2019年03月18日
生殖細胞(卵子・精子)と中心体
以下、学界の最新の研究から抜粋したもの。
【1】動物の受精卵には精子中心体が継承され、卵中心体は受精前に消失する。
この「卵中心体の消失」のメカニズムはほとんど研究されていない。
国立遺伝学研究所「卵母細胞からの中心体消失~減数分裂時の中心体動態を司るLIN-41」
【2】哺乳類を除く動物の体細胞では、中心小体をもとに形成した中心体が微小管重合中心として機能し、紡錘体極として働く。
一方、哺乳類の卵母細胞は中心小体が存在せず、マウスでは細胞質内に点在する複数の微小管重合中心が集合して紡錘体極を成す。
理化学研究所「卵母細胞はその大きさゆえに間違いやすい-卵子が染色体数異常になりやすい理由-」
【3】哺乳動物の卵子には形態的な中心体(すなわち中心小体と周辺PCM)は存在しない。
●受精に必要な微小管形成中心(MTOC)としての中心体は精子が導入する(下図)
●精子中心体の構造と機能発現(下図2つ)
精子中心体は頸部に存在し、2対の中心子とその周囲の様々な中心子周辺蛋白から構成されるPCMから成る複合体である。PCM には微小管形成に関わる種々のタンパクが存在し、卵子細胞質内でそれらがリン酸化されることにより機能を発現すると考えられている。
●ヒト受精における微小管の形成(下図)
卵子内に侵入した中心体より放射状の微小管の束、すなわち精子星状体が形成される。雌性前核には微小管のmotor protein(微小管をレールとすると荷物を運ぶトロッコ列車の役割を果たす)の存在が確認されており、雌雄前核融合にむけた動きをプロモートする。
微小管の放射状の構造はゲノムが卵子の中心を知るうえでは合理的であると考えられる。すなわち、最終的に卵子内 に360度方向に形成された微小管の斥力が卵子の中心でつり合い、雌雄ゲノムはそこに導かれるのである。雌雄前核は卵子中心で融合して精子中心体は分裂 し、第一分裂紡錘体が形成される。
秋田大学大学院医学系研究科「受精における精子中心体機能の発現とその異常」
【4】哺乳動物のなかで唯一、げっ歯類の精子には中心体が存在しない。
また、卵子活性化を媒精以外の方法で誘起し、卵割を来す単為発生処理において、卵子が精 子中心体の関与なしにどのように核を中心に移動させ、第一分裂紡錘体を形成するかは明らかになっていない。これらの事実は、精子中心体の受精の成立に対する必要性に疑問を投げかける。(中略)いままでの知見からは精子中心体が受精に必須のファクターであるとは断言できず、中心体が存在しない卵割が正常であるか 否かも含めてさらに検討してゆく所存である。
秋田大学大学院医学系研究科「中心体機能補助の可能性、中心体が存在しない卵割」
- posted by KIDA-G at : 2019年03月18日 | コメント (0件)| トラックバック (0)