2020年04月07日
【世界の各部族の婚姻形態シリーズ】掠奪婚の風習を持つ部族①
世界の各部族の婚姻形態シリーズ、今回は「掠奪婚の風習を持つ部族」について2回に亘って紹介します。
まずは、リンクより以下の5部族についてです。
◆クシカオ族:アマゾン支流シング川
◆トアレグ族:サハラ西部
◆キクユ族:南西アフリカ
◆高砂族:台湾(山地原住民)
◆バタック族:フィリピン
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◆クシカオ族:アマゾン支流シング川
(1964 年、数々の贈物をエサにして交歓に成功し、一年近く生活を共にしたアメリカの人類学者ジョージ・オースチンの記録。それ以前に接触した学者は殺されている。)
・生活形態-南米アマゾン支流シング川上流で男は狩猟、女は耕作。未知の人間を見れば必ず殺す凶暴な種族で、白人はおろか下流の土民も恐れて居住地域には近寄らない。周辺のインディオと闘争を繰り返しており、敵の部落をった場合は、若い女以外は皆殺し、捕らえた女たちは、戦祝会で敵の顔からはいだ生皮をかぶって全員で犯した後、妻又は奴隷にする。
・男女関係-酋長は複数の妻を持っているが、大半は一対婚(?)。既婚女性の姦通が判明すると、相手の男は大量のピラニアがいる池に下半身を浸されて処刑されるが、妻は許されて、和解の席でそのピラニアを食べるのがしきたり。既婚男性と通じた女は、男の所有権をめぐって、その妻とナイフで決闘するが、相手を殺すことは禁じられており、概して女性の姦通に対しては寛容。
※好戦的部族の侵略で母胎集団の皆殺しに合い、生き残った数人の男が脱出、掠奪によって女を得、部族を再建。掠奪婚の場合、女は私有財産として尊重されるため、例えば姦通に関しても、女は殺されずに寛大に扱われる。
しかし、戦闘集団故に男の損傷が大きく、かつ掠奪を繰り返すことによって恒常的に男の数<女の数となり、性権力は発生しない。
私有財産としての女の所有権を明確にするために、また掠奪→全員分配の原則から、能力のある者は多数の女を、末端兵士にも一人の女をという、集中婚を残した一対婚規範が確立された。
◆トアレグ族:サハラ西部
サハラ砂漠西部で遊牧を営むが、勇猛な戦士であると同時に奴隷売買も行う抜け目のない商人で、“砂漠のハゲタカ”として周辺民から恐れられている。貴族、家僕、ニグロ系黒人奴隷と階級が分化しており、母系相続制。回教徒でありながら一対婚をとっている。但し未婚女性の婚前交渉は全く自由であり、姦通に対してもおおらかな様子。浮気相手が他種族の男でも、生まれた子は族員として認められ、母親の家系を継承する。
※集団婚の名残を留めていることから、母系・交叉婚の母胎集団からの分派であり、早期に闘争過程=男、生殖家庭=女という規範が強固に確立されていたため、母系制を温存したまま遊牧に転換、後に追剥(おいはぎ)集団に至ったものと思われる。
追剥集団であることから財産意識が強く、掠奪対象は主に男で(母系制故に、バアサマにとってよその若い女は集団統合を乱す邪魔な存在であり、商品以外の女は極力排除しようとしたはず)、家僕としたり、さらに財産意識が発達すると奴隷概念を形成、奴隷売買を行うようになる。
財産意識の増大から財産継承権明確化の必要が生じると、母系制=母系相続維持という特殊条件から、娘の相手を1人に限定するための人工的婚姻形態として、婿取婚という形の一対婚が導入された。しかし婚前交渉・姦通に寛容であり、固定一対婚にはほど遠い、近くて短偶婚レベルのものである。
追剥集団故に男の損傷が大きく、女の数が常に男のそれを上回っていることから、女の選択特権≒性権力は登場しない。
◆キクユ族:南西アフリカ
(白人入植者による支配・搾取を受けているが、昔ながらの集団制度を持続させ、古い習慣や奇習を保っている。)
