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2019年5月28日

2019年05月28日

精子半減をどうする!?② 放置状態にある日本の環境ホルモン規制

◆環境ホルモン問題は終わっていない

『奪われし未来』が翻訳出版された1997年を機に、環境ホルモン問題は、大きな社会的関心を集めた。
日本でも、環境ホルモンの調査が行われたが、当時、明確な問題の因果関係が明らかにならなかった。環境省は、「一部の物質は魚類への影響が認められたが、人間への明らかな影響は認められなかった」との試験結果の報告を出し、2005年に環境ホルモンリストを廃止し、研究計画を大幅に縮小した。その結果として「環境ホルモンから騒ぎ論」として、業界寄りの学者やジャーナリストによって問題がないように報じられ、一件落着したようになっている。

そのため、我が国の環境ホルモン問題は、世界の研究から遅れてゆくことになった。現在では、WHO も環境ホルモンは人間も含むすべての生物に対して「世界的な脅威」であることを指摘している。新しい毒性である環境ホルモンに対して、環境省の試験は不十分であり、単に1つの結果に過ぎなかったのである。これまでとは全く異なる新しい毒性に対しては、新しい試験方法の開発が不可欠であったと言える。これをせずに、環境ホルモン問題は、1つの結果だけによって結論を出し、影響が出なかったので「環境ホルモンは大した問題ではない」、「安全だ」などとしてきたが、とんでもない間違いである。

環境ホルモンの毒性の特殊性は、それは直接標的になる細胞を攻撃するのではなく、間違った情報によって細胞に誤作動を起こさせることである。環境ホルモンは、生物が体内で細胞同士の情報伝達に使うホルモンをかく乱するという従来の毒物と全く異なる問題を起こすのである。
各細胞の受容体には、特定のホルモンが結合して遺伝子に働き掛け、必要な活動を行わせる。ホルモンは50種類以上存在し、それぞれのホルモンは、特定の受容体だけと結合するようになっている。ところが環境ホルモンは、ニセのホルモン様物質であるにもかかわらず、本来のホルモンになり代わって細胞の受容体と結合し、間違った情報を細胞に伝えるのである。

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◆安全な量が決められない ⇒ EUでは使用禁止に、日本では規制放置

胎児期は、環境ホルモンに対して、感受性が高いことから暴露すると取り返しのつかない影響を受ける。この視点から、EU では農薬や殺虫剤で環境ホルモン作用が疑われるものは、原則使用禁止にした。なぜなら環境ホルモンは、これ以下の濃度なら安全であるという「閾値」が決められないと判断したからである。
当初ビスフェノールA に関しては、一日摂取許容量(TDI)が決められた。しかし、その後の研究でTDI 以下の低容量でも、実験動物の母親が摂取した場合、子どもに脳神経の発達障害や肥満、生殖異常、成長後の乳がんの増加などの影響が出る、という研究結果が発表されたことから、使用禁止となったのである。

一方日本では、放置状態にあることから至る所に環境ホルモンを含むものがあるといえる。食べ物、医薬品、化粧品、パーソナルケア用品などが多数使用されている。

【食べ物】には、水銀が蓄積した魚、水道水の一部には鉛管の鉛が、さらに一部の米にはカドミウムなどの重金属が残留し、魚・肉・乳製品の脂肪分にはPCB・ダイオキシン・有機塩素系農薬が蓄積している。さらに野菜や果物には有機リン系農薬やネオニコチノイド系農薬が残留し、缶詰の内側コーティングやポリカーボネート製食器にはビスフェノールA などが、いまだに使用されている。

【医薬品】でも鎮痛剤のアセトアミノフェンなど、水虫治療薬のアゾール系真菌剤、栄養ドリンクのパラベンがある。

【化粧品・パーソナルケア用品】など肌に直接使用するものとして、薬用石けんなどの殺菌剤であるトリクロサン、香料に合成ムスク、化粧品に使用されているパラベン(防腐剤)、日焼け止めに使われるベンゾフェノン、フタル酸エステル類(香料)が問題である。

【建材・家具・オフィス用品】にも環境ホルモンが多種類存在する。塩化ビニルなどのプラスチック製品の可塑剤としてフタル酸エステル類、ポリカーボネート製品がある。またカーテン、カーペットなどには防炎用として臭素系難燃剤が使われている。家庭用の防虫剤としてピレスロイド系農薬は、蚊取り線香や電気香取、殺虫スプレー、防虫シートにも使われている。

※参考 久留米大学比較文化研究所・河内俊英氏『環境ホルモン最新事情』(リンク

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