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2009年03月22日

「初期人類の石器」と「チンパンジーの道具」

『チンパンジーの知能vol.1』『チンパンジーの知能vol.2』
で、yidakiさんが チンパンジーの知能について詳しく紹介してくれました。どうもです。

以前、チンパンジーが道具(アリ釣り棒)を使う映像を見たことがあるのですが、その時、人の道具の使い方となにか違うな、という感想を持ちました。チンパンジーの道具の使い方は、粗雑というか、場当たり的というか・・・一方、オルドヴァイ文化の石器は確かに単純で粗雑ですが、その石器から受ける印象はチンパンジーの道具と何かが違うような気がします。

石器(オルドヴァイ文化)を使った初期人類は、道具を使うチンパンジーと同じ程度の知能だったのか?それとも違いがあるのか?

それが、今回のテーマです。

まず、最古の石器文化といわれるオルドヴァイ文化の石器とはどんなものなのか?を確認、続いてチンパンジーの道具の作り方・使い方の特徴を再整理し、石器を作り出した人類の知能に迫ってみます。

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最古の石器は、いつ、どこで、誰が、作ったのか?
<オルドヴァイ文化の石器>
090321-01.jpg

タンザニアのオルドバイ渓谷ではじめてみつかったことから、オルドバイ文化と呼ばれる。確実に年代を推定された最古の石器は、アファール地方のハダールにあるゴナで発見された約250万年前の石器である。この石器を作ったのは、ホモ・ハビリスが最も有力な候補として考えられている。

どうやって石器を作ったのか?
この約250万年前に生み出された石器をつくるには、元なる石を石槌(ハンマー)で加工することが必要となる。古代の河床から火山礫や大礫を運び込んで材料にした。刃のとがった「剥片」、剥片を削ったあとの切子面のついた「石核」、石核を叩くのに使われた石槌(ハンマー)が残っていた。いくつかの遺跡には石器をつくる目的で、何キロという遠方から運んだと思われる原材料がみつかっている。

<礫石器の作り方>
img105-3.jpg

剥片を削ったあとの切子面を安定的に手に入れるには、石核の端に斜めの角度で衝撃を与えればいい、と彼らは間違いなく理解していた。このように剥片が割れたあと、衝撃面に隣り合う内側に、「衝撃球」というはっきりとしたふくらみがあらわれる。ちなみに、考古学者はこのふくらみを頼りに、人間がつくった剥片と自然に砕けた石片を区分する。

石器をどう使ったのか?
「剥片」「石核」とも道具として使ったようだ。石器で肉を解体する実験をしたところ、刃が長く握る面の広い、重い石核のほうが、大型の死体を分解したり、骨髄を得るために骨を砕いたりしやすい。しかし、死体を切り、筋肉のの塊を取り除くには、新しい溶岩や石英の剥片のほうが役に立つようだ。

石器を何のために使ったのか?
ゴナ、クービ・フォラ、オルドヴァイ他の遺跡では、剥片と石核がクラスター状に蓄積されている。これが世界最古とされる考古学遺跡の特徴である。土壌の条件がよければ、この石器群に動物骨片が保存される。

この動物は一般にレイヨウ、シマウマ、野ブタなどで、チンパンジーが食べていたものよりはるかに大きい。骨に切断したり叩いたりしたしるしがあることからみて、オルドヴァイの人たちはここで骨を砕いたのだと思われる。

動物骨片には、肉食動物によって損壊した標本も多いことから、肉食動物があらかた食べつくしたあとの死体をあさっていたと考える方が妥当だと思われる。


オルドヴァイ文化の石器は、確かに見かけ上は単純で粗雑です。ですが、『初期人類は骨を食べていた!』で紹介されたように落ちている石そのままを使う段階から、石器へと加工できる段階への変化は、大幅な知能の進化があったのだと思われます。

では、このオルドヴァイ文化の石器は、チンパンジーが作る道具と同じ程度のものなか?それとも違うのか?


チンパンジーの道具とは?
動物のなかには慎重に選んだ自然の道具を使うものがいるし、チンパンジーは望みの用途に合わせて道具を少し手直しさえする。しかし、意図的に石に手をくわえたチンパンジーが観察されたことはなく、実験的な条件下でさえ、一個の石をべつの石でたたいて鋭い刃を作ろうとしたチンパンジーはいない。

チンパンジーは道具を使うとき、見通しを立てることはないようだ。彼らはどちらかといえば、必要に迫られて道具を探し出す。それも遠くにいかずに、手近なところで必要な材料を探そうとする。

木の葉をナプキンにして液体をぬぐいとったり、小枝をおってシロアリを釣ったりするが、道具は常に直接食物を手に入れるためだけに使われる。また、自らの手を使って加工できるものしか道具にすることができず、その使い方は、手の延長としての道具使用に留まっている。

「初期人類の石器」と「チンパンジーの道具」の特徴
◇チンパンジーの道具

  • 直接身体(手足)を使って加工できるモノ(例えば、木の枝)で道具をつくる
  • 道具を直接食料を手に入れるためだけに使用する
  • 道具つくりは場当たり的、現場主義

◇初期人類の石器

  • 石槌を使うことで、身体(手足)では形を変えられない硬い石でも道具にすることができる(石の特性を利用した道具加工)
  • まず石器をつくるために石槌=石器をつくる道具を使用する。次に食料を手に入れるために石器を使用する(多段階の道具使用)
  • 道具つくりは計画的と思われる


こうしてみると、「初期人類の石器」と「チンパンジーの道具」は大きく異なっていることが分かります。

チンパンジーの道具使用は、いわば本能機能の延長にある付加機能というようなものです。一方、初期人類の石器使用は、対象の持つ特性を引き出すことで、本能機能の限界を超えた機能の獲得と言えます。

オルドヴァイ文化の石器は確かに見かけは単純で粗雑ですが、それが作られた背景には本能を超えた機能、つまり「観念機能の獲得」という人類にとって大きな進化があったのではないでしょうか。約250万年前、人類は共通祖先から枝分かれしたチンパンジーとは異なる進化の道筋にいたようです。(さいこう)

参考文献
 ・5万年前に人類に何が起きたのか?(リチャード・G・クライン、ブレイク・エドガー著:新書館)
 ・ネアンデルタール人の首飾り(フアン・ルイス・アルスガス著:新評論)
 ・進化の隣人 ヒトとチンパンジー(松沢哲郎著:岩波新書)

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comments

道具を作るためにわざわざ材料を運んできたり、道具を使って道具を作ったりするところが、チンパンジーとは全く違うんですね。確かにそのレベルの行動は、観念機能がないと難しそうです。

  • まりも☆
  • 2009年03月26日 20:21

こんちには、まりも☆ さん。

「道具を使って道具を作る」には、その「道具の持つ特性を引き出す」ことが必要で、それには観念機能が不可欠ではないかと思いっています。

「道具の持つ特性を引き出す」は、道具を人に置き換えて「相手の持つ能力を引き出す」としても意味が通じるます。このように、私たちは物をあたかも人のように思うことができます。それが観念機能の原点でははないでしょうか。

古代の人類も、石に対して、人に対するのと同じように注視し同化を試み、ついに、石の背後に精霊を見た、、、のかも知れません。

  • さいこう
  • 2009年03月28日 22:47
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