・生活形態-温和なケニア中央部で早くから定住農耕を営んでいるが、肥沃な土地の多くは白人に取り上げられ、現在はキクユ指定地で生活。ケニア独立に際しては、テロと白人殺戮を繰り返したマウマウ団の主力として大きく貢献。その残忍で悪魔的な所業は全世界を震撼させた。
・集団-長老が統率する氏族集団とそれを横断する年令集団の団結によって、部族全体が連合。
・男女関係-結婚前の男女交際は自由。頻繁に開催される踊りのパーティーで誕生したカップルは、集団恋愛用の小屋で一晩を過ごす。但し性交と互いの下半身に触れることはタブー。求婚は、同じ年令集団に属する男の友人を交えて当事者間でなされ、家畜の結納も行われるが、結婚式は男の家族が娘をさらって行く掠奪婚の形式を取る。男の結婚年齢が25 歳前後であるのに対し、女は15~20 歳で必ず結婚しなければならず、適齢期の女性が男性より常に多い状態となって、平均2人の妻を持つ一夫多妻がバランスする。住居は、居間兼客間の夫専用の小屋と妻の小屋からなり、夫は妻たちに稼ぎを平等に配分すると共に、日数を決めてそれぞれの妻の小屋を訪れる。女性は、結婚まで処女でいることと結婚後も貞節を求められるが、夫の属する年令集団の男性が訪れた場合は、社交上のもてなしとして一夜を共にすることが許される。また夫が性的に弱いあるいは不能の場合は、子供を産むために自由に男性を選ぶ。
・子供-子族繁栄のための人口増が至上命題となっており、最低男女各人2人、計4人の子供を作らなくてはならない。この聖なる目的を遂げるためには、男は何回結婚してもよいことになっている。
長男は夫の父の生霊、次男は妻の父の生霊を継承し、長女・次女は両方の祖母の霊に対する祭礼義務を負う。
※掠奪婚の場合には男優位となり、姦通・婚前交渉はタブーとされるのが一般的である。それに対して、恋愛遊戯用の小屋は、交叉婚に見られる若衆宿と同じであり、また夫と同じ年令集団の男とのみ一夜を共にするというのは、男共同の婚姻形態の名残と解釈できる。温和なケニア中央部という点から、元々は〈採〉部族だった可能性が高く、交叉婚→半集団婚に至った段階で母胎集団が滅亡、掠奪婚によって部族の再建を図ったものと考えられる。従って、基本的には男主導の婚姻制を取っているが、半集団婚の風習も多く留めている。
◆高砂族:台湾(山地原住民)
狩猟・農耕を営む。一対婚で大半が自由結婚だが、式の際は掠奪婚の形式を取る。蓄妾・姦通はタブー。(バイワン族)
※クシカオ族と同様に、同類闘争で敗北→脱出→掠奪婚の流れ。一対婚を確立している点も同じで、掠奪→全員分配の原則のもと、男たちの争いを避けるために1対1の分配基準として、一対婚秩序を確立させた。
◆バタック族:フィリピン
・生活形態-フィリピンのパラリン島で焼畑農耕を営む。草刈りは種族全員の義務だが、耕作・収穫は主として女性の役目。
・男女関係-女性の数が男性よりも少なく(理由は不明)、未婚・既婚を問わず、女性盗みがかなり盛んに行われている。結婚の際は女に金を贈るのがしきたり。(松ヤニ採取が唯一の現金収入の道。)
その額の2~3倍を女に払えば自分の妻にすることができる。
※婚姻関係の詳細は不明。周辺のアジア部族の事例及び金を贈る習慣から考えると、乱交→半集団婚の段階で他部族に追われ、掠奪集団に至ったものと推測される。
常に男の数>女の数は、通常あり得ない。周辺の部族は掠奪婚の末裔部族で占められており、かつ焼畑農耕故に、女の労働力が貴重であることから、女性盗みの習慣がかなり長く残り、その中でこの部族が弱者、つまりいつも女を取られる側にあるというだけである。
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- posted by KIDA-G at : 2020年04月07日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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