2013年08月15日
平成セックスレスの原因 ~それどころではない!(>_<;)~
前回は、明治・大正・昭和における恋愛観念の広まりを見てきました。
今回は、「平成の性」を対象に、性の衰弱現象と見られるセックスレスについて扱います。「セックスレス」は、1991年に精神科医の阿部輝夫氏が日本性科学学会でセックスレス夫婦の臨床事例の発表を行い、マスコミやネットによって世間に広まっていきました。
まずは、恒例の質問です。
あなたは、何故、セックスしたくないのですか。
上のグラフは、セックスレス夫婦の動向を示したものです。このグラフからも分かるように2001年から年々、夫婦の関係においてもセックスレスが進行していることがわかります。2012年では、41%以上もの夫婦がセックスレスになっているという衝撃的な事実が見てとれます。約2組に1組の割合ですね。また、年々増加の一途を辿っていることから、この先もセックスレスは増加していくことも考えられます。
次に、視点を変えて、まさに「平成の性」の対象である、若者の実態を見てみます。下のグラフを見てください。
上のグラフは、大学生、高校生、中学生を対象とした「若者のセックス体験率の推移」です。男子に見られる特徴として、1999年をピークにセックス体験率は、年々低下しています。女子も2005年をピークに同様の傾向が見られます。若者であっても、セックスの体験が少なくなってきていることがわかります。また、下のグラフ:「セックスに対する無関心・嫌悪割合」を見ても、男女とも、セックスに対する無関心・嫌悪割合が、年々、高まっていることが分かります。
これまで、本ブログでは、縄文時代の性やタヒチの性など、日常的に充足に溢れた性を追求し、その在り様を解明してきました。性が活力源となり、集団を一層活き活きとしたものにしていました。
翻って現在、セックスレスが進行し、性充足との距離も広がるばかりで、性が活力源にはなり得ない状況です。一般的な認識としても、性を活力源と捉える人は少ないのではないでしょうか。近年のセックスレスの進行には、どんな背景があるのでしょうか。その原因構造を追求していきます。
■セックスレスの原因構造
次の記事を参考に、その原因構造を探っていきます。
11/29なんでや劇場レポート(1)性欲が出てこないのはなんで?⇒秩序崩壊の不安と焦り
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2009/12/001465.html
~前略~
哺乳類にとって性欲は最強の引力をもつ。その性欲さえ脇に押しやるほどの強い引力を持つものは何か?
~中略~
確かに哺乳類にとって雌雄の引力は最強の引力だが、雌雄に分化する以前の生物には雌雄の引力は存在しない。収束不全は性よりも深い所にある適応本能を直撃する不全なので、適応本能が作動し探索に向かった結果、性が脇に押しやられているのではないか?
●では、収束不全の中身は?
最強の引力を持つ性欲さえ脇に押しやるほど強い引力を持った、何か得体の知れない不安と焦りがある。この、全てに優先する、得体の知れない気懸かりなもの(不安・焦り⇒先行き探索に向かわせるもの)の正体は何か?これと近い歴史事実はないかと遡って考えてみても、極限時代にも、採集時代にも、私権時代にも、性が衰弱することはなかった。性の衰弱とは、生物が雌雄に分化して以降経験したことのない異常事態である。
●極限時代、採集時代、私権時代を貫く共通項があるはず。それは何か?
⇒「明日もその先も、今日と同じ」ということが共通項ではないか。
・極限時代は、凄まじい外圧に晒される状態は今日も明日も同じ。
・採集時代は、平和で豊かなのは今日も明日も同じ。
・私権時代も、今日も明日も私権時代。
・それに対して、現代は、明日、何が起きるかわからない(という不安)
~中略~
人類は極限時代にも生きてきたし、共同体が侵略され大多数が奴隷化した時代にも生きてきた。
戦争に負けても生きてきたし、その間、性は衰弱しなかった。
何が起きても秩序は存在していた。
古い秩序が崩壊or消滅しようとする時は、一方で新しい秩序が登場してきた。
現在は、秩序が崩壊or消滅しようとしているにもかかわらず、新しい秩序は登場してこない。
この社会秩序が崩壊してゆく感覚、しかも新しい秩序が見えない(分からない)不安と焦りが、性欲さえ「それどころではない」と脇に押しやるほどの強い力を持った得体の知れない不安と焦りの正体である。
このような現象は、動物にも見られることから、哺乳類全般に起こりえる現象として捉えることができそうです。
以下、「動物園の動物がセックスレスになる理由」を参考に見ていきます。
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=221539
野生動物が動物園で飼われ始めるとことごとく、中々子供が生まれなくて飼育係は苦労して要ると良く聞く。そして、その原因はセックスレスに陥る事にあるらしい。
言うまでも無い事だが、あらゆる本能は自然圧力に適応すべく形成されている。
それに対して考えてみれば、動物にとって人に飼われると言うのは、自然圧力の元では絶対的に存在し得ない異常事態である。
異常事態という意味は、単なる生存の危機ではないということである。つまりあらゆる動物には生存圧力(食われる危機、餌を取れない危機)の圧力は常に加わっており本能はそれを織り込み済みである。つまりどうしたらいいかの想定が(本能上)付く。それに対して、「飼われる」という状態は本能が想定していない事態であって、文字通り「明日何が起こるかわからない」「何をしたらいいか分からない」事態である。つまり本能という秩序(システム)が十全に稼動しない状態である。
そのような事態になると、具体的本能(例えば性本能)の更に基底部に存在する、適応本能による探索が作動する。この適応本能によって生まれる探索エネルギーによって、いわば上部構造である性本能が稼動しない状態となる(吹き飛ばされる)のだろう。それが動物園の動物達がセックスレスになる原因だと思われる。
セックスレスが社会問題として、明らかになってきたと同時期に、社会秩序が崩壊していく事例が見られます。
97年に起きた酒鬼薔薇事件、97年の山一證券株式会社の廃業、95年の阪神淡路大震災。90年代を契機に、これまで当たり前だった秩序が一気に崩れさる事件が起こり始めました。まさに「何が起こるか分からない」という状況の中、収束不全は顕在化しました。大企業の経営破綻、正社員数の低下など世間には暗い雰囲気が漂っていました。さらに、2009年のリーマンショック、2011年の3.11東日本大震災によって引き起こされた原発事故によって収束不全が高まったと思われます。
この収束不全によって、人々に不安と焦りが生起し、「セックスどころではない」という感覚=秩序を探索する回路が作動し、性本能が脇に追いやられ、セックスレスが進行したのです。(同様に、飼われることに適応できない動物は、置かれている状況に適応しようと、常に探索回路を作動していることになり、結果、性本能は充分に稼動せず、セックスレスに陥ります。)
しかし、旧秩序が崩壊し、新たな可能性を模索している人々の意識も社会現象として顕在化してきています。男女の在り方で言えば、例えば、シングルマザーや共同保育、イクメンなど、制度的な整備はまだまだ不十分ですが、現在の秩序を塗り替えるべく、様々な行動が見られます。今後、本ブログで扱っていく予定です。
■まとめ
セックスレスの進行についてまとめると、
・セックスレスは年々進行している
・セックスレスの原因は、収束不全
・収束不全は、秩序崩壊したことによる「何が起こるか分からない不安」によって生起
・収束不全によって、適応本能が作動し、探索に向かう
・結果、性が脇に追いやられることで、セックスレスになる
ということが分かりました。
次回は、セックスレスが進行している日本と世界各国との違いを見ていきます。
- posted by OGUMA at : 2013年08月15日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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