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2019年11月03日

汗(腺)に関する基礎事実

●「先哺乳類~哺乳類の汗腺について」
爬虫類にはなく、哺乳類の特徴であると言われる汗腺には、アポクリン腺とエクリン腺の2系統があります。大きくはフェロモンを出す汗腺と水分を出す汗腺です。

アポクリン腺と呼ばれる汗腺は、体臭腺(水分を殆ど出さないフェロモン系=脂質・たんぱく質・ホルモン等の分泌)で、こちらの汗腺の獲得が進化上先行しています。現在の多くの哺乳類でも、ほぼ全身にこのアポクリン腺が分布しており、哺乳類の乳腺はこのアポクリン腺から派生したものであると考えられています。

したがって、先哺乳類(単弓類)の獲得した汗腺はこのアポクリン腺系統で間違いないと思われます。しかし意外にもこのアポクリン汗腺は、思ったほど体温調節機能(体温を下げる)は持っておらず、基本的には体温とはほぼ関係なく作用する体臭腺で、臭いを出す時の二義的な作用で微少の体温調節(体温を下げる事)が可能といった程度のものです。

(※ヒトのアポクリン腺は個人差があり現在、腋や陰毛部等に一部残存しているのみですが、腋のアポクリン腺存在部にまれに乳腺組織である「副乳」があることが知られています。またこのアポクリン腺は女性の乳輪部にも存在しているようです。)

片や、エクリン腺は体温調節の(体温を下げる)為の発汗作用(いわゆる汗をかく機能・99%水分)を持つ汗腺です。しかし、これも意外な事に、全身にこのエクリン腺を持つ哺乳類はごくまれなのです。あまり知られていませんが、この汗腺を全身に持つのは人や霊長類など一部の高等(といわれる)動物に限られており、哺乳類のほとんどはこのエクリン腺を持たなかったり、体のごく一部にしかなかったりします。(例えばネコなどが汗をかくのは四肢の裏のみで、犬や狼、げっ歯類などは事実上体表にエクリン汗腺が存在しません。)

また、このエクリン汗腺の発達は脳の発達と連関が深いとも言われ、脳の発達と、それに伴う脳活動の大量発熱→冷却の必要から体温調節機能(ラジエーター)として、このエクリン汗腺を発達させたとの見方もあるようです。猿もほとんどがこのエクリン汗腺をあまり持たず、たくさん持っているのは一部の霊長類、その中でも特に人類が、全身にあったアポクリン腺をこのエクリン腺に置き換えて著しく発達させているからです。

●「汗をかくことができる人間は動物の中で最も長距離を早く走れる~持久狩猟能力の獲得」
ほとんどの動物は汗をかかない。厳密には、犬は足の裏に汗をかくが、人間のように体全体から玉のような汗が出ることはない。動物の中で唯一人間並みに汗をかくのは馬だけ。
人間が汗をかくのは気化熱により体温を下げ、体温を調節するため。それに対して、ほとんどの動物は汗をかかないため、汗による体温調節ができない。動物は呼吸によってしか体温調節ができないが、呼吸による体温調節は、体全身からの発汗によって行う体温調節と比べる効率が悪い。そのため、動物は長時間運動をすると、発生した熱をコントロールすることができなくなり動きが取れなくなる。それに対して、発汗による体温調節ができる人間は、動物よりも長時間の運動が可能。実際、この能力を活かして、太古の昔には持久狩猟が行われ、現在でもアフリカ南部のサン族は持久狩猟をしている。持久狩猟とは、獲物が体温調節ができなくなって動けなくなるまで、何十キロも追いかけるという持久力頼みの狩猟方法。

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