2017年05月03日
宗教の成立過程
宗教の成立過程は次のようなものだということです。
【2】祭政一致の守護神信仰が登場。そこではシャーマン活動は禁止され、儀式を司る神官階級に代わる。国家支配を正当化する神権政治や神話が登場。
【3】部族や国家を超える唯一神や最高神、宇宙原理が登場。
【4】仏教・儒教・ユダヤ教といった普遍的宗教が登場。 教義の体系化と教団化が進む。
2)宗教の組織化にともなうシャーマニズムの排除――原始宗教から古代宗教へ
3)“世界宗教”の誕生――宗教教理と巨大組織によるシャーマニズムの徹底排斥を要約しました。
----------------------------------------------------
●物質文明の発展とともに霊能力が衰退
太古の時代にはアニミズム・シャーマニズムという心霊信仰が、あらゆる地域に共通して存在していた。当時の人々は、その後の人間の何倍も「霊能力」を発揮し、霊的世界と霊的存在を認識していた。そうした時代には、現代よりずっと多くの「霊能力者(霊媒)」がいたはずであるが、多くの人間が当たり前に持っていた「霊能力」は、人間社会の拡大と物質文明の発達とともに退化してしまった。
アミニズム・シャーマニズム以降の宗教の歴史を整理する。
●祭政一致の自然神的多神教の成立
5000前年~4000年前には、人類最初の文明がエジプト・メソポタミア・インダス・黄河地方に登場。少し遅れて、パレスチナ・小アジア・イラン・ギリシア・ローマなどにも古代文明が登場。これらの古代文明は、いずれも祭政一致を原則として、宗教を中心に形成された。それは共通して、自然界の諸力を神格化した神々を崇拝する自然神的多神教であり、その中心が太陽神信仰であった。
●宗教の組織化とシャーマンの排除
そこでは組織化がはかられ、儀式を専門に司る聖職者階級が影響力を振った。そうした組織宗教にとってシャーマンを通して教団の運
営方向とは異なるメッセージが降りたり、組織に都合の悪い託宣が下される事態を回避する必要があった。そのために組織宗教はシャーマンを排除したり、シャーマンの活動(霊媒現象)を禁止した。そして組織宗教は、霊媒(シャーマン)の代わりに祭司・神官・神職といった職業宗教者の身分を確立し、彼らには霊媒行為ではなく、儀式という宗教的行為を担当させた。
●国家の支配を正当化する宗教の形成
強大な中央集権国家では、専制支配を神意に基づくものとして正当化をはかるようになり、為政者が神の代理者となったり、神そのものとなって祭政一致の「神権政治」を進めた。また政治的支配力を強化するための一環として「神話」がつくられ、宗教は政治支配の道具として利用された。アニミズム・シャーマニズムの心霊信仰と心霊現象は、人為的な儀式と神話に取って代わられ、「民族宗教」が形成された。
日本の「神道」も、こうしたプロセスを経て形成された民族宗教である。日本でも古代には、部族ごとに霊的存在への信仰が営んでいたが、大和朝廷の勢力拡大と中央集権化にともない、各部族の信仰は、朝廷の人工的宗教(律令神道)のもとに組み込まれていった。そして、シャーマンとして「カミ(霊的存在)」との仲立ちをしてきた巫女は、その立場を奪われ(*812年「託宣禁止令」)、神社の侍女のような仕事を担当するだけの存在になってしまった。
●唯一神・最高神や宇宙原理の登場
3000年前頃に一つの転機が訪れる。イスラエル人は「唯一絶対神(ヤハウェ)」を創造者とする宗教をつくり上げた。BC2800年前からインドでは、従来のバラモン教の神話的多神教崇拝と祭式万能主義を超えて、ウパニシャッドの哲学者たちによって、宇宙を支配する原理として「ブラフマン」の概念がつくり上げられた。3000年前頃にはアフラ・マズダを最高神とする一神教ゾロアスター教が成立した(その後、ゾロアスター教は、「善悪二神教」、さらには多神教的な方向に向かう)。
●宗教思想・教理に基づく世界宗教の誕生
2800年前~2300年前には、それまでの部族宗教・民族宗教とは異なる、全人類を対象とする宗教が登場した。
中国では孔子が「儒教」が、インドではシャカが「仏教」を、マハーヴィラが「ジャイナ教」を開いた。イスラエルではイザヤやエレミヤなどの“預言者”が活躍し、ギリシアではソクラテス・プラトン・アリストテレスといった“哲学者”が輩出。
仏教・キリスト教・イスラム教という世界三大宗教は、民族宗教を超えた普遍的性格を持つ。いずれも、原始宗教や古代宗教(民族宗教)のように自然発生的につくられたものではなく、特定の創始者の悟りや啓示を出発点として形成された。創始者である“教祖”と、その教え・啓示である“教義”と、それらを支える強力な“組織”が存在し、布教活動を展開して宗教的支配権を拡大した。世界宗教は組織と版図の拡大
にともない、聖典(教義)の編集や教義の理論化・体系化を進めていき、組織制度は強化され、新しい宗教儀式や行事がつくられた。こうして教義による信仰の統制と、宗教組織と聖職者を中心とする強力な支配体制が確立された。
- posted by KIDA-G at : 2017年05月03日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
trackbacks
trackbackURL:
comment form