2018年08月17日
シャーマンとは何か?1~人間の脳の4層構造/追求機能は小脳の運動機能(行動・スピード)が下敷き
採集・狩猟部族の統合の要を成したのはシャーマンの予知・予言であった。
にもかかわらず、シャーマンの研究例は少ない。
シャーマンとは何か?その脳構造や集団・社会構造から明らかにしたい。
まず、前提となる脳の構造を整理する。
『生物史から自然の摂理を読み解く』「君もシャーマンになれるシリーズ13~脳は「生命維持」「運動」「情動」「思考」の4層から成る」を要約した。
脳は、①脳幹→②小脳→③大脳辺縁系→④大脳新皮質の順に作られ、塗り重ねられている。
1.脳幹-生命維持の脳
最も古いのは、脊髄の上端をとり巻く脳幹。呼吸や代謝など生命維持の基本にかかわる機能を調節する。あらかじめ決まっている反応や動作をコントロールする。生命を維持し命を守るのに必要な機能をあらかじめ決められたプログラムに従って調節するのが、脳幹の役割(考えたり学習したりする機能をもたない)。爬虫類の時代には、この脳幹が主役。
2.小脳―運動機能の脳
運動機能の中枢(運動の統合機能)。 単なる運動機能だけではなく、言語やイメージなどの高度な思考モデルも写し取る。サルやヒヒまでは小脳の機能は運動に限定されているが、チンパンジーなどの類人猿~人間では小脳が外側に大きく広がり、この領域は高度な情報処理や思考をつかさどる大脳の連合野とつながる。
3.大脳辺縁系-情動の脳
情動の脳の原点は、においを認識する嗅葉と呼ばれる部分。初めは嗅葉はニューロンが2~3層重なった程度の簡単な構造だった。一段目のニューロンでにおいを感じ取り(食べられるか否か、性行動の対象か、敵か獲物か)、二段目のニューロンが神経系を通じて全身にメッセージを伝え、反射行動(食べる、近づく、逃げる等)を命じている。嗅葉から情動を支配する脳が拡大し、脳幹の上端をとり巻く大きさになった。
原始哺乳類の登場とともに、情動を支配する新しい脳が登場。新しい脳は脳幹をとり巻くドーナッツ状で、下の方に脳幹の先端が入り込む格好。脳幹の周囲を縁どる形状から「大脳辺縁系」。大脳辺縁系によって、脳は独自の感情機能を持つようになった。さらに大脳辺縁系は「学習」と「記憶」の能力を進化させる。哺乳類は、周囲の変化に対していつも決まった反応ではなく、少しずつ対応を工夫して適応できるようになった。
4.大脳新皮質-思考する脳
約一億年前、哺乳類の脳は一気に成長し、大脳新皮質ができた。大脳新皮質によって逆境を生きのびるための微調整が格段にうまくなると同時に、そうした有利な神経回路を子々孫々に伝達できる可能性が生まれる。大脳新皮質が大きくなるとともに、脳の神経回路の結びつきも幾何級数的に増加し、脳の神経結合が多いほど、選択しうる反応の種類も多くなる。大脳新皮質と辺縁系の連絡は霊長類が最も稠密で、とりわけ人間の脳は他とは比較にならないほど発達している。
5.非常時は情動が思考を支配する
思考する脳が情動の脳の上に塗り重ねられた。つまり、思考する脳が生まれるずっと前から、情動の脳は存在していた。しかし、大脳新皮質はすべての情動を支配しているわけない。情動にかかわる非常に重要な問題が起こったとき、特に緊急事態が起こったときには、辺縁系が新皮質を押さえ込んでしまう。大脳新皮質の多くの部分は、辺縁系から派生したり拡大したりする形で発生しており、情動を支配する大脳辺縁系が決定的な部分を握っている。情動を支配する脳は大脳新皮質の至る所につながる無数の回路を持っており、情動は思考をつかさどる新皮質を含む脳全体の働きに強い影響力をおよぼす。
6.人類の脳は急速に進化しすぎた!?
人類の脳は他の動物と比べて、上部の大脳新皮質が大きい。
脳の原型はプラナリアの段階で見られ、現在の基本構造に整ったのは5億年前。以降、「生命維持」「運動機能」「情動」をベースに脳は構成され・作動していましたが、人類誕生の段階で急速に「思機能」が進化する。急速な進化を遂げた大脳新皮質が脳をコントロールすることで、それ以前の脳(脳幹、小脳、大脳辺縁系)の機能が制御・抑制されている。大脳新皮質の思考機能を抑えることで、脳の基底的役割(生命維持、運動機能、情動)を開花させることができるのではないか?
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このブログによると、人類の脳(意識)構造を、①生命維持→②運動→③情動→④思考の4層に分けているが、①生命維持と②運動→③情動は本能機能(領域)である。一方、サル・人類で発達した④思考は、サル時代に形成された共認機能(相手と自分を同一視する同化機能)と、人類固有の追求機能と観念機能(言葉)に分けることができる。
人類の追求機能は、圧倒的な自然外圧に晒された原始人類が明けても暮れても、みんなで「どうなる?⇒どうする?」と追求し続けることで形成された機能。そこでは、先を読むことが決定的に重要であり、採集時代のシャーマンの予知・予言能力は、日々の「みんなで追求」の中から形成されたに違いない。もっと云えば、極限的な生存状況下に置かれた原始人類は、全員が予知・予言能力を備えていた可能性が高い。
シャーマンの予知・予言能力には、もちろん哺乳類以前の本能機能も下敷きになっているが、要を成すのはサル時代に形成された共認機能と、原始時代に形成された追求機能だろう。
従って、シャーマンを解明する上では、人類の脳(意識)構造を①本能⇒②共認⇒③追求⇒④観念と分類した方がよい。
上記ブログで注目すべきは、追求機能が小脳を下敷きにしているらしいことである。類人猿~人間では小脳が発達し、運動機能だけではなく、高度な情報処理や思考をつかさどる大脳の連合野~言語機能とも繋がっている。つまり、人類で発達された小脳の運動機能(行動機能、その中心はスピード)が追求機能の下敷きとなっていると考えて間違いないだろう。
- posted by KIDA-G at : 2018年08月17日 | コメント (0件)| トラックバック (0)