2011年10月23日
【男女関係の行き詰まりと可能性】~性の衰弱② <世代を問わず草食化が進んでいる>
こんにちは。
本シリーズも【婚姻動向】編を終え、【性の衰弱】編に入りました。
今回は、【性の衰弱】編第2弾として、草食男子(肉食女子)について扱います。
これまでの記事を紹介します。
1.近年の婚姻動向<非婚・晩婚化>
2.近年の婚姻動向<離婚の増加>
3.近年の婚姻動向<婚活>
4.性の衰弱<セックスレスが止まらない>
前回の記事では「あたりまえになった」セックスレスの実態と原因が分かりましたが、近年になって「草食男子」という言葉が登場し、いよいよセックスも恋愛も含め、性の衰弱現象が鮮明になってきたようです。
どーも「草食男子」というと“頼りない若者”と旧世代の私などはイメージしてしまい、それを追っかける「肉食女子」という構図を思い浮かべてしまいますが、実際はどうなんでしょう。若者に限った話しなのでしょうか?、「草食男子」は本当に頼りないのでしょうか?
主に「草食男子」の実態を見ていきながら、併せて「肉食女子」についても扱ってみます。
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■1.草食男子の実態
◆用語の登場
マスメディア上で「草食系」に関わる用語が使用された最初の例は、2006年10月に、コラムニスト・編集者の深澤真紀氏が『日経ビジネス』のオンライン版で連載している「U35男子マーケティング図鑑の中で「草食男子」と命名されたものであると伝えられています。それからおよそ2年後の2008年に女性ファッション雑誌『non-no』(4月5日発売号)において、深澤の監修の下「草食男子」特集が掲載され大きな反響を得ています。(ウィキペディア)
同様に「肉食女子」も「草食男子」の対語として深澤氏が命名しており、どちらも今でもよく耳にする言葉です。
◆草食男子の定義~生態
深澤氏は「草食男子」を、『恋愛に「縁がない」わけではないのに「積極的」ではない、「肉」欲に淡々とした「草食男子」』と定義しています。
また、大阪府立大学教授の森岡正博氏は「草食系男子とは、心が優しく、男らしさに縛られておらず、恋愛にガツガツせず、傷ついたり傷つけたりすることが苦手な男子のこと」と定義しています。(ウィキペディア)
どちらかといえば、深澤氏が恋愛やセックスに対する特徴としているのに対し、森岡氏はもっと広くその特徴を捉えているようです。
草食男子の登場以降、臆病系男子、乙女男子、仙人系男子など、いろんな呼び名も生まれているようですが、女性が求める最新の男子理想像は「クリーミー系男子」というそうです。
2011年・女性の理想は「クリーミー系男子」!
20代~40代の女性1149名を対象に行ったアンケートによると、
今の女性たちが求めている理想の男子像は「クリーミー系男子」とのことです。(リンク)
クリーミー系男子:可愛い顔立ちで優しいけど、いざというときは男らしく守ってくれる男子。
一方「肉食女子」はといえば、一般的には「おしとやかな女性像とは正反対に、恋愛、セックスに積極的なタイプ」を意味します。
◆意識調査に見る実態
続いて、アンケート調査による草食男子の自覚度について紹介します。
・2009年3月(ウィキペディア)
パートナーエージェント
30代未婚男女400人を対象におこなった調査
「どちらかといえば草食男子」(61%)
「完全に草食男子」 (13%)と、
「自分は草食男子」と思う男性は75%にのぼった。
・2011年2月(リンク)
パートナーエージェント
全国の20代~40代の男女 1,392人(男性707人、女性685人)を対象
「まさに草食男子だと思う」(18.4%)
「草食男子の要素が強い」 (23.1%)
「草食男子の傾向がある」 (30.0%)
「自分は草食男子である、もしくは草食男子の傾向がある」と答えた人は全体の71.5%
「まさに肉食女子だと思う」(6.3%)
「肉食女子の要素が強い」 (9.1%)
「肉食女子の傾向がある」 (22.3%)
「自分は肉食女子である、もしくは肉食女子の傾向がある」と答えた人は全体の37.7%
◆草食男子の評価
次に、草食男子のことを女性がどのように思っているのか、逆に肉食女子のことを男性はどのように思っているのでしょうか。
