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2017年05月18日

一神教(キリスト教・イスラム教)とシャーマニズム

『スピリチュアリズム普及会第3公式サイト』「5)教理宗教下における“神秘主義”――神・超越者との神秘的合一を目指す組織宗教内の異端児」の一部要約です。

●教理組織宗教の形成と、教理による霊的現象の抑圧
古代以前には全世界でアニミズム・シャーマニズムという「霊的存在への信仰」行われていた。その後、部族宗教・民族宗教という古代宗教が形成され、続いて教理宗教の創始者(教祖)が現れ、自らの啓示や悟りを広める集団をつくる。霊的啓示や悟りは「教義」となり、教団拡大の原動力となった。教義をつくる過程で、啓示の内容は宗教組織にとって都合のよい内容に変化させられ、創始者を神格化するためにしばしば捏造が行われた。

「教祖・教義・組織」という3つの要素を整えた教理組織宗教は、「シャーマン」を中心とする小規模な宗教社会や「祭司」を中心とする古代宗教社会に向けて布教活動を展開し、それらを勢力下におさめてゆく。それら教理組織宗教の中で「キリスト教・イスラム教」が巨大な一神教の教理組織宗教が現れ、アジアでは「仏教」が広大な地域に宗教版図を形成した。

そうした「教理組織宗教」は、アニミズム・シャーマニズムという原始宗教や、祭司を頂点とする部族・民族宗教とは比較にならないほど強い支配力と拘束力を持った。宗教組織(教団)の教えと指導が絶対的なものとなり、すべての信者が従うこととされ、教団に反した見解や、教団の指導範囲を越えた宗教活動は禁止された。特にシャーマン的人間の語る啓示は、しばしば教理宗教の教義や指導者の考え方と食い違うため、教団はシャーマニズム的動きを徹底して弾圧した。教理組織宗教は、教理による信仰の支配によって「シャーマニズム的心霊現象」を押さえ込んだのである。

ところが教団側がどれほど信者を規制しても、人間にもともと備わる「霊能力」それ自体を無きものにはできない。鋭い霊能力を持った人間・シャーマン(霊媒)的素質を持つ人間を中心に「神秘現象」が自然発生する。こうした神秘体験に基づく信仰的なあり方を、教理宗教における知性に基づく通常の信仰と対比して「神秘主義」と言う。教理組織宗教はそうしたシャーマン(霊能者)や神秘現象に対して、より強硬に臨むことになり、とりわけ近代以降は神秘主義に対する蔑視が強くなり、謎めいたもの・不思議なものは何もかも神秘主義の中に組み込まれるようになってしまった。

●キリスト教の「異端」と神秘主義
キリスト教がイエスという霊能力を持ったシャーマン的人物から始まったことは事実であるが、キリスト教では、イエスの奇跡は、イエスという一人の人間だけに可能なものであったと主張する。イエスは「神の一人子」だから奇跡が実現したと言うのである。他の人間がイエスと同じような心霊的現象・神秘的現象を引き起こすことを決して認めない。

キリスト教が教理組織宗教として拡大してからは、霊的能力のある人間や神秘体験者を「サタンの手先」、心霊現象を「サタンの仕業」として徹底的に排斥するようになり、キリスト教会は、神秘主義者や霊能者を「異端」として弾圧した。
中世末期から近世初期にかけて、「異端」とされたものの中には初期のグノーシス派や中世のカタリ派がある。これらはキリスト教会から激しい弾圧を受け、歴史の表舞台から消滅した。またフランチェスコ会から発生した聖霊派も、キリスト教会から異端として処断されている。13世紀にマイスター・エックハルトがドイツ神秘主義を確立し、キリスト教神学にはない神との合一性を説いたが、その神秘思想も1329年に異端宣告を受けた。中世から近世にかけて(*実際にはつい最近まで)行われた「魔女狩り」は、キリスト教組織によるシャーマニズム文化・心霊現象への弾圧である。

●一神教の神秘主義の特徴――エクスタシー状態での、超越者・絶対者との合一体験
一般のシャーマニズムでは精霊や死霊・先祖霊など様々な霊的存在が信仰の対象とされるが、キリスト教下の神秘主義では「唯一神」だけが対象とされ、その神との霊的一体化を目指す。キリスト教の神秘体験者の多くも、伝統的なシャーマンと同様にトランス状態に入るが、その
神秘体験は常に「神との合一化・絶対者との一体化」と語られる。

こうした神との合一体験には、さまざまな「心霊現象」が付随している。
例えば、入神状態(トランス)下でイエスや天使に出会うという体験(幻視・霊視現象)や、聖痕が身体上に現れるが、キリスト教の神秘主義では、そうした心霊現象よりも「神との合一」という現象に重要性を認める。スピリチュアリズムからすれば、神との一体感覚を持つという神秘体験はあくまで心霊現象の一つにすぎないが、一神教の場合には、神への意識が強い分だけ「神との合一体験」が他の心霊現象よりも重視される。

この「神との合一体験」という心霊現象は、同じ一神教のイスラム教にも存在する。その代表が「スーフィズム」である。イスラム教の神秘主義スーフィズムでは、絶対者(神)との合一化・一体化が、最も重要な神秘体験とされる。イスラムの神秘主義は、9世紀頃から「スーフィー」と呼ばれる神秘家たちによって進められた運動で、修行によってアッラーの神と神秘的合一・一体化を果たすことを究極の目的としている。

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