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2020年2月23日

2020年02月23日

7万年前に起きた現生人類の脳の突然変異説2~前頭前野統合と言葉の再帰構造を習得できるのは幼児期まで

7万年前に突然、人類が現代のような想像力と言語能力を獲得した要因は何か?

『WIRED』「人類の文化的躍進のきっかけは、7万年前に起きた脳の突然変異だった」2019.09.01の要約。

●言葉の再帰構造を習得できるのは子どものうちだけ
誰でも生涯をかけて語彙を増やし文法を習得することができるが、メンタル統合能力だけは、5歳くらいまでの幼児期に再帰構造のある言葉に触れておかないと、大人になってもこれを習得することはできないという。

13歳までいっさい言語に触れることのなかった少女をはじめとした10人の子どもたちは、何年もの言語トレーニングを経たあとでも、英語の「in」「on」「at」などの空間的前置詞、動詞の時制、および文章の再帰構造を完全に理解することはなかった。また、途上国で、再帰構造のある手話に触れる機会のなかった聴覚障害のある子どもたちも同様で、あとになって補聴器をつけたり徹底した言語療法を受けたりしても、「緑の箱を青い箱に入れる」などの簡単な指示をこなすことができないという。

再帰言語とメンタル統合能力は切っても切り離せない関係にある。こういった指示を頭のなかで想像して理解するには、5歳までに再帰言語に晒されることで鍛えられるメンタル統合能力が不可欠である。
そして、再帰言語とメンタル統合能力が、現生人類の文化的創造力に大きく貢献したと、ヴィシェドスキーは言う。

●そして、これが人類全体に広まるには、2つの障壁がある。
【1】メンタル統合能力を習得できる期間が長くなければならない。現在の子どもは5歳前後まで言葉の再帰構造の習得が可能だが、これがいまだ言葉があやふやな2歳までとなると無理がある。このことから、脳の前頭前皮質の成熟を遅らせる突然変異があったという。

【2】脳の構造がメンタル統合に適していたとしても、親が子どもに再帰言語を教えられなければ、子どもは習得できない。従って、前頭前皮質の突然変異を持ったふたり以上の小さな子どもたちが、互いに会話しながら長い時間を過ごし、再帰言語を発明したはずである。

このような新しい再帰言語の自然発生は、1970~80年代にニカラグアの聴覚障害がある子どもたちのなかで実際に観察されている。ニカラグア手話は、かつて家庭内で必要最低限のジェスチャーでしかコミュニケーションがとれなかった子どもたちが施設に集められ、そのなかで独自に生み出された言語だ。新たに発明された手話は年少者へと受け継がれて年月とともに複雑化し、ついには数世代で再帰構造を含む洗練された言語へと進化を遂げたのである。

ヴィシェドスキーは進化の数理モデルによって、前頭前皮質遅延の突然変異とメンタル統合獲得が、ほぼ同時期に起こり、人類はほんの数世代でこのふたつの障壁を乗り越えたとしている。

前頭前野の突然変異をもつ子どもたちは、互いに会話し合うなかで空間的前置詞や言語の再帰要素を発明し、再帰的な会話によって発達するメンタル統合能力を手に入れた。これにより、記憶にある対象を組み合わせてまったく新しい何かを脳で想像できるようになった。また、子孫に再帰構造のある言葉を教えたはずである。こうして、7万年前にホモサピエンスはメンタル統合と再帰言語を獲得したと、ヴィシェドスキーは結論づけている。
「メンタル統合のプロセスで可能となった脳内で対象物の素早い並置ができる新たな能力は技術進歩の急激な加速をもたらした。どんな計画でも頭のなかでシミュレートする能力と、それらを仲間に伝達するという能力を備えた人間は、一気に支配的な種になる準備が整った」

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2020年02月23日

7万年前に起きた現生人類の脳の突然変異説1~前頭前野統合と言葉の再帰構造

洞窟壁画や道具の発達といった人類の文化的・技術的進化をもたらしたのは、7万年前の脳の突然変異だったとする説が提起されている。

『WIRED』「人類の文化的躍進のきっかけは、7万年前に起きた脳の突然変異だった」2019.09.01の要約。

60万年前には現代のような音声器官が備わっていたとされている。また、チンパンジーの音声器官に20~100の異なる発声があることから、人類の祖先が主要なコミュニケーションに使用していた単語の数は、現在とさほど変わらなかったと考えられている。
にもかかわらず、洞窟壁画、住居の建設、副葬品を伴う埋葬、骨製の針等の道具の専門化など、現生人類の文化的創造性を示すものは、7万年前よりも以前には発見されていない。

7万年前に突然、人類が現代のような想像力と言語能力を獲得したのはなぜか?

ボストン大学の神経学者アンドレイ・ヴィシェドスキー博士は、それを脳の前頭前野の発達を遅らせる突然変異だとする。
ヒトの前頭前野は霊長類のなかでも極めて発達が遅く、20代半ばから30歳くらいまで発達し続ける。ヴィシェドスキーは、前頭前野の脳障害や脳の成長過程で直面する言語的理解の発達を挙げ、前頭前野による知覚世界と内なる思考の統合が想像力獲得に不可欠だったとしている。

 ●外側前頭前野と言語の関係
ヴィシェドスキーによると、脳の外側前頭前野には「記憶にあるもの」と単語や文法を統合し、まったく新しいものを頭のなかで想像することを可能にする機能がある。

外側前頭前野に損傷がある場合、人は物と物の関係や、相対性を表す文章が理解できなくなるという。例えば「犬は賢い」という単純な文章は理解できても、「犬は猫よりも賢い」となると、どちらが賢いのかわからなくなる。「円の上に三角を描く」「春は夏の前に来る」なども、物事の上下関係や前後関係の理解がなくなってしまう。

このように、記憶のなかの複数の単語を意味のあるメンタルイメージとして合成するプロセスは、「前頭前野統合」または「メンタル統合」と呼ばれている。

 例えば、『犬がわたしの友達を噛んだ』『わたしの友達が犬を噛んだ』という2つの文がある。
使われている単語と文法がまったく同じ場合、単語か文法かのどちらかを使用して、意味の違いを区別することは不可能である。“心の眼”で「犬」と「友達」の関係をイメージできたとき、これらの文章は初めて特定の意味をもつ。「メンタル統合」とは、複数の単語とそれらの関係を脳内で統合し、想像することを可能にするプロセスなのである。

 ●メンタル統合能力の重要性
文章のなかでも「入れ子構造(または再帰構造)」になっているものの理解には、メンタル統合能力が不可欠である。
言葉の再帰構造が理解できれば、例えば「父がかつて溺愛していた猫」→「母は『父がかつて溺愛していた猫』にそっくりな猫を拾った」「『母は“父がかつて溺愛していた猫”にそっくりな猫を拾った』と兄が言っていた」といった具合に、次々に文をつなげてイメージを膨らませることが可能になる。

単語の柔軟な組み合わせと入れ子構造は、すべてのヒト言語に特徴的な機能であると、ヴィシェドスキーは言う。
しかし、複数の単語が複雑に組み合わさった入れ子構造の文章が理解できるかどうかは、受け手の前頭前野外側での統合能力にかかっている。

そして、それを可能にするメンタル統合能力の発達には、非常に重要な時期がある。それは5歳までの幼児期である。

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