと思います。お楽しみに 😀

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