■身分によっても違う結婚スタイル

まず、結婚には3つのスタイルがありました。一つめは、通い婚です。男性が女性の家に通うという「通い婚」は、一部の農村で残っていたスタイルで、結婚しても、それぞれの家から解放されません。じゃ、何のために結婚するの?と思ってしまいますが、一緒になるにはその方法しかなかったのです。

二つめは、嫁入り婚です。女性が男性の家に入るスタイルで、江戸時代に一般的になったスタイルです。つまり、最初から男性の両親と同居するということ。

三つめは、独立婚です。どちらの家にも入ることなく、2人で独立します。これが、今の私たちにとっては一般的な結婚のスタイルですね。長屋の住人など、身軽に動ける人ならではの習慣だったようです。

結婚相手を決める方法

じゃ、どうやって結婚相手を決めるのでしょうか?

一つめは、政略縁組みで、武家など身分が高い家では主流でした。本人同士の気持ちはあまり考慮されず、家同士の結婚を大事にします。

二つめは、跡継ぎ指名。商家や職人の家で主に行われた方法で、息子に家を継がせず長女に有能な婿を迎えます。その家の番頭や弟子から選ぶそう。

三つめは、お見合い。当時のお見合いは庶民の風習でした。今と違うのは、2人がきちんと対面するお見合いでなく、寺社詣や芝居見物などですれ違ったり遠くから見る程度だったのです。きちんとお見合いして、ちょっとこの人とは…となると、仲人と相手の面目が丸つぶれになるから、とのこと。

そして四つめは、くっつき合いです。つまり、恋愛のこと。これは、長屋の庶民ならではの結婚スタイルです。武家や商家の人にとって、結婚は自分で決められることでなく、窮屈なもの。彼らは、自由に結婚できる庶民が羨ましかったかもしれません。

●プライバシーなんて一切なし!

もちろん、庶民が二人で新生活を始めても、それはそれで大変なこともあったのです。長屋は粗末なつくりで、隣の家と壁で仕切られているとはいえ、薄い壁なのでプライバシーなんてありません。話し声や物音だって、筒抜けです。

「新世帯隣りの壁が落ち」という川柳があるくらいですから。つまり、新婚の長屋の壁が落ちるくらい、2人が激しく動いたということだそうな。

何はともあれ、江戸時代は結婚にもいろんな制約があったことがわかります。そして恋愛結婚は、庶民のみに与えられた特権だったのですね。

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