2022年03月18日
観念機能とは何か?~言葉以前の世界が紡ぎ出す障がい者のアート
写真は井村ももかさんの作品です
先日、滋賀県立美術館で開催されている障がいを持つ方々のアートを見てきました。
題して「人間の才能 生みだすことと生きること」
障がいをもつ・・という言葉自体が不適切なのかもしれませんが、障がい者の方々が紡ぎ出す圧巻の作品群に引き込まれました。
また隣の展示室では、近代芸術家の前衛的な作品も展示されていて、正直そこまで・・・。
この違いは何なのだろう?
何故、こんなにもエネルギーを感じるのだろう?
このブログで今追求している「言葉以前の世界」と、これら作品には凄く重なる感覚もあったので、今回はそこを深堀したいと思います。
まずは、展示されていた作品群を紹介。全て紹介したいところですが、すいません一部だけ。気になった方は是非現物を見て欲しいです。写真撮影もOKで作品をとても身近に感じられる良い展示でした。私が撮影した写真を載せますが、あまりうまく撮れていないのもあるので、滋賀県立美術館のHPも見て頂ければと思います。
★ 澤田真一さんの作品
この存在感!まるで、縄文時代の火炎土器を連想させるような、エネルギーの塊のような作品です。岡本太郎さんも同時に思い浮かびました。幼少から手先が器用だった澤田さん。陶芸に出会い器や壺を製作する傍ら、写実的なカエルの造形なども行い、今は全体を覆い細かなトゲの突起物と線形がシンボリックな作風を生み出しています。
★ 藤岡祐機さんの作品
一瞬、これは何?と思いませんか。実は、この作品。紙をハサミでほそ~く一定の間隔で切っているんです。幼少のころからはさみが大好きで、はさみが紙を走る音と手に伝わる感覚を楽しむうちに、次第に極微化を遂げてゆき、生き物のように美しい作品が生まれていきました。優に1万点を超える作品があるようで、紙をはさみで切っている時にとても充足した声をあげているのが印象的でした。
★ 岡崎莉望さんの作品
これは、和紙なのかな?CGで描いたグラフィックなのかな?と思いきや、なんとペンで一本一本、一定のリズムで線を重ねて描かれた作品。宇宙感、生命感を感じる幻想的な作品です。音楽を聴きながら一定のリズム、スピードで何日もかけて線を重ねているのですが、彼女の頭のなかには最初から完成したイメージがあるようです。
★ 鵜飼結一朗さんの作品
15mほどはあろうかという絵巻のような作品。図鑑やアニメで見知った動物や恐竜、キャラクター、骸骨たちがびっしりと練り歩くように描かれ、何とも楽しく動物たちが会話しているかのような生命感ある作品です。どの動物たちもしっかりと同じ調子で描かれ、そこには疲れや妥協が全く感じられない。むしろ、紙さえあれば延々とこの絵は続いていくのではないかと思わせる作品です。
この他にも本当に素晴らしい作品ばかりでしたが、これら作品群に共通するものとして、
★どれもリズムも密度も一定で没頭していること。
★そして、どれも子どものような無垢な作品。近代芸術のような解釈(言葉)を必要としないです。
★そして、どれも生命力やエネルギーの塊であること。作者の充足や活力など意識が作り出すエネルギーに充ちています。
私も子どもの頃を思い出しましたが、褒められたいとか、上手く見せたいという気持ちもなく、心が充足するままにひたすら描き続ける感覚。この感覚は、多かれ少なかれ誰もが幼少時代に経験したことがあるのではないでしょうか。大人になるにつれて、いつの間にかその事を忘れていっていると思いますが、この作品群はその感覚をむしろ突き詰めている。
先日の記事では「右脳は対象と一体化し充足を得る脳回路」と書きましたが、一体充足を得るために、対象世界を探索し再現する回路だけでこれらの作品は作られているような気がします。
この探索・再現回路が左脳にあるとすれば、この左脳の探索回路と右脳の一体充足回路とが、行ったり来たりしながら、どんどん太く繋がっていく(=脳梁になっていく)。そして、そこで表出されるものは、対象と一体化したことで得られた生命のエネルギー、一体充足のエネルギーということではないでしょうか。
本能以上・言葉以前の脳回路とは、このように一体回路と探索回路が相乗収束し、充足・活力を高める回路。人類が言葉を喋るようになったのは、ほんの数万年前ですが、それ以前の数百万年間のなかで、一体回路⇔探索回路を進化させ、それが言葉(観念)の土台になったと考えます。逆に言えば、一体回路⇔探索回路が発達しなければ、言語(観念)能力も、その先の創造力、構想力などの仕事能力も育たないということでしょう。

- posted by kida at : 2022年03月18日 | コメント (0件)| トラックバック (0)

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