上記のアンケート調査によると以下のようになっています。
男性女性ともに「なんとも思わない」というのがかなり多く、もはや一般化してきたのでしょうか。
その他の意見では、男性には賛否両論ありますが、女性からすると「頼りない」という回答が圧倒的に多いようです。
“肉食女子”について(男性回答)
・なんとも思わない (43.7%)
・うっとおしい (16.0%)
・頼りになる (15.3%)
・付き合いたい (15.0%)
“草食男子”について(女性回答)
・頼りない (48.0%)
・なんとも思わない (33.3%)
・かわいい (19.8%)
・苛立ちを覚える (16.4%)
一方で、次のような意見もまたあります。(リンク)
>友人や恋人としての草食男子は、女性からの評価が極めて高い。まず恋愛やセックスにガツガツしていないうえ、女性的な価値観もよく分かっているので付き合いやすい。さらに消費傾向が堅実であるため、一緒に暮らしていて安心感もある。
また、最近の若者は「何か社会の役に立ちたい」リンク、「デートよりも残業」リンクといった社会貢献意識や仕事意識が年々高まっているのも事実です。
■2.草食化は若者だけではない、世代共通の現象
これまで草食男子の実態について見てきましたが、先のアンケート調査にもあるように、草食化は若者だけの問題ではなく、世代共通の問題のようです。
男女年齢別の性的関心度の2008年と2010年比較ですが、注目すべきは次の3点かと思います。
・男女共通で草食化が進んでいること。
・各世代共通で草食化が進んでいること。(男子の30~34歳台は適齢期ゆえか?)
・特に45歳以上の男性と、19歳以下の男性の無関心度が急上昇していること。
草食化は若者男子に見られる現象だとばかり思っていましたが、どうやら違っていたようです。
ここでは、男女や世代間共通の原因構造があることを教えてくれます。
また、このデータを裏付けるような記事もありましたので、紹介します。
白河桃子の「“キャリモテ”の時代」より
35歳以上でも、草食系男子はたくさんいる。しかし彼らは「勝つ、モテる、たくましい」男子がよしとされる肉食系社会において、世代的に少数派である。だから、「武装」や「偽装」を必要とする。そうしないと、男性社会からつまはじきにされてしまうからだ。
一部の草食系男子たちは、オタクとして「2次元の女性」に癒やしを見いだし、生身の女性との関わりを放棄する。これも武装の一種かもしれない。または、地位やお金という「肉食系の武器」を手に入れようとすることもある。しかし、草食系男子が肉食系に完全に変身することは難しいのだ。
結局「肉食系の装甲をした草食系男子」が求めているのは、「どんなにすばらしい女性をゲットしたか」という支配欲求を満足させることではなく、その女性と、「しみじみと愛情のこもった幸せ」を経験することではないかと思う。
こんなふうに、草食系男子が肉食系男子に変身することもあるのだが、やはり彼らは肉食系の鎧をまとっているだけなのだ。肉食系の恋愛では心が満足しない。また彼らの肉食系の鎧に惹かれてまとわりつく女性たちとも、結局は相性が悪い。
◆草食化をどのように捉えるか
これまで見てきた草食系の特徴を簡単にまとめてみると、
・男らしさからの脱皮
「お金や地位」を得て「勝つ、モテる、たくましい」といった古き価値観には何の関心もない。
・支配欲求を満足させる“恋愛”では充足しない
だから、お金や地位といった武器も必要としないし、そもそも“恋愛”から引いている。
・求めているのは充足感
社会貢献や仕事の場での役に立っているという充足感。
男女という異性関係に捉われずに仲間関係としての充足感。
このように見ると「頼りない」という印象からは正反対です。
セックスや恋愛といった局面で捉えた場合には、それを求める女性からすれば「頼りない」ものだし、「お金や地位」といった私権秩序から見れば、これまた「頼りない」という印象になるのは当然です。
しかし、もはや私権秩序が崩壊局面を迎えている現在においては、古い価値観から離脱し、現実の充足感にただひたすら向かう彼らこそ、実に頼りがいのある、可能性のある存在といえるのではないでしょうか。いざという時には男らしく守ってくれるクリーミー男子が人気があるのも、女性が本来求めている姿だからでしょう。
