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2021年09月14日

原猿時代の同類闘争における不全感は、弱メスの方が大きかった?

前回の記事で扱ったように、雌の生殖期間においては雄の縄張り内で守られていた原モグラの雌雄関係も、生殖期間以外では雌の発情物質が低下し、雌雄も縄張り争い(エサの奪い合い)をしていたのでは?という仮説が出てきた。

 

この雌雄関係は、樹上逃避機能を獲得し、生息域を樹上に移した原猿も同様だったと想定できる。
外敵が殆どおらず、果実や昆虫、木の葉、樹脂などのエサが豊富な樹上世界で、原猿たちはたちまち森林を埋め尽くすまで繁殖していく。
同類の原猿同士がひしめき合い、縄張り空間を侵犯し合う状態が登場し、弱者たちはどうしたか。

これまで議論されてきた仮説では、首雄に追い出された弱オスたちが各縄張りの境界線上にたむろし、絶えざる縄張り侵犯による過剰な緊張や怯えや飢えの苦痛など、全ゆる不全感に恒常的に苦しめられることになる、とある。
(実現論前史 サル時代の同類闘争と共認機能http://www.rui.jp/ruinet.html?i=100&c=1&t=4

しかし、縄張り闘争を第一義課題とする闘争集団を形成する前の原猿においては、メスたちも弱オス同様(体格がオスよりも劣る分、より一層)、雄の縄張り下で守られる生殖期間の以外はエサの確保に苦労し、かつ外敵不在で死なずにいる恒常的な不全感は高かったのではないか。とすると、同類闘争発の恒常的な不全は、まずメスから登場したのではないかと考えられる。

 

では、カタワの弱メスたちはどのようにしてこの不全感を突破したのか?
雌の適応戦略を紐解く上で、まずは原猿の生殖期間に注目してみたい。

原猿類の生殖期間

原猿類の生殖期間(クリックで拡大)

 

原モグラ(カルポレステスなど)の繁殖性に関わる情報は見つかっていないが、例えば土中に隠れ棲んでいた環境や体型が近いヨーロッパモグラでの研究例によると、年に一度発情期が訪れ、土中に育児室を作って5~6週間の妊娠期間がある。一度の出産数は2~6頭程度で、親離れまでの期間は約40日程度という。
それに対して、上表にあるように、原猿類の場合は雌の授乳期間・子育て期間は長期化しており、例えば比較的子育て期間が短めなスローロリスでも、授乳期間6か月、性成熟期間が9~10か月程度。
インドリ(キツネザル)にもなると、授乳期間6か月は変わらないものの、メスの性成熟は7~9年かかる(親離れは2~3年程)。

この生殖期間の変化が、どう弱メスたちの不全感の捨揚に関係しているのか、次回の記事ではそこに焦点を当てたい。

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