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2014年12月31日

【年末特集】女性の活躍とは何か(後編)~集団の中でこそ、女性の力は発揮される~

いよいよ、今年最後の日となりました。昨夜に引き続き『女性の活躍とは何か』について書いていきます。今日は、共同体の中での女性の役回り、動き方について、同じく菅野覚明さんの『女の心得~社会に出る前に知っておくべきこと~』から要約・引用しながら書いてみたいと思います。

共同体社会の女性は、女性ならではの特性を生かし、仕事面でも家庭面でもすべての面で活躍していました。それは、今で言うところの、「総合マネジメント」の役回りと言えます。その中で、最も女性に求めらた力とは、何だったのでしょうか。

年末の暮れ

画像はこちらからお借りしました。

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■家父長権と主婦権

近代以前の身分社会では、男には男だけの、女には女だけの、役割分担がなされていました。家の中における男の人の特権は「家父長権」ですが、女の人の特権には「主婦権」というものがありました。

昔の家庭というのは、ただ「生活」する場ではなくて、「生産」する場でもありました。さきほどの漬物など、暮らしに必要なものをつくるのはもちろんのこと、「仕事としての生産」が家の中で行なわれることも多かったのです。職場が分かれていなかったといってもいいでしょう。職人さんも家でつくるし、農業も家で行なうし、商人も家で商売をします。

昔の女性は、そのような家庭における立派な主婦になるべく、いろいろなことを学びました。「主婦」として立派に差配できる能力が女性にとって一番重要な習得すべき能力でした。

現代でも、昔ながらの仕事が家の中でなされていて、女主人が「女将さん」と呼ばれているようなところでは、女将さんがさまざまなことを差配し、円滑に家庭や仕事が回るように気配りをし、とにかく、なくてはならない大切な役割を果たしています。

 

■主婦に求められた、いちばん重要な役割

「魂を教育する」「家や共同体の公平な秩序を保つ」、それから「共同体の成員を気持ちよく動かす」それらが主婦の大きな役割となります。大勢の人に気持ちよく秩序を保って働いてもらったり、あるいは子供(ときには夫も)の精神的なものを教育するのは、単純な能力でできることではありません。知恵判断才能細やかな情感など、さまざまな非常に高い能力が要求されます。

つまり、そのような高い能力を身に付け、共同体の精神的な豊かさ、安らかさをもたらすのが、主婦に求められた、いちばん重要な役割だといえるでしょう。

たとえば『サザエさん』でも、さまざまな「すったもんだ」があっても、最後に皆を落ち着かせるのはだいたいフネさんの役割どころです。あるいは一家を明るくしたり和ませる役はサザエさんです。いずれにしてもまとめ役として、女性がいるのです。

 

■もてなす力

共同体の精神を安定させる能力とは、具体的いうと何でしょうか。 それは「もてなす」ことだということができます。 「もてなす」にはもともと、大変広い意味がありました。「取り扱う、処理する」「待遇する」「世話する、引き立てる」「もてはやす。珍重する」「取り繕う。とりなす」「馳走する。」などの意味があり、今の言葉で置き換えるとすれば、「総合マネジメント」という言葉になるかもしれません。そして「もてなす」ことができるのは女性、それも主婦の特権でした。いわば、家の中や共同体の「総合マネジメント」をつかさどるのが女性の役割だったのです。

複数の人々が一緒に生きていくのは、すごく厄介なことです。皆、てんで勝手なことをしていて、しかも日々動いていて、一瞬も同じではない。それだけものすごく複雑なものを処理し、管理し、指導していく能力が必要です。主婦の「もてなす」働きとは、複数の人、多数の事物をいわば、「統一」する元締めの仕事だと言えるでしょう。

 

■酒の分配権を行使する

主婦のもてなす能力がいちばん要求され、試される場所は、昔の共同体では「ハレの日」(お祭りの日)でした。「お祭り全体をマネージャーとして統括することが主婦の仕事」だったことを象徴的に表すのが、酒をつくり、酒を開封し、酒を分配するのが女性の仕事だったことです。

酒をどのタイミングで、どのくらいの量を男達に飲ませるかを決めるのが女性でした。具体的に言うと、お酌するというのは、まさに女性が「酒の分配権」を行使している姿であり、女から見て、「もうお酒を飲んではダメ」という人には、お酒を注がないのです。あるいは、男性たちが飲んでいて、「お酒を持ってきてくれ」と台所に声を掛ける。それに応えるか応えないかは、女性が決めることでした。

お祭りには、みんなが興奮して気分を盛り上げることを通じて、共同体の連帯意識を高めていくという働きがあります。お祭りで精神を高揚させるためのものがお酒であり、そのお酒を管理するということは、すなわちお祭りを管理していること、お祭りを指揮していることを意味します。

8-3画像はこちらからお借りしました。

 

■気配と気配り

他者を感じる繊細な感覚。それは他者に対して何かを意識し、配慮していることでもあります。つまり「気配を感じる」ということと、「気配りが出来る」ということは、実は同じことでもあるのです。「繊細な感覚」を働かせ、そしてそれを生かした「気配り」をし、そして十分に「もてなす」―それが女性に最も求められる要件でした。

目に見えない、神様をもてなすところから広がって、いろんな人々に配慮して共同体全部をもてなす、あらゆるものをもてなせる能力が、古来、女性にいちばん求められる資質だったのです。

ではもてなす能力の中味とは、具体的にどのようなものでしょうか。

一つ目は「心が深く豊かであること」

二つ目は「表現が美しいこと」

です。「心が深く豊かであること」というのは、心の内側のことですね。それが外側に表れると、「表現が美しい」ということになります。ですから、この二つは、内外一体で、突き詰めると同じことを言い表しています。

共同体のひとり一人を「総合マネジメント」するためには、他者の立場とか、心情を深く理解する能力がなければなりません。そして、一人ひとりが思っていること、感じていることを「気配」として繊細に感じとり、それに対して的確に「気配り」していかねばなりません。そのような部分が、男性よりも女性がその本質として数段優れているところがあり、日本社会では、古来より、女性がその能力を十全に生かして来たのです。

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バブル崩壊以降、あらゆる産業が行き詰まりを向えています。それは、ひとえに、女性の活躍の場を奪ってきたからだと言えるのではないでしょうか。そして、それは近代以降、利益を上げることのみに傾斜した資本主義社会を是としてきたからだとも言えます。そのような社会では、女性が本来の力を発揮できないのは、歴史的にみれば明らかです。

女性が本来の力を発揮できるのは、集団の中で生きてこそであり、女性が安心して居続けられる共同体的な集団を再生することが、女性の活躍の場は増やしていくことになるのだと思います。

現在、女性の活躍によって、息を吹き返している企業が多く存在していますが、それは、こういった集団形成ができている会社だと言えそうです。来年以降、そんな企業を増えていくことを願って、今年最後の記事を締めくくりたいと思います。

今年一年間、当ブログの記事を読んで頂き、ありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。m036.gif

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