■3.草食化の原因
前回の記事(性の衰弱①<セックスレスの進行が止まらない>)においては、性の衰弱現象は私権社会秩序の全てがリセットされる過程であると提起されました。草食化の現象も同様にこの流れの中で登場したものです。
◆前回の分析と一部重なりますが、性の衰弱過程を整理してみます。
性の衰弱過程は市場経済の変化と密接に関係しています。なぜなら、市場経済を牽引してきた原動力こそ、男女の性を活力源としたものだからです。大きくは3段階あるように思われます。
第一段階は1970年の貧困の消滅に始まります
私権圧力が衰弱し誰もが遊びに収束するなかで、もう一方の女の力(性権力)が強くなります。女の力を振りかざす状況に、まず男たちが女をめぐる争いから離脱を始めます。真っ当な男から真っ先に見向きもしなくなり、他方生身の女が苦手な男たちはニ次元の世界に理想の女像を求めます。いわゆるオタクの登場ですね。
私権圧力の衰弱は同時に、目標とする課題を失い、身近な課題=仲間収束の世代を生み出します。いじめも仲間第一の現われですね。より深いところでは本源的な価値への収束も進み、ボランティアや癒しブームなどへと繋がっていきます。草食化の源流は実は80年代からすでに始まっていたわけです。
第ニ段階は2003年の金融危機
1995年頃からの金融危機はいよいよ2003年には株式の底根を記録し、ついに私権欠乏が空中分解ししてゆきます。もはや誰もが私権収束できなくなり、私権社会の統合軸が崩壊します。
それは、これまでの性を含めた活力源を支えてきた私権の武器=力の基盤が意味を成さなくなったことを意味し、男たちは自信を失くしていきます。このころから子育てパパなどが登場してくるわけですね。
一方、私権に収束できなくなり、遊び第一も終わりを迎え、マジ話が復活。若者は仕事収束に向かいます。が、答えがない状況では不安発の目先の家族収束も一方で進行します。
男は振り向いてくれなくなり、待ちきれない女たちが自ら行動し始めた婚活も、この頃から始まっているのでしょうか、ちょうど2003年頃から上昇し続けていた未婚率や離婚率が反転し始めています。
第三段階は2008年のリーマンショック
世界的な金融危機を迎え、もはや資本主義は誤りであったと誰の目にも明らかになりました。社会秩序の崩壊の危機です。かといってこの先どのような社会へと舵取りすればよいのか誰からも答えが出せない状況に、性欲のさらに奥の本能を揺さぶるほどの危機感から、性は棚上げにして現実の可能性探索を始め、より強く課題収束、仲間収束を強めているのが現在の状況なのでしょう。
1970年 貧困の消滅
↓
◆私権圧力の衰弱→性権力の上昇→性的商品価値の暴騰(81年女子大生ブーム、89年アッシー君)
↓
性欲の急降下(オタク、90年晩婚化、97年セックスレス蔓延)
◆私権圧力の衰弱
↓
統合不全 ⇒深層の共認収束→仲間収束の世代(85年いじめの深刻化、仲間第一)
↓
本源収束の潮流(95年ボランティア、99年癒しブーム)
2003年 金融破綻~株式暴落
↓
◆私権統合崩壊→序列規範の消滅→私権の性の終焉⇒03年子育てパパの急増
◆私権統合崩壊→心底の統合不全→遊び第一の終焉(03年なんでだろう、マジ話、仕事収束)
↓
目先の家族収束(03年未婚率、離婚率の反転)
2008年 リーマンショック
↓
◆秩序崩壊の予感→ 適応不全 →適応可能性の探索(性の封印・棚上げ→08年草食男子ブーム)
このように見ると、草食化は社会構造の変化に伴い、必然的に現れた現象であると考えられます。
次回は、「恋愛」に焦点を当てて検証してみます。
- posted by nishipa at : 2011年10月23日 | コメント (3件)| トラックバック (0)
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共同体社会と人類婚姻史 | 【共同体の母体は女が生み出す充足空間】~5.受難の時代(共同体みんなの充足空間が消失、自我独占の性が迷走)
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