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2012年06月22日

【世界の神話から見える男女の性】-7~「北欧神話」=外敵圧力を受け続けた民族の戒めの神話~

【世界の神話から見える男女の性】第7回目の今回は北欧神話です。
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         オーディン(北欧を探してよりお借りしました)
北欧神話とは、キリスト教化する以前のゲルマン人が持っていた神話のうち、特にノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランド、及びフェロー諸島に伝わっていたものの総称です。(wikipedia
北欧以外の「陸のゲルマン人」たちは、早くからキリスト教化されたため、民族独自の神話や思想を示すものが残っていません。そのため「島のゲルマン人」達の北欧神話には、キリスト教化する以前の西欧人の心性、精神の源、伝統を見ることが出来るという意味において、非常に貴重な神話だといえます。
その内容は神々の物語、英雄伝説、箴言(しんげん=戒めの言葉)集で、主要には滅亡をテーマとしており、例えば自らの略奪闘争の歴史を正当化し、神々の優位性を語るギリシャ神話とは大きく異なります。
まずは北欧神話の中心民族であるゲルマン民族の歴史を押さえながら、神話の内容=民族の精神の源流に迫ってみたいと思います。

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■ゲルマン民族(「神々の故郷とその神話・伝承を求めて」より引用)
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現在の西欧人の祖であるゲルマン民族の起源はよく分かっていませんが、インド・ヨーロッパ語族の一つであり、紀元前1000年頃現在の北ドイツ辺りに集落を形成した部族とされます。そして先行民族のケルト民族を押しのけて拡大していったと考えられています。このゲルマン人が歴史に登場するのはやはりギリシア・ローマとの関係が生じてからで、紀元前100年代になってローマと事を起こしているのが歴史的最初となります。
 やがて、北ヨーロッパから中央部にかけて多くの部族にわかれて各地に点在するようになり、紀元前二世紀頃には彼等はローマに傭兵として雇われたりしてローマの内部に入り込み、小作民や下級官吏になったりする者も多くなっていたようです。こうしてゲルマン民族がやがてローマ帝国に入り込む素地ができあがっていったわけです。
 そして、紀元後372年ころ、東北の方にあったアジア系の部族フン族が西に移動を開始し、フン族は有能な族長アッティラに率いられて勢力を伸ばしてローマ帝国領内に侵入、さらに西に勢力を伸ばすほどの勢いを持っていました。
 そのためフン族に近い土地にいた内陸ゲルマン民族の東ゴート族が弾き出されるかっこうで西に移動せざるをえなくなり、玉突き状にその西にいた西ゴート族が押し出され、ここにゲルマン民族の大移動がはじまりました。その結果、ローマ帝国の西半分は移動してきたゲルマン人に乗っ取られゲルマン人の国になってしまったのでした。これが現在の西欧諸国のはじまりとなるわけです。

上記のように、気候の大変動の影響を受けながらさらに他民族の外圧も受けては土地を追われ、大自然の外圧がどこよりも厳しい北方に住まわざるを得なくなり、その後も常に外敵圧力を受け続けていた民族だったのではないかと思われます。
■キリスト教化されずに残った北欧神話
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                    「オーディンの槍」より

ゲルマン神話を見るということは現在の西欧人(南欧と東欧の源流はゲルマン人ではないので除かれる)の心性・精神の源・伝統を見るということにつながるわけですが、早くからキリスト教化した内陸部のゲルマン人はその民族の精神の伝統を伝えることをしませんでした。とはいっても人間の心性・精神はそんなに簡単に変わるわけもなく自分たちの伝統をキリスト教の習俗に巧みに残しているのですが(たとえばクリスマスや曜日の呼び名など)、言葉として伝えることがなかったためにその全容を知ることができなくなってしまったのです。
 他方、北欧から西域のゲルマン人はキリスト教化するのが9世紀から11世紀と遅く、そのためここには伝統的な神々の神話が保持されていました。(「神々の故郷とその神話・伝承を求めて」より)

北欧神話の内容は大きく以下の3つで構成されています。
・ 神々の物語
・ 英雄伝説
・ 箴言(シンゲン)=戒めの言葉
その概要は、以下のようです。

この神々の物語は、「宇宙の生成と創造」「神々と巨人族との壮絶な戦いと滅亡」の物語が主体となっています。ゲルマン神話の最大特徴の一つがこの「神々の滅亡」というものでその後生き残った神々による「新たな世界」が言われはするものの、全体的に見るとそれは大きなテーマとはなっておらず「神々の滅亡」が主要テーマという珍しい構造になっています。(引用終わり)

宇宙の生成と創造の概要は、深遠がまず始めに有り、その後灼熱の国(ムスペルヘイム)と極北の国(ニフルヘイム)が生じ、その対立・相乗効果から生命が生まれ、さらにその生命体が新しい生命に「殺されて」万物が作られるという構造になっています。
灼熱と寒冷の対立からは厳しい自然外圧が、生命を殺して新しい生命が生まれるという様子などは、狩猟民族であったことの名残がみてとれます。この様にして常に大きな外圧・外敵に晒され続けた彼らの祖先の長い長い歴史がそのまま後世に語り継がれてきたのでしょう。
他にも「英雄伝説」は、勇敢で剛毅な男達の物語であり、敵にだまされ殺されることになっても平然として己を貫き通す男、死を予測しても勇敢に敵に立ち向かっていく姿などが英雄像を形成しています。
「箴言(戒めの言葉)」は、たとえば、
財産も家族も自分もやがてなくなっていくものだが、名誉・名声は消して朽ちることなく永遠であるといった考えや、愚か者は財産その他欲望の対象を得るとつけあがって自分がひとかどのもののように思うものだが「思慮」に関しては何も獲得してはいない、「分別」こそ最大の友であるなどが書かれています。こういった戒めの言葉が神話を形成していることが、ゲルマン民族の特徴=北欧神話の特徴ではないかと思われます。
■巨人との戦い~神々の滅亡
(「北欧神話入門」より引用)
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         巨人スルト                        ジグルズ
(筆者注:「」は神々の名前 <>は巨人及びその仲間の名前を示します。)

