2022年10月07日
縄文人が生み出した道具・技術~住居編~
前回までの記事で縄文人の世界観について考察してきました。
今回は縄文人が生み出した数多くの「道具」や「技術」について深めていきたいと思います。
〇竪穴式住居
竪穴式住居とは、深さ数10cm~1m、直径 5~20㎡の円形の穴を掘り、円錐形の屋根を作った家です。高さは2~3mのものから10mを越えるものもあったようです。一般の人々は平安時代の半ばまで竪穴式住居に住んでいたようです(東北地方の人々は室町時代まで)。
住居の構造は、柱の頂部を梁(はり)でつなぎ、放射状に垂木をかけ樹皮で覆い、その上に土葺きや茅葺きの屋根をかけるだけ。
茅葺屋根の民家と同じように、茅を何層にも重ねて厚くすることで雨漏りしにくくしたり、かまどで火を焚くことによってヤニ(タール)をつけて防水効果を高めていたと考えられます。また屋根や壁が地面に接する場所は盛土をすることで、雨水が家に流れ込むことを防いでいます。
柱を立て、真っ先に屋根をつくるという工程は、現代でも一般的に作られている木造軸組工法と基本的に変わっていません。
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柱につかわれる木は、太くても直径20cmほど。樹種は食料にも住居の柱にもなる、成長の早いクリの木が好んで使われています。クリの木は、伐採後は柔らかくて加工しやすく乾燥するとかたく弾力性のある性質に変化するのが特徴。硬い木材でも加工できるような鋭利な道具が無かったため、素材の性質を捉えることで加工性や耐久性に適した木材を選定していたのではないでしょうか。
室内については半地下です。これはある程度の温度を保つためです。深ければ深いほど、土の温度は17度〜18度になります。そのため深さ1mで、外気温の影響を受けにくい状態を保つことができるのです。
では、大型の竪穴住居はどのように作られていたのでしょうか?
〇大型竪穴住居
一般住居との違いは大きさや長さなど多々ありますが、大型竪穴住居では縄文尺を使用しているのが特徴の一つです。
そもそも、すでに長さの単位があったこと自体すごいことですよね。
縄文尺は35cmを基準とした、いわゆる「ものさし」のことで、長さを計測したり規則的に間隔を設定することができます。縄文尺によって一般的な竪穴住居よりも洗練された秩序感がでます。
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大型竪穴住居に使われる理由としては、一般住居より資材量が倍以上となり多くの人数を要することがポイントです。近隣の集団も総出で作業を行い、複数の集団が息を合わせて同じ動きができるように、一つの基準で統合する。そのために縄文尺が生み出されたのではないかと考えられます。
よって、大型竪穴住居をつくることは縄文人にとって、他の集団との結の場であり、一体関係を互いに築き合う行事でもあったのではないでしょうか。
また、縄文人の寿命についても住居づくりの技術に関係がありそうです。
縄文人の平均寿命は30才程度と言われています。これに対して、竪穴住居の耐用年数は20年。住居においても、生物や、月などの万物と同じように、生と死の循環、全てが一体という共通概念があるとすれば、作り主である家長の生命の終わりのサイクルに合わせている(=一体のもの)と捉えていた可能性があります。
自然の材料を巧みに加工し組み合わせ、大規模な大型竪穴住居や複雑な高床式住居をつくる技術を持っていた縄文人が、あえて必要最低限でシンプルな構造に洗練していたのかもしれませんね。
この、縄文時代で生み出された技術が、伝統的なの木造住宅の祖型へ受け継がれているのではないでしょうか。
- posted by agatuma at : 2022年10月07日 | コメント (0件)| トラックバック (0)
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