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2019年01月22日

言語機能を司る脳の構造(小脳発達/左脳が右脳を抑制制御)

『脳の方程式 ぷらす・あるふぁ』(中田力著 紀伊国屋書店)に、鳥類の歌う機能と対比しながら人類の言語機能を司る脳の仕組みを論じた一節がある。

その論点は、
【1】鳥類には知性(観念機能や共認機能)はないが、言語機能(聞いて真似て発声する機能)は持っている。このことは言語機能は観念機能とは独立して存在し得るものであることを示唆している。

【2】人類も鳥類も、運動機能を司る小脳の進化によって、言語機能を進化させた。

【3】人類も鳥類も言語機能に優位半球がある(左脳優位になる)。

【4】言語(発声)機能に使われる筋肉(球筋)は、もともと呼吸や食物摂取をはじめとする基本的な生命維持に必要な筋肉である。一般の筋肉は右側の筋肉は左脳、左側の筋肉は右脳に支配されているが、この球筋は左右両脳の支配を受ける。これは、片側の脳に障害が起こっても、生命維持に不可欠な球筋が麻痺しないためである。


【5】ところが、言語機能の場合だけ、右脳の支配を抑制制御する仕組みを脳は作り上げた。これが言語機能における優位半球(左脳優位)である。

以下、その引用。
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脳科学の立場から興味深いことは、カナリヤが歌を歌うために用いる脳に優位があり、その内容が学習によることである。カナリヤは人間の言語同様に、片側の脳を優位に使って歌を歌い、父親から最初の歌を習う。

ここに、ヒトの言語が生まれてきた秘密を解く鍵が隠されている。
脳の機能画像で確認されたことの一つが、言語と音楽とは、少なくともヒトの脳にとっては、ほとんど同一の機能であること。
ここから、言語機能の発生にとって、高い知能が必須でなかったことがわかる。
オウムも九官鳥もカラスも、人間の真似をしているだけではあるが、言葉を話す。ヒトの言語が鳥の「オウム返し」の言語と違うところは、高度の知性にもとづいていることである。鳥は言語機能を獲得したものの、高い知性を獲得しなかったために、あまり知性の高くない言語しか持っていない。

ヒトも鳥も小脳の機能を顕著に進化させることで、運動機能の飛躍的進化を果たした。事実、ヒトの脳が相対量として最も増加させた脳は小脳であり(絶対量としては前頭葉である)、鳥の脳でその中心を占める脳もまた、小脳である。
言語機能は運動系の進化から、それも、小脳の進化から生まれてきたと考えられる。
音による意志伝達の方法論を既に獲得していた哺乳類であるヒトの祖先は、高度化した声を出す運動機能を用いて、音による意志伝達のための機能をも精密化することに成功する。ここに言語が生まれることとなった。
言語機能にとって小脳が重要な役割を果たすことは、自閉症の研究によって知られていた。言葉を発しない子供たちに共通の因子は、小脳の未成熟度であった。
鳥類は小脳の進化による運動機能の精密化を飛行という形で成し遂げた。中には、その能力を発声の運動機能に応用する種が生まれ、音楽機能を獲得したのである。しかし、鳥類では、高度な知能を保証する脳はなく、その結果、歌を歌う能力と、オウム返しの言語能力しか獲得できなかった。

歌を歌う鳥はその音楽機能に片側の脳を優位に使う。ヒトが言語機能に優位半球を持つこととまったく同じである。
ヒトの脳が持つ左脳と右脳との機能乖離はヒトの脳が持つ最大の特徴とされるが、歌を歌う鳥は同じような機能乖離を獲得している。人類と鳥類というかけ離れた進化の道を歩んだ種が、音楽機能と言語機能という基本的に同一の脳機能を誕生させるに至って、優位半球という極端に特殊な機能形態をも共有することになったのである。
これは、言語機能の基本構造が調音器官の精度の高い運動機能として登場する時に、優位半球を持つことが必須であったことを意味する。

その必須条件とは何だったのか?何故、両側の脳を使っていてはいけなかったのか?
発声に使われる筋肉は、元々、呼吸とか食物の摂取とか、生きてゆくための基本的な動作に必要な筋肉である。神経学的には球筋と呼ぶ。これは、これらの筋肉を直接支配する神経が出発する部分(延髄)が、球根のような形をしていることから生まれた名前である。
球筋に独特の特徴は、左右両方の脳から支配を受けることである。ここに優位半球登場の秘密を解く鍵が隠れている。
全身の筋肉は左右対称に存在する。一部の例外を除いて、身体の右側にある筋肉は左の脳、左側にある筋肉は右の脳に支配されている。
従って、一方の脳に障害が起こると、反対側の身体半分が利かなくなる。
ところが、球筋は左右両方の脳の支配を同時に受けている。これは、球筋が身体の中央に位置することと、生命に直接関係した筋肉であることから出来上がった仕組みと考えられている。
両側の脳からの支配を受けていれば、たとえ、片側の脳に障害が起こったとしても球筋の麻痺は起こらない。呼吸や食物の摂取など、直接的に生命の維持を左右する筋肉は麻痺しない。

左右の脳から二重の支配を受けることは、片方が壊れたときの保険としては良い構造である。しかし、両方の脳が健全な時には、ちょっと働き難い。左右両方の脳の正確な同期を要求するからである。
これは職場に同じ決定権を持っている上司が二人いる場合と同じである。片方がいなくなっても仕事はできるが、普段の仕事では常に二人の合意を取っていなければならない。それでは、あまり効率の良い仕事はできない。
それでも仕事の効率に問題を起こさないためには、普段から行う仕事の内容を一定にして、あまり複雑なことをやらせないようにしておくことである。実際のところ、球筋の主な仕事である呼吸とか食物の摂取などは、ほとんど一定の作業として決められている。随意に動かす場合でも、それほど自由な動きをさせることはできない。

ヒトは調音器官に高度の運動機能を獲得することで、言語機能を獲得した。その調音器官の中心的な運動は球筋によってなされる。ところが、球筋は、元々左右の脳の両方から支配を受け、単純作業をやるものと決められていた筋肉である。言語機能という繊細な運動機能には向いていない。
そこで、脳は言語機能の場合だけ、球筋に指令を出す脳のランク付けをすることにした。
言語機能に関する運動においてのみ、球筋への命令を与える権利を片側の脳に優先的に与えることにしたのである。

とはいっても、いざというときの保険を残したまま、つまりは、基本的な球筋の運動の両側支配は残したまま、言語運動のときだけ片方の脳に支配させる機構を作ることは、それほど容易ではない。
そこで、脳が選んだ方法が、(意識して故意に行う)随意運動でのコントロールである。言語運動は随意運動である。従って、球筋の随意運動に左右の脳にランクをつける機構を開発したのである。
脳は、随意運動を開始する信号を受けて、自動的に片方の脳の支配を押さえ込んでしまう制御装置を作ることにした。随意運動の開始が自動的に片側の脳の支配力を低下させ、その結果、片側の脳が球筋の運動支配に優先権を持つようにしたのである。優位半球の登場である。
神経学的には、このような機構を抑制制御という。

抑制制御の装置を加味することで、もともと存在した両側支配の構造を変えずに、片側支配を作り出すことができる。言語機能という随意運動の場合のみ、球筋への支配は優位半球からの信号が優先されることになる。

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