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2019年10月25日

2019年10月25日

カンブリア紀 ~生物大爆発を促進させた雌雄分化~

個体の寿命は有限であるが、世代を交代することでリセットできる。複数の異なる個体の遺伝子を混ぜて子供をつくることを「有性生殖」、もしくは「性」という。性にともなって、さまざまに複雑な生命現象が進化してきた。多様で一見込み入っている性現象は、生物が長い進化の結果選択してきたものと考えることができる。

 ~以下、日本大学医学部、早川智教授『性はなぜあるのか ~進化生物学の視点から~」より~
地球上には「無性生殖」を行う動物種も多く、性イコール生殖ではない。むしろ細菌や酵母のように二分裂や出芽で繁殖する戦略のほうあ、自分と同一のゲノムを有するクローンを効率よう増やすことができる。実際、昆虫や爬虫類の一部に無性生殖をおこなう種があるが、極めて例外的であり、地球環境では有性生殖が主流になっている。しかし、有性生殖には「減数分裂による配偶子形成」、「配偶相手の選択」、「受精」という一連の過程が必要になる。

★では、なぜ大きなコストを払ってまで生物は有性生殖をするのであろうか?

「性」がいつ地球上に現れたか現時点では不明だが、9億年前の先カンブリア紀の地層にはすでに減数分裂により生じた微化石が見られる。バクテリアや現生動物でも他固体とプラウミドなどの形で遺伝子交換を行うことから、遺伝子の水平的移動による多様化はきわめて古い起源があるのかもしれない。多様性を獲得できる能力が、6億年前の4回の大氷河期(スノーボールアース)を耐えのびてカンブリア紀の爆発的進化の原動力の一つになったのかもしれない。

生命の歴史の年譜
(画像は「生命の扉」(リンク)」より引用

有性生殖では「卵」と呼ばれる動きの少なく大きな配偶子と、「精子」と呼ばれる小さくてよく動く配偶子とが融合する異型配偶子生殖がほとんどである。進化の上で最初は同じ大きさの配偶子が融合する生物集団があり、その数回余分に分裂して数を増やしてから有性生殖に入る「精子」と、子供の必要とする栄養を自らが保持する大きな「卵」が分化してきた。
「精子」は受精の確率を高めるためにより多くの細胞を残すように進化し、「卵」はより確実に受精卵を発育させるように進化した。これが雌雄(男女)両性の起源と考えられている。多様な性の表現は、それぞれの個体が自らの繁殖成功度を高くするよう努めた結果と理解できる。

しかし「卵」をつくるためには「精子」をつくることに比べてずっと大きな投資が必要である。そのため雌が子供に数を増やそうとすれば、適当な数の卵を子供にとって適切な環境に産まなければならない。ましてや、哺乳類のように子宮内で胎仔を育て出産後も授乳を行って独り立ちできるまで面倒をみる雌の投資は極大になる。従って複数の相手と交尾回数を増やしても、雌にとっては何の得にもならない。一方、雄は精子の数以上にに雄を受け入れてくれる雌の数、つまり交尾成功率によって子孫の数が決まる。

その結果。雌に選択権が与えられて雄は限られた雌個体をめぐって争うことになる。多くの動物で、雄は求愛行動や交尾に積極的で、雌は消極的な理由はここにある。繁殖期だけに大きな角をもつヘラジカでは、闘争に勝利した雄のみが雌へのアクセスを独占し、角の小さな雄は戦いをさける。砲艦外交のような派内であるが、無駄な出血を避け、生存競争を雄のみに行わせて子孫の数を左右する雌は温存する戦略の帰結であろう。

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