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2017年11月03日

草原に適応して人類が誕生したという草原説は、既に撤回されている

アフリカ大地溝帯によって、その東側が乾燥して草原となり、草原に適応して人類が登場したという草原説が、人類登場の現員としてほぼ定説化していた。ところが、1982年に提唱された、この有名な学説は、既に提唱者自身が撤回したとのことである。

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『個別指導塾「FORWARD」塾長のBlog』「直立二足歩行する人類の発祥、有名な仮説が崩れていた」

アフリカに「大地溝帯」またの名を「グレート・リフト・バレー」という地形があります。アフリカ東部を南北に縦断する長大な「谷」で、wikipediaによれば総延長(分岐を継ぎ足した長さ?)7,000キロ、幅は数十キロに及びます。アフリカ大陸の真下、地震の震源となるプレートなどよりもはるかに深い地球の深部、マントルの中に、高温の上昇流が存在し、それがアフリカ大陸を徐々に引き裂いた結果、生み出された地形です。

この「大地溝帯」実は人類の発祥と関係があるという仮説があり、説得力があるというので人気を博しておりました。曰く、アフリカ東部に生じた大地溝帯両側の山脈(火山活動なども活発になるので谷の両側は一般的にかなり隆起する)が大西洋からの湿った風を阻害するためアフリカ東部が乾燥し、森林が減退した。その結果、そこに住んでいた類人猿が木から木へうつるために大地を歩かざるを得なくなり、より長距離の歩行に適した直立二足歩行を身に付け、完全に空いた手は道具を扱うようになり、脳が発達して現在の人類が誕生した……と。これを有名な映画の「ウェストサイドストーリー」をもじって「イーストサイドストーリー」と言うんだそうです。wikipediaによれば「フランスの人類学者、イブ・コパンが1982年に提唱した」とのこと。

非常に有名な説で、小中学生向けの優しい科学本などにも(従って中学入試問題などにも)頻繁に引用され、ほぼ真実であるかのように、まことしやかに語られてきました。

が、近年この話の前提がことごとく崩れてしまい、コパン自身も撤回宣言を出したそうです。

wikipediaの「イーストサイドストーリー」の項目を参考に書き続けますが、ヒトが二足歩行を身に付けたのは600万年前頃と考えられており、大地溝帯の隆起が生じたのは800万年前……と、思いきや、800万年前に起きた隆起は小さなもので、本格的に隆起したのは400万年前くらいだと考えられるようになったそうです。
さらに、アフリカ東部の乾燥化は(当初想定されていた800万年前の話か、しっかり隆起した400万年前の話か、ちょっとよく分かりませんが……たぶん800-600万年前の話?)さほど進まず、森林は十分あったとのこと。
そして決定打は、そもそもアフリカ東部ではなくアフリカ西部から、二足歩行する上に、恐らく現生人類につながる祖先と思しき化石が見つかってしまった事です。「2002年にアフリカ西部であるチャドで600-700万年前と考えられるトューマイ猿人の化石が発見された」とのこと。このトューマイ猿人が生活していた環境は、「魚やワニの化石」が残っている事から推測して、湿潤な環境だったらしい。

つまり、人類が立ち上がった頃、山はそんなに隆起しなかったし、どこもそんなに乾燥していなかったし、そもそもその舞台はアフリカの東ですらなかった。コパンはトューマイ猿人発見の翌年には、潔く自説を撤回しています。長い間もてはやされた自説を即撤回したところは、学者として素晴らしい態度だと思います。そもそも、否定はされたものの、この仮説は地殻変動と環境変化と生物進化を結びつける壮大で野心的な仮説で、否定されたとは言え魅力的な仮説だったと私には思われます。コパン先生には、その魅力的な理論展開や、学者としての姿勢も含めて、改めて敬意を表したく思います。

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