2012年07月26日
シリーズ【共同体の原点(集団)を追求する】9 ~母子関係と弱オス集団~
前回は、哺乳類に繋がる~始原哺乳類の獲得機能~を扱いました。
胎生を獲得したと言われている エオマイア 以降、白亜紀末の大絶滅 を経て、新生代ではローラシア獣類,真山鼠獣類,アフリカ獣類と、哺乳類は多様多種の適応放散を遂げました。
今回は、現代も存続している草食哺乳類と肉食哺乳類を通して、いかに集団化していったかを分析していきたいと思います
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大適応放散した哺乳類(仮説)
新生代は、超大陸パンゲアが分かれ、大陸がぶつかり大山脈形成。初期は温暖だったが、中期から寒冷化し後期には氷河時代を迎えました。寒冷化→乾燥化により森林は後退し、地上生物にとっては外圧が高い状況であったと言えます。また、原始的な裸子植物は姿を消し、被子植物が主流となっていきました。
このような状況の中で、森林の中で進化してきた原始哺乳類は、適応せざるを得ない外圧に晒されました。白亜紀末の大絶滅(恐竜含めて70%の種が絶滅)後、寒冷化とあいまって、餌となる種そのものが減っていることから、被子植物を食料にする必要に迫られたと推測できます。
被子植物はセルロースを含んでおり、食料としては非常に消化しにくい植物ですが、現代の草食哺乳類…ウマやウシなどは、それらを消化・吸収できるよう体内器官を進化させています。
それまで食料とならなかった被子植物を食料とした草食哺乳類が一気に適応放散し、その後、草食哺乳類を食料とする肉食哺乳類が続いて適応放散したと考えられます。
草食・肉食哺乳類の集団形成
寒冷化→乾燥化していることから、被子植物を中心とした草地も、季節,気候によって繁殖する地域が限られていたはずです。よって、草食哺乳類は、生き延びるために必要な草地や水地を求めて、転々と移動する必要があります。一方で、地上には敵となる肉食哺乳類もいるため、集団で移動することになります。
シマウマは、体を縞状にし、かつ集団で=塊でいることで、色盲のライオンは認識できないそうです。(ただし、群れからはぐれた一匹は認識でき、捕食の対象となるそうです。)また、幾つもの集団が大集団で移動している際、リカオンやハイエナなどに追尾された場合は、最後尾に群れの首雄が集まり、撃退行動をとることがあります。
ヌーは、数万から数十万の大集団で移動しますが、群れとして警戒するための「共鳴回路」を持っています。一匹がライオンなどの肉食哺乳類の接近を感知すると、警戒の声を出し、群れ全体に伝わり警戒モードに群れが同調します。また、弱い個体を皆で守ろうとする意識が働いており、時には敢えて足の遅い子どもに合わせて集団全体がスピードを落とすことがあります。(しかし集団全体が、捕食者の接近や食料の不足といったピンチに直面すると、彼らは態度を一変させて弱者を見捨てるそうです ここは、集団存続第一なのですね。。。 )
このように、大集団で移動する草食哺乳類は、集団連携できるまでに進化してきたのです。それに続き、肉食哺乳類もまた、リカオンやハイエナのように集団で連携して狩りをするように進化してきたのではないかと考えられます。
草食・肉食哺乳類の生殖の違い
元々、生物には危機多産の原理があります。種が適応するために、出来る限り多くの子を産み、可能な限り適応可能性を広げるというものです。
ところが、生態系序列の下位にいる草食哺乳類は、それとは逆のベクトルともとれるような進化を遂げています。種の絶対数を確保する事が最大の目標であり、肉食哺乳類から「逃げる」という闘争様式で適応してきたことから、子供を胎内で長く育て、生まれてすぐに立ち上がり歩くことができるようにしました。その結果、1匹だけ産むようになったのです。
生態系序列の上位にいる肉食哺乳類は、一度に多くの子供を生みます。その代わり、外敵圧力がかからない上位にいることから、メスを巡るオスの争いを(種内部での淘汰適応を)激化させ、常に一番強いオスだけが繁殖行動を許されるという生殖様式に進化しました。(ライオンは、オスが入れ替わった場合、以前の子供は殺してしまうという行動をとります)
一方、草食哺乳類は、ボスのオス以外もある程度まで繁殖行動が許されているようです。
母子関係と弱オス集団
哺乳類には、内雌外雄の原理があります。
哺乳類は、一般に内雌外雄の集団編成を取っているが、これは外敵には闘争存在たるオスが対応し、その集団(オスたち)に守られて生殖存在たるメスと子供が存在するという、外圧に対する二段編成の構造(=同心円の構造)である。(るいネット)
草食・肉食共通して、集団は母子関係=母系で貫かれています。よって、オスはある程度成長すると、母子関係を中心とした家族的集団を出て、その外側で暮らすようになります。必ず、集団=種を存続させるための「生殖集団=母子関係=母系」が常に中心にあります。
一方、同じく共通して、出て行ったオス(あるいはボス以外のオス)による「弱オス集団」が形成されます。集団の一番外側で外圧に対峙し、闘争経験を積んでいくことで成長し、度々首雄に挑戦していきます。こうして、草食・肉食哺乳類の集団は外圧に適応すると同時に、集団内でもオス同士が圧力を生み出す構造となっているのです。
現代社会において、人類は必ずしも母系集団とはなっていません。種の存続を担っている母子関係が軽視されている。虐待問題などを考えれば、全く間逆の方向に向いています。人類は、哺乳類の集団形成に学ぶところが大いにあると感じました。
次回は、哺乳類の集団形成に大きく寄与していると考えられる「匂い」について、深く深~く追求します お楽しみに
- posted by corona at : 2012年07月26日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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