ラグナロク(神々の黄昏)
 北欧神話の最大の特徴は、ラグナロクという最終戦争によって神々が世界もろとも滅び去ることにある。
 …「バルドル(光の神)」の死によって世界は光を失い、3年もの間冬が続いた。太陽と月は<フェンリル(魔物のひとつで狼)>の子の狼に飲み込まれ、あらゆる封印は吹き飛んだ。解き放たれた<ロキ>は巨人族を、<ヘル>は冥界の亡者を、<スルト>が炎の巨人たちを率い、<フェンリル>と<ヨルムンガンド(魔物のひとつで蛇)>もアースガルドに押しよせた。「ヘイムダル(神の国の見張り番)」の吹く角笛によって敵襲を知った神々とヴァルハラの戦士たちは、アースガルド(神の国)の前にひろがるウィグリドの野に出撃し、最後の戦いがはじまる。
 「オーディン(主神)」」は<フェンリル>に飲み込まれたが、息子「ヴィダル」が<フェンリル>の口を引き裂いてかたきを討った。「トール(雷神)」は<ヨルムンガンド>を撃ち殺したが、その吐き出した毒を受けて倒れた。「チュール(軍神)」は地獄の番犬<ガルム>と、「ヘイムダル」は<ロキ>と相討ちになり、宝剣を失っていた「フレイ」は<スルト(炎の巨人)>に倒された。そして<スルト>が投げつけた炎の剣によって世界は火の海につつまれ、海の底に沈んでいった。
 しかしその後、新しい陸地が浮上し、新たな太陽が生まれ、「バルドル」もよみがえった。「ヴィダル」など数名の神は生き残り、アースガルドの跡地に住まいを建て直した。また男女1組の人間が森の中で生きのび、彼らの子孫が地を満たしたのだという。

主神までも巨人族との戦いで死んでしまうとは、彼らの祖先が何度も滅亡の危機に面したことの証しではないかと思われます。
またこの戦いで勇敢に戦う戦士たちの姿が描かれており、この民族の闘争圧力の高さ、厳格な規律などは、後の中世の騎士道の原型となったのではないでしょうか。
■北欧神話の女神
北欧神話には女神や性に関する記述があまり見られませんが、そのなかでもよく目にする女神の代表格は「フレイヤ」です。
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フレイヤは愛と美の女神とされ、豊穣神フレイの妹に当ります。
ちなみに英語のFriday(金曜日)とは、フレイヤの日の意味です。
ドイツ語のフラウ(女主人)という語もフレイヤを語源としています。

彼女はあらゆる女神の中で最も美しいと讃えられ、巨人族はしばしば彼女を手に入れようと神々との間で争いを引き起こしました。
愛と美の女神というだけあって、アフロディーテ同様、彼女も性にたいしてだらしない点がありました。たとえば、ブリーシンガメンという神をも魅了する炎の首飾りを手に入れるために、その制作者である4人の醜い小人たちと一夜を共にしたり、兄フレイとの近親相姦も日常的に行われていたのです。
http://www.asahi-net.or.jp/~cs7t-ftm/fantasy/freyja.htmより引用)

狩猟民族であったゲルマン人も、元は集団内の近親相姦も普通にあったことが伺えます。
また、下記からは母系性であったことが伺えます。

北欧の未開部族の間では、女性が財産の所有者であり、氏族の長、宗教上の指導者であった。ローマの著作者たちは、北方諸国を、「女王」Kvaensに統治されている「女性の国」と呼んだ[29]。先史時代のアイルランドの女王は古い書物で言及されているが、女王の夫たちは名前を記されていない。ロンバルディア人は、彼らの祖先は、夫を持たなかった原初の処女神であるガンバラから出ていると主張した。異教時代のブリテン島とスカンジナヴィアでは、子どもたちは、父親ではなく、母親の名を名乗った。古いドイツの記録は、人々を母親の名のみで呼んでいる。(「Motherhood(母性)」より引用)

戦士である男達は、戦いで命を落とす者も多く、必然的に子供は母親の元で育てられることになり、母系性が残り続けたものと思われます。
強い外圧による闘争性の高さと同時に、男達を叱咤激励する気丈な女たちの様子は、後世ローマ時代の歴史家タキトゥスの「ゲルマニア」にも書かれており、氏族の長、宗教上の指導者が女であったことの名残ではないでしょうか。
■まとめ
・なんといっても北欧神話の最大の特徴は滅亡がテーマであること。
・その他、英雄伝説や箴言集によって構成されており、自我の固まり・自己正当化の神話とは大きく異なる。
・北欧神話の神々は、略奪部族に見られるような、部族の守護神ではない。つまり神話は、部族→統一国家の為の共認統合の道具としては使われていない。
・神話が作られた時期は、紀元前1000年以前。
・しかし、略奪闘争はすでに始まっていた時代であり、彼らの祖先はその戦いに敗れ、はじき出されて北方に追いやられたものと考えられる。しかし僻地ゆえに集団崩壊にまでは至らず、それ故集団を維持していた。
それらから推測すると、外敵圧力を受け続け文字通り滅亡の危機に晒され続けた部族の、存続を図るための戒めの神話なのではないでしょうか。

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