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2019年5月24日

2019年05月24日

教科書には載らない近代科学者たちの自然支配の言葉

西洋科学が自然を征服・支配することを目的としていたとする証拠がある。
『十六世紀文化革命』「第10章-15.近代科学の攻撃的性質」(山本義隆著 みすず書房)によると、17~18世紀の科学者たちは自然を征服・支配しようとして、次のような言葉をその著作に記しているとのことである。
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【フランシス・ベーコン】1561~1626
「自然の秘密もまた、技術によって苦しめられるとき、よりいっそう、その正体を現す」
「自然研究の目的は、行動により自然を征服することにある」
「技術と学問は自然に対する支配権を人間に与える」
「自然は自由を失い、奴隷となり、束縛を受けなければならない」
「人間の知恵と力が一つになったとき、自然は切り裂かれ、機械と人間の手によって、それまでの姿をくずされ、押しつぶされ、型にはめこまれるだろう」

【ガリレオ】1564~1642
自然支配魔術のパトロンであるメディチ家の庇護を受けて木星の衛星を発見。メディチ星と名付けて「メディチ殿下のご庇護により私が発見したのですから、メディチ星と名付けたとしても、誰が咎めましょう」とコジモ・メディチに捧げる。
また、自然界には存在しない真空中での落下という理想化状態に人工的に近づけて、落下運動の実験を行う。
しかし、「落下運動の加速度の原因が何であるのかについて研究することは適当ではない。そのことで得られるものはわずかしかない。私が求めているのは、その原因は何であれ、加速運動の性質を研究し説明することである」と、なぜ落下するのか?という原因追求は捨象。
また「自然という書物は数学の言語で書かれており、数学的手段がなければ人間の力ではその言葉を理解できない」と書き、落下運動の数学的法則性を読み取ることに課題を限定。

【デカルト】1596~1650
「私たちは自然の主人公で所有者のようになることができる」

【ロバート・ボイル】1626~1691
「私は元素の混合によって生ずるといわれている諸物体そのものを試験し、それらを拷問にかけてその構成原質を白状させるために忍耐強く努力した」

【ジョセフ・グランヴィル】1636~1680
「自然は、より穏やかな挑発では明かすことのできないその秘められた部分を、巧みに操られた火の暴力によって自白する」

【ニュートン】1642~1727
ニュートンは自然支配魔術を研究していた。彼は自然支配魔術の「隠れた力=遠隔力」である万有引力を法則化したが、万有引力が存在する原因を「非物体的で生命ある知性をもった偏在する存在者=神」と書いて、本質追求は棚上げにした。
※ニュートンの錬金術研究書を購入した20世紀の経済学者のケインズは、「ニュートンは理性の時代の最初の人ではなく、最後の魔術師だ」と発言している。
※ニュートンは世渡り上手だったようで、晩年は造幣局長官に就任している。

【カント】1724~1804
自然界には存在しない真空中での落下という理想化状態に人工的に近づけようとしたガリレオの実験に対して、その意義をカントは次のように述べている。
「理性は一定不変の法則に従う理性判断の諸原理を携えて先導し、自然を強要して自分の問いに答えさせねばならない。そのことを自然科学者が知った」
「それはもちろん自然から教えられるためであるが、しかしその場合に、理性は生徒の資格ではなく本式の裁判官の資格を帯びるのである」

【ミシェル・シュヴァリエ】1806~1879
「弱く貧弱な存在にすぎない人間は、機械の助けを借りて、この無限の地球上に手を広げ、大河の本流を、荒れ狂う風を、海の満ち干をわがものとする。地球の脇においたら一つの原子にすぎない人間が、その地球を従順に働く召使にしてしまう」
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このように近代の科学者たちは、自然を「実験」という拷問にかけることによって、その仕組みを白状させ、征服しようとしたのである。
自然に対する攻撃と征服。それが近代科学が当初から目指してきたものである。それが近代科学に刻印されている以上、原爆・原発をはじめとして、近代科学がトコトン自然を破壊し続けてきたのも必然である。

ところが、こうした科学者たちの言葉が学校の教科書に載ることはない。
以下は、高校世界史の教科書『詳説世界史』(山川出版2006年版)の「科学革命と近代的世界観」についての記述である。
「17世紀のヨーロッパは科学革命の時代とよばれるほど、近代的合理主義の思想や学問が本格的に確立されて、自然界の研究が進歩した。天体運動の観察から出発して万有引力の法則をとなえ、近代物理学の基礎をうちたてたニュートンは、この時期を代表する自然科学者である。また、事実の観察を重んじ、そこから一般法則をみちびく帰納法による経験論を説いたイギリスのフランシス=ベーコン、数学的な論証法をもちいる演繹法による合理論をうちたてたフランスのデカルトらが、近代哲学への道をひらき、その後も、新しい世界観を確立する努力が続いた。」
「イギリスの経験論と大陸の合理論は、18世紀末のドイツの哲学者カントによって総合された。カントは、人間の認識能力に根本的な反省を加えて、ドイツ観念論を確立した。」

近代科学者・哲学者たちが残した言葉と見比べてみよう。この教科書の記述は、近代科学の正体を隠すための騙しではないか。

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2019年05月24日

ルネサンスの自然支配魔術からニュートンの万有引力へ

自然を支配するためのルネサンス自然魔術に、実験的論証と数学的推論が加わって、ニュートンの万有引力が生まれ、近代物理学が始まったという説を紹介する。山本義隆著『磁力と重力の発見2(ルネサンス)』の説である。

