2014年11月11日
高齢者が先導する新たな共同体!~シリーズ4 高齢者の意識潮流を探る~
みなさん、こんにちは。
これまでの記事で見てきたように、不整合な現実社会から、新たな地域共同体の構築に向けて、時代が大きく動きだしていることがわかりました。
私たちは、ここまで「地域共同体を先導するキーマンは高齢者である」という仮説をもとに進めてきていますが、今回は、その仮説を裏付ける上で、事例やデータをもとにして、高齢者の意識潮流を探っていきます。
・シリーズ1~プロローグ~
・シリーズ2~事例編:社会問題が動き始めている~
・シリーズ3~背景の意識潮流「不整合な現実社会から、新たな地域共同体の構築に向けて」~
●高齢者の実態
現在、65歳以上の高齢者の数は約3000万人にも上ります。これは人口の約25%を示し、4人に1人は高齢者ということになります。
歴史的に見ていくと、日本の人口に占める高齢者の比率は上昇を続けていて、65歳以上の高齢者の比率は、1990年には総人口の12%に過ぎませんでしたが、2010年には23%まで上昇しており、2030年には32%、2050年には40%まで上昇すると予想されています。【下図参照】
<2050年の日本未来予想図より引用>
本格的な高齢化社会の到来です。
一般的には、高齢化社会は、現在、そしてこれからの日本の社会、経済を考えるうえで、最も重要かつ確実なファクターと位置づけられています。高齢化というと、人が年老いて体力、気力を失っていくイメージと重ね合わせて、悲観的な話になりがちで、 国の政策等にも挙げられているように、高齢化問題という名称が示すとおり、問題事として扱われています。
しかし、これって、本当なのでしょうか?
巷には若者よりも元気な高齢者が溢れています。高齢化はむしろ可能性になりうるのではないでしょうか?
事実、定年を迎えて、人生上がりと考えるのは、もはや昔の話で、現在はシニア世代と呼ばれている層に転職・起業を行う高齢者が増えています。
このような高齢者の意識の変化の背後に、一体、何があるのでしょうか?
まずは、ほんの一部分ではありますが、シニア世代の起業事例事例を紹介します。
●高齢者の意識潮流
【シニア起業】「働き続けたい」と起業 シニア世代、新分野挑戦も
60歳前後のシニア世代の起業が相次いでいる。4月から65歳までの雇用確保が企業に義務付けられたが、シニア起業家は「年齢の枠にとらわれずに働き続けたい」との思いを強め、未知の分野に挑戦したり、経験を生かした働き方を選んだりしている。この子は途中で集中力が切れてしまうから教え方に気をつけて」。ことし6月、横浜市で小学生から高校生向けの学習塾を開いた立園浩一(たてぞの・こういち)さん(61)は講師との打ち合わせに余念がない。
昨年10月まで30年間、外資系の金融機関で働いていた立園さんにとって、塾経営は未経験だ。自らは運営に徹し、直接教えることはないが、親に勉強の進み具合を連絡したり、チラシ配布の手配をしたりするなど忙しい日々を送る。
立園さんは60歳の定年直前に病気になり、雇用延長を選ばずに退職。企業で身に付けた人事管理のノウハウを生かせる仕事を探したが、かつての同僚が学習塾を始めると聞き、起業に関心を持った。20代の時、講師をしていた英会話教室の教え子が別の塾に移り、悔しい経験をしたためだ。
「文系でも理系でも必須の英語を得意科目にさせたい」。「少人数指導で分かるまで教えることが大事だ」。目指す教育の姿を明確にし、半年かけて開講にこぎ着けた。
大手フランチャイズに加盟しているが、地域には学習塾が多く、競争は激しい。それでも生徒は徐々に増え始めている。
日本政策金融公庫の調査で、融資を受けて起業した人のうち55歳以上の割合は2012年度で12・1%。00年度以降、全体の1割以上をシニアが占める状態が続く。これまでの職歴を生かし、会社を立ち上げる人も多い。
超音波を発して魚の群れを探知する機器の研究開発企業に勤めていた遠藤保彦(えんどう・やすひこ)さん(65)は、長年培った経験を生かそうと12年3月に独立。「アクアサウンド」(京都市)を元同僚ら3人と設立し、工事が海洋生物に与える影響などを調査する装置を開発している。顧客は、環境影響評価(アセスメント)を行う研究施設や企業だ。
60歳定年を延長して働き続けていたが、「世の中の需要に応えられる仕事はまだできる。やりがいを感じられる仕事がしたかった」と話す。
「若手の能力を十分引き出せない企業が多い。優秀な若者を育成する場を提供したい」との思いもあった。会社が採算を重視しすぎるあまり、若い技術者が意欲的に研究、開発に取り組めない姿を見てきたためだ。
来春に大学院を卒業する若者を採用することも決まった。今後も若手研究者を増やして育成する方針だ。遠藤さんは「私たちが退いても、若者が能力を発揮できる会社を残したい」と話す。
日本政策金融公庫の調査では、55歳以上のシニア世代の起業理由(複数回答)は「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」が最も多く、51・1%を占めた。経験や人脈の豊富さは、シニア起業に有利な点だ。
(中略)
起業理由で、次に多かったのは「社会の役に立つ仕事がしたかった」と「年齢や性別に関係なく仕事がしたかった」で、それぞれ36・2%。「自由に仕事がしたかった」が35・1%と続いた。調査は公庫融資を使って起業した782人を対象に実施し、 このうち起業理由について答えた55歳以上は94人だった。
このように、起業するシニア世代の意識の背後には、「社会の役に立ちたい」、「次の世代を育てたい」という、大きな志が横たわっていそうです。
一方で、高い社会意欲や就業意欲を持っていても、誰もが起業できているわけではなく、実際の就業まで結びついていないという現実もありそうです。
そこで、
1.高齢者の就業意欲
2.年齢階層別の就業率
3.年代別・年齢階層別の起業割合
4.就業希望理由
を実際のデータで見ていきます。
注目を集めるシニア層の起業
■50歳を過ぎてからの起業家が倍増!