●西洋において魔術は古代以来廃れたことはないが、中世キリスト教社会では魔術は異端として抑圧されていた。一方、同じ超自然的現象でも、教会に都合の良い聖人(キリストやモーセ)の行為は「奇蹟」として肯定された。

●ルネサンス期(15世紀後半)に魔術が復活する。
印刷書籍の登場、新興ブルジョアジーの台頭によってキリスト教のイデオロギー支配が揺らぎ始める。商人や職人や役人といった新興の都市市民が力を獲得し、現世利益の追求へ向かった。それがルネサンスの原動力となり、ルネサンスの人文主義者は古代ローマの共和制やギリシャの都市国家の市民生活に生の理想を求め、人間中心主義が登場する。
この人間中心主義が魔術を復権させる。
ルネサンスの想念は「人間は一切を認識し万物に君臨しうる、自然の主人にして支配者になりうる」いうものであり、それは中世における神と人間の関係を根本的に改める。神には許されていた奇蹟を人間が行使することも許される。それはまさしく魔術である。
15世紀後半に魔術思想を復権させた中心はフィレンツェのプラトン・アカデミーであり、それは新興財閥メディチ家の始祖コジモ・デ・メディチの庇護で形成された私的なサークルである。メディチが魔術を庇護したのは、魔術の力で自然と人間社会を支配したいという欲望(権力的野心)に突き動かされていたからであろう。
この人間中心的な魔術思想は都市市民層の現世利益の追求意識に訴えかけ、西欧の知識人にも急速に広がってゆく。

●中世魔術との違い(自然に内在する力を発見し使役する自然魔術)
15世紀後半に復活したルネサンス魔術は、悪魔や天使の恣意により魔術や奇蹟が生じるという中世の魔術(ダイモン魔術)と区別され、自然魔術と呼ばれた。それは超自然的なものではなく、自然の内在する「隠れた力」の法則を発見し使役するものである。
自然魔術の世界像は有機体的世界像、すなわち、天上世界の事物と地上世界の事物が宇宙の精気を介して相互に影響をおよぼしあい交感しあっている巨大な有機的統一体であるというものである。人間は地上における(磁石によって代表される)諸物体のあいだの共感と反感の関係を組み合わせてその力を利用し、天の影響を人間に有利な方向に向けさせることさえ可能となる。それがルネサンスの自然魔術であった。それは、共感と反感の関係を読み取り操作する術であり、けっして超自然的なものではなかった。従って、それなりに経験的で技術的で実践的なものに変わっていった。
とりわけ、磁力の力はまさに「隠れた力」の典型であり、「自然魔術」における恰好の研究対象となった。

●観察や実験、数学的推論という手法を生み出した16世紀自然魔術
自然を学ぶことで人間が宇宙の力・自然のエネルギーを使役しうるという信念が公然と語られるようになった。その後の科学技術の推進力の一つは、このルネサンスの魔術思想に発しているが、ここから直線的に近代科学が生まれたわけではない。15世紀の魔術思想家たちは古代信仰・文章信仰に捉われており、実際に磁石で実験してはいない。その限界を越えたのは16世紀の思想家である。 

15世紀の魔術は宗教的で思弁的で言葉の世界に閉じこもる傾向にあったが、16世紀の魔術は経験的で数学的でかつ実践的な性格を有し、さらに職人たちによって担われてきた技術と結びつく傾向を示している。そして、帰納的観察や実験という近代実証科学の方法は、「隠れた力」を操作する「自然魔術」の方法として、17世紀科学革命にさきがけて16世紀に登場した。
このようにして16世紀後半には魔術思想は、実験的方法と数学的推論に基づき、技術的応用を目的とした「自然科学の前近代的形態」へと変貌する。それは、文献魔術から実験魔術への転換である。とりわけ磁力と静電気力は、魔術思想の根拠にある「隠れた力」の典型と見られていたがゆえに、経験的で実験的な自然魔術の格好のテーマであった。

●遠隔力→万有引力の土台となった魔術思想
近代科学に至るには、実験的論証と数学的推論の二つの方法の確立とともに、遠隔作用としての万有引力概念の獲得が必要であったが、数学的推論も実験的方法も魔術に対立するものではなかった。むしろ、自然魔術は数学的で技術的な性格を帯びるとともに、経験的観察と実験的方法を生み出していった。さらに、魔術思想の内に機械論や原子論の還元主義が密かに導入されることによって、力に対する合理的説明の要求も生じてくる。とりわけ、船乗りや職人や軍人たちによって観測の対象とされてきた磁力は、他方では魔術師たちの研究対象とされ、遠隔作用としての万有引力概念を生み出す土台となった。

デッラ・ポルタの『自然魔術』は、磁力の定量的測定の可能性を探ることで力の作用圏という概念を語り、数学的関数で表される力という近代物理学における力概念の理解への端緒を開いた。のみならず、磁石をめぐる古代からの言い伝えを実験により否定し、自然認識に対する中世的な秘匿体質から脱皮し、魔術の脱神秘化・大衆化を計ったことにおいて、『自然魔術』は近代科学を準備するものであった。デッラ・ポルタにより、ルネサンスの魔術思想は近代の科学技術思想にあと一歩の所に到達した。
自然界は諸事物とその相互作用からなり、人は観察を通してその力を知ることができるという魔術思想は、ケプラーやニュートンによる近代物理学のキー概念ともいうべき万有引力概念を準備するものとなったのである。

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