高年齢者雇用安定法の改正により、2013年4月から希望者全員の継続雇用が義務付けられ、年金の受給開始年齢も2025年までに段階的に引き上げられています。そんな中、50,60代の起業がブームになっています。2011年版の中小企業白書によれば、50歳以上の起業家の割合は1979年の18.9%から、2007年には42.1%と、ほぼ倍になっています。ではなぜそのような実態となっているのか。それは50~60代の就労状況に大きな矛盾があるためだと考えられます。
総務省統計局によると、2012年9月の65歳以上の人口は、総人口の約4分の1(24.1%)で、過去最高となりました。いわゆる「団塊の世代」が65歳に達しはじめ、65歳以上の人口は約3,000万人となっています。高齢化は今後も進み、2060(平成72)年には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上となるといわれています。内閣府の就業意欲の調査では、65歳までに退職したい人は3割に満たず、残りの約7割は「70歳以降まで」または「働けるうちはいつまでも」働きたいと考えています【図1】。
【図1】1.就業意欲
内閣府「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」(平成20年)しかし、いかに就業意欲が高くとも現在は働くことができない環境にあり、総務省「労働力調査」(平成23年)の年齢階層別の就業率をみると、65~69歳で再雇用や再就職により就業できているのは36.3%と、就業希望者のおよそ半数となっています【図2】。
【図1】と【図2】の2つのグラフが意味するものは「シニア層は高い就業意欲を持っている。しかし、これが必ずしも実際の就業には結びついていない」という現実です。働く場所がなければ、当然、起業意欲が高まります。
【図3】のグラフをご覧ください。起業家全体の中で50歳以上の方が占める割合は、1979年の時点では2割に達していませんでした。しかし年々これが増加し、50歳代、60歳代の起業家が2007年では4割を超えています。
■シニアが「働きたい」理由とは?
それでは、なぜシニアの方は働きたいのでしょうか。その答えがわかるのが【図4】のグラフです。
【図4】4.就業希望理由
55歳以上の方を対象に、働きたい理由について聞いています。「健康を維持したい」「知識や技能を活かしたい」という理由が、年齢が上がるとともに増えています。
一方「失業しているから」「収入を得る必要が生じたから」という理由を挙げた方は、年齢とともに減っています。
50,60代で起業する場合、その多くの方が「第二の人生」をどのように生きていくかを模索し、「健康を維持したい」「知識や技能を生かしたい」「収入を得たい」そして「社会との接点を求めたい」と、自分の幸せや充実感などを得ることを考えています。
また、「収入を得たい」場合でも「何か事業でひとヤマあてたい」というよりも、一定の収入を確保するため、もしくは働きたくてもいい職場に巡り会えず「ならば起業を」と決めた方が多いようです。
別のアンケートで働き続けたい理由をアンケート(リンク)している紹介します。
注目すべきは、企業や社会の役に立ちたいという層が35.6%存在することです。
もはや、高齢者の社会の役に立ちたいという意識の芽生えは、疑いようのない事実といえそうです。
それではなぜ、高齢者の中に「社会の役に立ちたい」という意識が芽生えてきたのでしょうか?
これは、シリーズ3で見てきたように、絶対に安全といわれた原発の爆発、国家ぐるみの不正選挙など「秩序崩壊」がきっかけになっていると考えます。
さらに、高齢者世代は、戦後の経済成長、70年代の不況、バブル崩壊、阪神大震災、リーマンショック、3・11・・・の数々の市場崩壊を目の当たりにしています。
これらを前にして、「(この社会を)なんとかしなければ」=社会の役に立ちたいという意識が生起したのだと考えます。
この「なんとかしなければ」という意識が生起すれば、これまで当たり前と思っていた企業や社会に対する不整合感は日に日に増していきます。
そして、定年を迎えるにあたり、これから生きていく場を探して、転職・起業に収束していくという潮流があるのだと考えます。
●高齢者の意識図解
「なんとかしなければ」 ⇒ 何か別の仕事を(社会の役に立ちたい・次の世代を育てたい) ⇒ 転職・起業
ああああ↑ ↓↓ ↑↑
’13秩序崩壊 ⇒ 私権(企業・社会)に対する不整合感
以上、高齢者の意識潮流を見てきました。
次回は、高齢者が本当に救世主となりうるかどうかを 「地域共同体構想の実現基盤と実現手法」を深く掘り下げることで見ていきます。
お楽しみに!!
- posted by TOKIO at : 2014年11月11日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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